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不死王の手ほどき  作者: 森山すぱこ。
アバンフ攻略
59/79

裏と表の長は一息つく間もない


王妃お披露目の前日の朝。


コマゾス(アバンフの裏の長)は目覚める。

地下の食糧庫で。

そこには銀の分厚い天井と壁がある。

ここでは魔法の干渉を受けることはない。


昨日は玉座の間(漆黒の巨城の)で書類仕事にこき使われた。

後ろに不死王が立って常に監視している状態では、休憩すらままならなかった。

このままのペースで働き続けると確実に寿命が縮む。




麻袋に首を預け、目を閉じた。

しばらくして、給仕係がやってきた。


「コマゾス様。食事をお持ちしました」

「わかった……」


~~~


「なぜ、これを否認する?」

「?」


突然、首をガシッと掴まれた。


「ぉゎゎ……」

「なぜ、これを否認する?」


目を開けると、昨日、コマゾスが否認した稟議書がある。

振り返ろうにも首を掴む手の力が強く、全く動けない。


「城?」

「そうだ。約束の時間になったからな。次は私の質問に答える番だ。否認の理由は?」


やはり不死王だ。

銀の壁は不死王には効果がないのか……。


「どうした? 何を考えている?」


首を掴む手の力が強くなる。

必死に思い出す。

不死王の苛立ちが首からじわじわと伝わってくる。


「それは……根拠の一部に疑問がありまして……」

「その場合は保留でいい。調査依頼を出して、その結果を待ってから判断すればよかろう」


不死王はコマゾスの首を離さない。語気の強弱に比例して、首の締まり具合が変わる。

コマゾスの引きつった唇がわずかに震えた。




◇◇◇



アバンフ、中央の塔。

アバンフの新しい長となったモノジ(不死王信者)の執務室。


朝一番にモノジの補佐ボイトがやってきた。

キチッと髪を整えた姿勢のいい男だ。モノジより少し年下の30才くらいだろうか。

澄ました顔で淡々と報告する。


「一晩中探したのですが、王都からの書類は見つかりませんでした。そもそも存在しないようです」


モノジはボイトの胸に目をとどめたまま、しばらく黙り込んだ。


「わかった。……で、その子は?」

「はい。今日から新しく執務の補佐を担当するティクシーです」


ティクシーは深々と頭を下げる。

まだ若い女の子だ。


「向かいの部屋に待機しておりますので、何なりとご用命ください」

「わかった」

「それでは失礼します」


二人が出て行くのを見届けると、モノジは振り返った。

そこには銀色の鎧が鎮座している。


「おそらく彼女(ティクシー)もヴァンフ(コマゾス配下の商人)の配下でしょうね」


銀色の兜からしっかりと芯のある女性の声が発せられた。


「そうなの? あの初々しい感じからは想像もつかないけど……」

「くれぐれもお気を付けください」


モノジは不死王への連絡板を指先でなぞる。


『陛下、書類が見つかりません。そもそも存在しないようです。』


書き終えると、連絡板を裏返しにした。


コン、コン


「どうぞ」


ヴァンフの秘書サランデが不機嫌そうに立っている。


「ヴァンフ様がお呼びです」

「は?」

「ですから、ヴァンフ様がお呼びです」

「……わかった」


サランデはモノジをにらみつけると勢いよく扉を閉めた。


「行かないですよね?」

「もちろん」


連絡板を見つつ、鎧からの声に応えた。

そこにはすでに不死王からの返答があった。


『処分されたか。すぐに持って行く。』


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