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不死王の手ほどき  作者: 森山すぱこ。
アバンフ攻略
60/78

コマゾスの玉座執務


王妃お披露目当日。

連日、コマゾスは玉座の隣の机で朝から晩まで書類仕事をしていた。

その後ろには不死王が立って一枚一枚書類を取っては目の前に掲げてチェックしている。


後ろが気になるコマゾス。時折、振り返る。


「どうした?」

「いいえ。なんでもありません」


コマゾスの顔が少し歪む。


しばらくして、コマゾスの首がふいに骨の手で握りしめられた。

コマゾスの肩が跳ねる。


「なぜ、これを承諾した?」

「うぐっ……」


コマゾスの目の前に一枚の稟議書が上から降りてくる。

目を凝らす。


「そんなに人手に余裕がない」


不死王が話すたび、コマゾスの首を持つ手が前後に揺れる。


「このレベルは一旦保留。優先順位だ。人に空きができ次第としたまえ」

「……」



こうして、コマゾスはこきつかわれた。

結局、不死王がチェックする。自分のやっていることに意味があるのかと思いながら。


ただ、不死王は終日、近くにいるわけではない。

ある時は小柄な老人――ヨトフが片手に束になるほどの書類を持って現れた。

そっと机の上に置く。


「何か困ったことはありますかな?」

「あっ、いえっ……」


ヨトフは静かな目線を机の上に落とす。

しばらくすると、玉座の間の端を、外の景色を眺めながら歩き始めた。

そして、いつの間にかいなくなっていた。



次は青年――チージョイルが現れた。

首輪がついている。不死王の子飼いか?


チージョイルは対面の丸椅子に座る。

コマゾスが目を通した書類に目を通していく。

そして、忌憚なく自分の意見を述べる。


「治癒師は必要だと思いますか?」

「はっ? ……必要に決まってるではないか。誰が治療する?」


「薬があればいいのでは?」

「症状の切り分けが必要だろう。それに薬では治すのに時間がかかる」


久しぶりに詰め寄ってくる人間だ。この感覚は新鮮だった。


「ただ、あまりに高額です。コストに見合わないと思いませんか?」

「支払える者だけ使えばいいだろう。コストに見合うような治療費にすればいい」

「……」


「あまりに高額すぎて誰も来ないと反論しないのかね?」

「それは憶測です。やってみないとわからない。あなたの言うことには一理あると思います」


その後もチージョイルとは議論をした。

ほぼコマゾスが勝ったが、たまに負けることもあった。




そして、いつのまにか対面がチージョイルではなくなっていた。


ドサッ


気づいた時にはその男は後ろ向きに倒れていた。

床に手をついた時の衝撃で手首を痛めたらしい。

しきりに手を振る。

丸椅子を三つ並べると、座り直した。

こいつも首輪がついている。


「そろそろ昼だ。一緒に食べるように言われてな」

「そうか……。もうそんな時間か」



太った中年男性――ジェノフが次の相手だ。

ジェノフは興味なさそうに机の上の書類を見ていく。

そして、立ち上がると何のためらいもなく、玉座に座った。


「うん。ちょうどいい」


顔を少しほころばせると、おしりをグリグリと動かし、背もたれに身を預け、目を閉じている。


すると突然、音もなくスッと宙に浮く玉座。

再びコマゾスの前までやってきて、ガタンと着地した。

ようやく気付いたジェノフ。目をハッとさせる。


後ろから不死王が大きな皿を持って現れると、丸椅子の上に置いた。


「二人で仲(・)良(・)く(・)、分けて食べるのだぞ」


そう言うと、こちらを見ることもなく皿を置くために屈むと忽然とその姿を消した。

もう不死王がどこから現れても驚かなくなったコマゾス。

一瞬だけ固まったが、丸椅子を持って、皿の前に移動する。


「その首輪はなんだ?」

「これ?」


「ルール破ると締まるやつだ」

(そういうことか……命をチラつかせ、無理やり働かせているんだな……)


「まぁ普通に生活していれば特に気にすることもない」


次々と手にとっては口に入れていくジェノフ。


「あと、発言や行動を記録しているらしい。これは実際証拠として使われたって話は聞いたことないが」

(24時間監視されてるのか……)


「なぜ不死王のもとで働いている?」

「ん? ……結果的に不死王のもとで働いているだけであって、不死王のもとだから働いているんじゃない。それに……」


喉元を叩くジェノフ。話を続ける。


「自分の能力が生かせる場所で働くでしょ? 理由が必要か? 不死王が余程変なヤツだったら別だけど」

「変なヤツでないのか?」


「ふだん、めったに会うこともないからな。とくに印象もない」

(コイツはまだ知らないのか……あれがそばにいたら、心が休まらないぞ)


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