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文官のヨトフと不死王④ ヨトフのお願い


ヘロックとチージョイルは、いつもの早朝会議をしていた。

ヘロックの隣には、また新たなパートナー(治癒師のライユチ)が座っていた。

チージョイルがやってくるなり、ヘロックはその顔をチラッと見て、切り出した。


「オレは気づいたんだよ」



チージョイルは座る前に、ライユチの耳元でささやく。


「気を付けてください。油断してると殺されますよ」

「おい」


「この人、容赦ないですからね」

「殺してないだろ」


ライユチは特に反応することなく、にこやかに二人の話を聞いている。

チージョイルは席に着くと、ヘロックに話しかけた。


「何に気づいたんですか?」

「今、この国には治癒師がいない」


ヘロックはわずかにうつむく。

そして、手を組んでチージョイルを見つめて言った。


「――冗談だ」


チージョイルはライユチに目を向けた。


「見る人が見れば、治癒師とわかりますよ。どうやって連れてきたんですか? 拉致でもしたんですか?」



ヘロックは天井を指さして、チージョイルに真剣な眼差しで頼み込む。


「これは冗談だ。封印することにした。おまえには善意の第三者になってほしい」

「『冗談』って言えば、何でも許されると思わないでください」



「今日はどうしたんですか? 封印してるんですか?」

「よくわからんが、そういう気分にならなかった」


チージョイルはライユチをチラッと見た。


「これが治癒師のチカラですか……」




――ここから三人は筆談に切り替えた。

チージョイルは念のため、手で隠しながら紙に書く。

その紙を裏にして、ヘロックに突き付けた。


ヘロックが手をかざし、ライユチがそれを横から覗き込む。

こうして、しばし三人は筆談を続けた。



チージョイルは目を伏せたまま、動かない。

しばらく考えた後、ライユチに穏やかに話しかけた。


「ライユチさん。封印なんてせず、普通に治癒の仕事をしませんか?」

「おい」


ヘロックが目を見開いて、チージョイルに考え直せと言わんばかりに口をカクカクと動かす。

チージョイルはそれに反応することなく、自分の黄色い首輪を指さし、ライユチを説得する。


「これをつける覚悟さえあれば、ここで仕事できるようになると思いますよ。どうでしょう? 一緒に仕事しませんか?」


ライユチはチージョイルの目を見て話を聞いた後、目線を落とす。

一度目線を上げて何かを言おうとしたが、再び、目線を落とした。


「連れてくるの、大変だったんだぞ!」

「ここで恩を売っておきませんか? 敵対行為は破滅しかありませんよ」


チージョイルはヘロックをなだめたあと、ライユチを強引に引き込もうとする。


「ライユチさん。このあとお時間大丈夫ですか? 面接を受けましょう」

「わかりました……。お願いします」

「おい」


ヘロックはチージョイルに小さい声で言うと、見つめたまま固まった。



◇◇◇



チージョイルは、筆頭(ヨトフ)に聞かれていた件に返答しようとしていた。


しかし、ヨトフの姿をした不死王がなかなか現れない。

最近は一階の面接室でも不死王の姿を見かけなくなった。


ヨトフから不死王に伝えてもらう……? それは違う。

本物のヨトフに答えたところで「はて?」となるだけだ。

今はどっちだ? 本物だろうか?


「筆頭。モルネック夫人の引き抜きの件ですが……」

「……うん?」

「ですよね……」

「どうした?」


チージョイルはうなだれて立ち去る。

ヨトフが二人存在することを確信した瞬間だった。

おそらく、あの時のヨトフは不死王だったのだろう……。



◇◇◇



『ご相談があります。いつでも準備できています』


不死王の執務室。

壁一面に掛けられた連絡板の数々、その中の一つに文字が浮かんでいた。


不死王は早速、ヨトフを呼んだ。

ヨトフは一礼すると、不死王の隣の丸椅子に座った。


「人手が確保できたので、時間に余裕ができました」

「そうか!」

「実は、昔なじみが西の町で長をしています。連れて行ってほしいのです」

「……うむ……」


不死王は固まった。壁を漠然と見つめる。


「考えさせてくれ。長と会えるなら交渉もしたい」


ヨトフは一礼すると立ち上がった。

そして、目をさらに開いて、思い出したように告げた。


「あと、面接希望者が来ています」

「そうか!」


不死王は机の上の紙を紐で束ねると、スッと立ち上がった。


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