表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/54

アバンフ強襲①


アバンフ(前の王の直轄領)の中央にある塔。

それは灰色の石がつまれ、ところどころ白い液体のようなものが流れた跡が残っている。

その中にある会議室。

そこでは、この日も朝早くから、この町の要人たちが集まっていた。



扉を開いて右奥には二人の要人がいた。

その要人を警護するためにそれぞれ1名の兵士、さらにその後ろにもそれぞれ1名の兵士が控えていた。


町の長であるロレンスマーク(王族の端くれ)は何一つしゃべらない。

素直すぎるゆえに一族に厄介者扱いされ、ここに追いやられてきた。

それから20年近くが経つ。


若い時は人の言葉や行動をそのまま受け取ってしまい、王族を窮地に追い込んだこともあった。

しかし、今はその意味やさじ加減を多少は理解できるようになったのだろう。

表情一つ変えず、黙って話を聞いている。


時折、ロレンスマークがこそこそと話しかけるのはオルト(実質的な長)

有能すぎるうえに政敵に(はか)られ、王都から追い出された人間だ。

ただ、このような有能な者はごく一部。


その二人から距離を置くように、扉を開いて左側には声だけが大きい、面倒くさい人間が6人、群れていた。




一夜にして、王族ほぼすべてとその側近たちがいなくなった。

それ以降、朝から晩まで一日中、会議室に閉じこもって方針を話し合っていた。

しかし、ほぼ何も決まらない。

決まったことと言えば、町に現れた死霊兵たちを始末することだけ。

いまだに感情的に自分の意見を突き付け合うだけだった。


アンシル(要塞都市)には断られたではないか!」


「仇ですぞ!」


「いまだにこちらにお願いしようともしない。それどころか、自分で統治を始めてるではないか!」

「最初からそのつもりで不死王がやったのではないか?」


「手のうちを確認してからも遅くない」


「さっさと兵を挙げろ!」


それぞれが思いつきで意見を投げ合うばかりだった。



バンッ


会議室が静まり返った――

一斉に突然開かれた扉の方向を向く。

そこにはわずかに笑みを浮かべる小柄な爺さん(ヨトフ)、引き締まった表情の若い女(不死王の仮の姿)、肌の露出が全くない鎧男(古い護影)と紫の肌で無表情の死霊兵が横一列に並んで立っていた。



◇◇◇



ヨトフが先頭を切って、ロレンスマークの前へと歩み寄ろうとする。

死霊兵と護影もヨトフを警護するためについていく。


不死王(ラスティネルの姿)は扉を閉め、その前に立つ。

鋭い視線を周囲に向けるが、仮の姿なので迫力は皆無だった。



ヨトフがロレンスマークの前にたどりつくまで、あと少しの所。

二人の兵士がその前に立ちはだかる。


「……」


ヨトフがその後ろにいるであろうロレンスマークに視線を向けようとする。

しかし、二人の兵士がその視線を遮るように立ち回り、話を始めることができない。

しばらくして、ヨトフは不死王に向かって話した。


「書類を渡したほうがいいのでは……」

「そうか、失念していた」


そう言うと扉の取っ手をぐるぐると何かで巻くような動作をしてから、不死王は消えた――


その様子を見ていた要人と兵士たちは不死王のいた場所に視線を送って固まる。

部屋の空気がしばらく止まった。



そして。

不死王は書類を持ったチージョイルと新しい護影とともに扉の前に現れた。

不死王に促され、チージョイルと新しい護影はロレンスマークたちがいる方へと歩みを進める。


チージョイルは書類を兵士たちに見せると、渡すためにじりじりと距離を詰めようとした。

しかし、すかさず、腰を落とし、剣を構えるロレンスマークの兵士たち。

剣先がわずかに震えている。


それを見たチージョイルはすがるような目で後ろを振り返り、新しい護影から不死王へと視線を向けていく。


その様子を見かねたヨトフがチージョイルを支援する。

ロレンスマークの前に立ちはだかる兵士たちに穏やかに話しかけた。


「書類を渡すだけじゃ。何も小細工しとらん」

「信用できるか!」


歯を食いしばりながら、片方の兵士が答えた。




会議室の扉の左側、一番奥。

オルトと反対側の奥に座る要人――ヴァンフは侵入者たちの様子をうかがっていた。

侵入者たちが暴力で制圧しようとしていないのは持ち物や服装、佇まいから明らかだった。

しかし、何をするかわからない。疑念の目で見つめていた。


そんな時、ロレンスマークの隣にいたオルトが立ち上がった。

前に出ようとするが、兵士が背中で必死に押さえようとしている。

その様子を見たヴァンフはあわてて声を荒げた。


「どうせ、王都の回し者だろ! そこの死霊兵が何よりの証拠! 話を聞く価値など……」


ヴァンフの顔のすぐ横を何かがシュッと通り抜けた。

その風を急に感じ、声が止まった。

耳を触りながら、振り返ったが通り抜けた物の痕跡はない。

再び正面を向いて、矢のようなものが飛んできた方向へ視線を走らせるが、出所はわからなかった。




古い護影は不死王と目で合図する。

ヨトフの隣からチージョイルの前へとゆっくり歩みを進める。

その手に握られているのは、木の棒。まっすぐ立てたまま、床にそっと置く。


(ひと)呼吸――


目がくらむほどのスピードで兵士たちに向かって、木の棒を横向きに振りぬいた。


---------

【あトがき】

チージョイルがアバンフの会議室に姿を現す少し前。

ヘロックとチージョイルが話している最中。


不死王は宙でその様子を見下ろしていた。

連れて行くべきターゲット――チージョイルと新しい護影の位置を確認する。

音も風もなくスッと舞い降りると、二人を抱えて舞い上がり、天井へと消えて行った。



漆黒の巨城三階。文官たちの作業スペース。

まだ朝早い時間なので、誰もいない。


不死王 「アバンフとの交渉資料は用意できているか?」

チージョイル 「……はい……」


チージョイルは資料を探しに棚へと駆けだした。


不死王 「これから行くところは万が一があるかもしれん。チージョイルだけを守ればいい。気を抜くな」

新しい護影 「……わかりました」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ