表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/21

付きまとわれる不死王


「またか……」


湖畔でバラバラになった骨を繋ぎ合わせ、ようやく人型を成した私の前に、その男は立っていた。

中年の魔法使い、レヌン。

ひどく執念深く、そしてなにより――私の正体をおそらく知っている厄介な男だ。



彼との最初の出会いは湖だった。

空からの自由落下を楽しんでいた際、湖畔で釣りをしていた彼をずぶ濡れにしてしまったのだ。

詫びとして金貨を置いて立ち去ったのだが、彼はそこから私を追いかけてきた。


私が衛兵に捕まり、毒殺刑をやりすごした姿まで見ていたらしい。


「不死王様。どうか、その研鑽の果てを、この端くれに……」


地面にこれでもかと、額をこすりつけ、レヌンは不死の法を懇願する。

その目的は、現国王ロレスマークへの復讐。


(面倒な男に目をつけられたものだ)


不死の法など、生身の人間が知ったところでロクなことにならない。

私は適当にごまかし、煙に巻くことにした。

だが、この男は諦めない。私が街を歩けば影のように付きまとい、食事も必要ない私に差し入れをし、隙あらば魔法理論の議論を吹っかけてくる。


いつしか私は、彼を退屈しのぎの話し相手として、そばに居ても気にならないようになっていた。




◇◇◇




ある夜、いつものように私は薬草屋で店主からレクチャーを受けていた。

最近は色々な薬草の知識を吸収することに夢中なのだ。

そこに現れたレヌンが、愚痴をこぼした。


「王城を包む結界……あれがある限り、私の復讐は届きません。まさに鉄壁です」


私は薬草の匂いを嗅ぎながら、つい反応してしまった。


「必ずどこかに結界のない場所がある。もちろん衛兵が立っている箇所は張られていない。さらにもう一ヵ所あるんだ」


「そうなんですか?」


「まあ、それを見つけるのは難しいと思うが……」


私はそれ以上詳しくは語らなかった。

しかし、目の前の男が、たったそれだけで執念深く探し出すとは思いもしなかった。




◇◇◇




後日、それからしばらくしたのち。

ロレスマーク王とその一族が王城に集った、祝祭の夜。

王城を覆っていた結界はそのままに天地を揺るがす轟音とともに、王城が下から崩落した。

燃えることなく、瓦礫の土埃をまき散らすことなく、結界の中で王城は消えた。

轟音と振動がなければ、王城が消えたことに気づかなかったかもしれない。



私はいつもの薬屋から出て、呆然と空を見上げた。

城は跡形もない。王一族は、その瓦礫の下で全滅しただろう。


しばらくして、埃まみれのレヌンが私の前に現れた。

その瞳には、長年の呪縛から解き放たれた者の、空虚な輝きがあった。


「不死王様……。あなたのおかげで、王の首を取れました……」


レヌンは私の足元に膝をつき、涙を流して感謝を述べた。


「やってくれたな。まさか城を粉々にするとは……」


私は頭を抱えた。

聞けば、彼は王の地位にも、その後の権力にもまったく興味がないという。

ただ、殺したかった。それだけのために、私の失言をヒントに目的を達成したのだ。


一国の王家が消滅し、城が崩れた。次の王の誕生まで国全体が安定することはない。

せっかく気に入っていたこの街が、混乱の渦に巻き込まれてしまう。


「おいレヌン、泣いている場合か! このあとはどうするんだ?」


「不死王様。私にはもう、未練はありません……」


「ふぬ……」


数百年の眠りから覚めた不死王は、図らずも一国の滅亡に加担してしまった。

その後悔と、この街の未来を思い、眼窩に宿る紅い焔が力強く灯り始めた。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

【関連作のご案内】

このエピソードの少し後のお話。レヌンが主人公の読み切り「封印の使徒たち」(1万字で完結済)

興味のある方は、ぜひあわせてお楽しみください。


もしこの物語がお気に召しましたら、下の【☆☆☆☆☆】を色づけていただけると嬉しいです。

皆さまからいただく星の一つ一つが、何よりの執筆の力になります。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ