表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第2章 港・信用・拠点

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/57

24.差し押さえ強襲戦

「差し押さえ候補は、大きくわけて3種類あります」


 俺は、艦橋の特大画面に星系全体の地図を表示させる。


「1つ目は星系外縁にある星系政府所有の無人基地です。居住者がいないので、人的被害のリスクは低いです。問題は、既に戦闘態勢に突入していてドローンが大量に飛び回っていることと、搭載されている動力源が小型なことです」


『拿捕班としては、半壊状態で手に入ったら運が良いとしか言えねーにゃ』


 通信越しに会議に参加するキンは、海賊の武装解除や海賊船の分解や回収などを休みなくしてきたのに疲れた様子がない。


「時間的には、基地を2つ襲うのが限界よ。それ以上時間をかけると、星系政府がメンツを守るために主力艦隊を差し向けかねないわ。戦っても勝てることは勝てるでしょうけど」


 ブルネットは、俺の汗を甲斐甲斐しく拭いてくれながら、楽しげにくすりと笑う。


「命を守るためでなく、お金にもならない戦いはやだなー。サルくん、次をお願い」


 ベリル社長は、星系政府や星系中央マーケットから届いている『舐めた和平条件』に拒否信号で返しながら俺を促す。


「2つ目は星系中央マーケットが在庫として抱えているタキオン砲3門です。警備会社が護衛していますが、戦力の半数が我々への襲撃に加わった直後なので襲撃難易度は低めです。ただ、それ以外に問題があります」


「タキオン砲を奪われる直前に他企業へ売却という手段を使われたら、非常に面倒なことになりかねないわ。特に大企業に売られてしまったら、法律や交渉でやりこめられるのは私たちということになりかねないの」


 ブルネットは、俺の席を操作してリクライニング状態にしている。

 眠りはしないが体への負担が減る丁度よい感じで、俺は目で感謝を伝えて、ブルネットに微笑みで返された。


『それなら無人基地の動力源でも同じことにならねーにゃ?』


「キン姉、それはたぶん大丈夫のはずだよ。昔、それを多用した大企業に超大企業が激怒して、一度据え付けたものの所有権移動には制限がかかるようになった……ってライセンス試験の試験範囲にそんな法律があった気がする」


『うろ覚えにゃ!?』


 義妹たちが騒いでいる間に、ブルネットが該当の法律をAIに見つけさせて画面に表示される。

 判例も表示されているんだが、前提となる知識がない俺にはよく分からない。


「次が3つ目です。個人的にはこれがお勧めです」


 星系地図の、星系首都である有人惑星の静止軌道が強調表示される。

 地球の軌道に浮いている巨大衛星と比べれば小さいが、ベリル号よりさらに大きな猫の巣号より一桁は大きな巨大建造物だ。

 星系の主力艦隊の司令部であり、武装も動力源も非常に豪華だ。


「周辺の戦力は多いですが態勢が平時のままです。『パルティアンショット』の後なので星系内の戦力が減ってるだけでなく配置が滅茶苦茶になっているんです」


「へえ」


「まあ」


『サルは生身ではさっぱりなのに狩り上手にゃ』


 猫耳姉妹は、猫が肉食動物であることがよく分かる、獰猛な笑みを浮かべていた。



  ☆



『敵襲! きょ、距離1光秒未満です!』


『何故気づかなかったっ!』


『ここまで超光速で飛んできてるんです! 星系外縁からここまで、ぜんぶっ』


『デブリ地帯も自動迎撃ドローン網も躱してか!? 馬鹿も休み休み言えっ!』


 動揺しきった通信が飛び交っているがいつものことだ。

 俺がベリル号の加速性能をフル活用すると、敵艦隊はだいたいこんな反応になる。

 今回は敵艦隊というより敵本拠地だが。


「こちらベリル運送。賠償金の支払いの意思はないと判断し、今から差し押さえを行う。対象は外周ブロックの動力源だ」


 ベリル社長が淡々と宣言する。

 こんなことを言われた時点で星系政府やその軍の面目は丸つぶれ。

 実行されたら権威も武威も地に落ちる。


 敵司令部と敵艦隊からの通信は、怒号と悲鳴と混乱の大音量で何が何だか分からなくなっている。


 俺は、敵主力艦隊と巨大建造物の間にベリル号を滑り込ませる。

 ベリル号を狙えば味方同士で同士討ちになる状況にして、攻撃を諦めさせるのだ。


「今回は猫の巣号なしですから、レーザーやビームで焼き切れないんですよね」


 巨大建造物にはいくつか大きな出っ張りがあり、そのうちのひとつに小型の動力源が収められている。

 この巨大建造物にとっては予備の動力源でしかないが、小さな『母港』の動力源としてはオーバースペックなほどに優秀だ。


『それはしゃーねーにゃ』


『『『しゃーねーにゃ!』』』


 キンを真似て喋っているのは、猫耳幼児の年長組だ。

 最近の食生活でますます成長し、実年齢はともかく実際の体格は少女と言って良い。

 ただしその中身は、ファンタジーじみた体力と反射神経を持つ悪ガキどもだ。


「キンさん。子供を実戦に出すのはまだ早くないですか?」


『サルの心配も分かんねーでもねーけど、ほっといても戦場に飛び込みそうなガキは引率つきでいけるときは積極的にいくべきにゃ。つーかサル、おめー過保護すぎにゃ。宇宙服じゃなくパワードスーツで初陣なんてどこの特権階級にゃ? 通商の品はたけーにゃ!』


『『『キンのあねご! しゅつげきまだ!?』』』


 キンと猫耳幼児たちは、分厚い装甲と大量のスラスターと大出力レーザー銃で構成されたパワードスーツ姿で、ベリル号のエアロックで待機中だ。

 なお、猫の巣号は星系外縁よりさらに外で待機中だ。


「若い子は元気ねえ」


 平和につぶやくブルネットだが、キーボード操作は平和とは正反対だ。

 タキオン砲が安全に扱える範囲で最大のエネルギーを連続供給して、減衰がほぼゼロになる距離から『大きな出っ張り』を根本から切断していっている。


「うーん。やっぱ何人か中にいるみたい」


 通信を傍受していたベリル社長が『うむむ』と唸る。

 そうしているうちに、砲が放つタキオン粒子により、『大きな出っ張り』が巨大建造物から切り離された。


『にゃ!』


『『『にゃ!』』』


 エアロックが開くのが早いのはベリル号の力だが、ベリル号から飛び出すのが速いのも、『大きな出っ張り』の整備用ハッチを見つけて破壊するのが速いのも、すべてキンたち拿捕班の実力だ。

 パワードスーツだけでは、ここまではできない。


『侵入者発見……猫耳!?』


『主力艦隊の陸戦隊より豪華装備の猫耳なんているはずがっ』


 ごちん、ずどん、という非常に痛そうな音が、傍受中の敵通信に交じった。

 キンが武装を使わずに兵士たちを床に沈め、猫耳幼児たちがクラッキング用の装置をあちこちに貼り付けている姿が中継されている。


『サル! 外から操作されないよう動力源を強制的に停止させるにゃ! ……停止させたにゃ!』


「了解。トラクタービームを使います。総員ショックに備えてください」


 この位置に到達してからは艦内環境維持とシールドにしか使われていなかったエネルギーが、トラクタービームだけでなく、慣性制御とエンジンでも大量使用される。


 まずベリル号が『大きな出っ張り』と共に光速の2倍まで加速。

 敵司令部と敵主力艦隊が、即座にベリル号を狙うが光速未満の弾も光も届かない。


「今はタキオン砲は出てきて欲しくないですね」


 俺は本音半分軽口半分で言ったつもりだったが、ベリルがびくりと肩を震わせた。


「サルくん、驚かせないでよ。あれ、敵が使うとほんとに怖いんだからね!」


『サルー! 今から切り離すにゃー! 3、2、1、今にゃ!』


 大出力レーザー銃がパーツとパーツの接合部分を焼き切る。

 『大きな出っ張り』を覆う装甲が外れ、トラクタービームの影響下から抜ける。


「いやはや、安全運転も難しい」


 質量の変化に対応して加減速を行う。

 あまりに特殊な行動すぎて、AIによる補助が普段と比べて不十分だ。

 その不十分さは慣性制御しきれなかった強烈な加速として現れる。


 既に速度は光速の10倍を超えていて加速は継続中だ。

 今から星系の宇宙船が追いつこうとしても、まず間に合わない。


「ぐっ」


 俺は悲鳴をこらえる。


『『『にゃーっ!』』』


 拿捕班の猫耳幼児たちははしゃぎすぎてキンに怒られている。


「サルくん、もうちょっとだけ頑張って!」


 ベリル社長は強烈なGに平然としている。

 そして、態度を格下に対するものに変え、星系政府に対し一方的に通信を送る。


「こちらベリル運送。賠償金の差し押さえは完了した。今回のことを理由にベリル運送に賞金をかける場合、ベリル運送はそれを宣戦布告と受け取るのでそのつもりで。……次回は友好的な取り引きができるといいね?」


 次の差し押さえ先が、自分たちの抱えるタキオン砲だと理解したのだろう。

 ベリル運送からは何も言っていないのに、星系中央マーケットから、相場の倍以上の賠償金が振り込まれた。


「じゃあサルくんは今日はもう勤務時間終了ね。ブルネットお姉ちゃんも終了にしていいから、サルくんを寝かせるのを最優先でよろしく!」


「いえ、猫の巣号との合流まで……」


 俺の席が強制的にリクライニングされる。

 ブルネットが俺の胸に猫耳をあてる姿勢になり、俺を起き上がれなくさせる。


 服の上からでも分かる柔らかさと体温と、最近は慣れてきた香りが、俺の緊張感を急速に溶かす。

 つまり、極度の疲労に耐えるための緊張感と気合いが一瞬でなくなった。


「おやすみなさい、あなた」


 一瞬で眠りに落ちた俺は、返事をすることもできなかった。

◆ BERYL FLEET

規模:1 防衛:2 遠征:3


◆ BERYL THE GREAT MK2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ CAT'S NEST MK2(4/4)

船体:4 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:4 / 居住:2 / 船倉:4 / 兵装:1


◆ CREW

ベリル  |船長Lv2 [財産Lv5]

サル   |操縦Lv4 [疲労Lv9]

ブルネット|射撃Lv2 [事務Lv2]

キン   |白兵Lv2 [整備Lv2]

妹猫耳ズ |白兵Lv1 [未熟Lv1]

新人猫社員|船長Lv1 [未熟Lv2]

猫耳の下僕|操縦Lv2 [信仰Lv1]

母猫耳ズ |白兵Lv1 [衰弱Lv2]


◆ SALVAGED ASSETS

船体:2 / 跳躍:3 / 航続:5 / 装甲:1 / 居住:1 / 船倉:2 / 兵装:3

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ