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レヌンの災難③


レヌンとミオンは二人で浮き輪に乗って、レヌンの服を探しに地上に出ていた。


「やっぱり縛られたままじゃ、無理だろ。何、考えてるんだ、あの女……」


そう言うと、浮き輪の上に横たわったレヌンは頭を少し上げた。

レヌンの顔のすぐ前はミオンのお尻。小刻みに左右に動く。

ミオンは振り返って、レヌンの顔を見た。


「行くよ!」

「ぉぅ」


浮き輪が地面をすべるように動き出した。

レヌンは頭を起こし、アゴを引いて、行く先を見つめる。


「そうだ。あそこだ」


木のまわりは草がまばらにしか生えていない。

そこまで行けば、一目で服と靴の場所がわかるはず――



しかし。

そこにはなかった。

ミオンは浮き輪から降りて、周辺の茂みの中も見て回る。


「空から見てみたら、すぐにわかるかも」

「そうだな」


レヌンは自分が拘束されていることなどすっかり忘れたかのように上機嫌に答えた。

そして、浮き輪のまま、ミオンたちは湖の方向へと進んだ。



湖には相変わらず、大量の黒いモヤが立ち込めていた。

日差しがなければ、何も見えなくなるかもしれない。


ミオンは湖の際々まで浮き輪のまま移動して、叫んだ。


「ヴェルカトスーー!!」



遠くでバシャッと音がしたと思ったら、魔龍の巨大な頭だけが静かにヌッと横から現れた。

面倒くさそうにミオンとレヌンを見つめる。


「ちょっとだけ、真上に連れて行って」

「……」


一瞬、間があったものの、魔龍の頭がスッと消え、入れ替わりに尾の先がピタッと現れた。

ミオンとレヌンは浮き輪のまま、魔龍の尾の先から背中へと軽快に滑っていく。



魔龍の真ん中くらいまで来ただろうか。

まっすぐ空へと昇り始めていくのと同時にレヌンは魔龍の背中を滑り落ち始めた。

目の前にいたミオンの背中がどんどん小さくなっていく。


「おーーーーい!」


レヌンの声はミオンに届かない。

そのままレヌンは魔龍の背中を徐々に加速しながら、頭から滑り落ちていく。


ちゃぷん


水に浸かる瞬間、ミオンの「ぁ」と言う声が聞こえた気がした。




レヌンは体中を緑のヒモで縛られたまま、湖から必死に顔を出して呼吸しようとしていた。

かろうじて湖面から口を出してハフハフしている。


魔龍の尾の先に乗ったミオンがやってきて、レヌンの首元をつかんだ。


「大丈夫?」

「ハァハァ……死んでしまうわ…………そもそもだが……一緒に乗る必要あったか?」

「ない」


「それで見つかったか?」


ミオンは首を振った。


「もう一回見てくる……。ヴェルカトス!! レヌンを陸に上げて!」


魔龍の尾がゆっくりレヌンの体に巻き付くと、湖岸に向けて投げられた。

宙を舞うレヌン――



ズザザザァーー


「ぉぅ……」


レヌンは湖岸の砂に顔を叩きつけられた。


そのままクルッと一回りして仰向けになる。

顔についた砂を落とそうと顔の右側の筋肉だけを動かす。

左目だけで黒いモヤの隙間から魔龍が空高く昇っていくのを眺めた。



このあと、無事、服と靴は見つかったのだが……緑のヒモのせいで服を着ることはできなかった。


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