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本日13個目の魔石を粉砕した所で、リカはため息をついた。

あれから少し経つが、魔力の調整はまったく上達する気配が見られない。

マリエッタは薬草の採取に出かけてるため、ほどほどでやめるようにという言いつけを守って、本日はこれで休憩を取ることにした。

マリエッタも言っていたが、無理するのは良くないことだし、最近では自分の魔力の限界値もなんとなく分かってきた。

その限界ぎりぎりでやめるように最近はしている。

それに今日はお客が来るかもしれない。

あのマリエッタの知り合いである手紙の送り主が、魔力の調節に詳しい先生をよこすので魔力の使い方を見てもらえというのだ。

マリエッタも違う人に見てもらうのはいいことだから、ぜひそうしてもらいなさいとの事だった。

その人が来てすぐに見てもらえるように、今日は魔力をセーブしておくことにしたのだ。


朽ちた木の切り株に腰掛ると、見計らったように幼い狼たちが寄り添ってくる。

親狼達はそんな子供達を少しはなれたところで見守っていた。

狼たちのリーダーである大きな狼はマリエッタについて行ったため今ここにいるのは若い狼ばかりだ。

その中でも幼い狼たちは意思疎通も難しいが、なんとも拙い言葉遣いが可愛らしくて、彼らと遊んでいると気がまぎれるのだ。


『りか、今日はおしまい?』

「うん、無理したら駄目だってマリーさんに言われてるもの。」

『じゃあ今日はもう遊べる?』

『昨日はかくれんぼ。』

『その前はこおりおに。』

『今日はなにする?』


実は数日前から修行がうまくいかないリカを影で見ていた幼い狼たちが、かまいだしたのだ。

好奇心旺盛な幼い狼たちは、リカが何度も魔石を粉々にしているのをなにか遊んでいると思ったのか、じゃれ付いてきたのが始まりだった。

親の狼たちに窘められてしょんぼりしていたのを見て、なんだか可哀想になり、遊び相手になってやったのが始まりだった。

もちろん修行が終わるまでは彼らも大人しくしているが、いざ終わったとなると毛玉の群れが押し寄せるようにリカを囲んで、何で遊ぶか相談し始めるのである。

しかし、かくれんぼは彼らの嗅覚が良すぎてすぐに見つかってしまうし、こおり鬼ははしゃいですぐに子供達は動き回ってしまう。

はて、今日は何がいいものかとリカが考えて思いついたのは、「だるまさんがころんだ」だ。

しかし、この世界にだるまはいないしなんと説明したものか。

さらに悩むリカを、子供達はわくわくと輝く目で見つめていた。


「いくよー!ま・り・え・ッ・た・が・こ・ろ・ん・だッ!」


木の幹に顔をつけて後ろが見えないようにして、急遽マリエッタの名前を借りた、決まり文句を叫ぶのと同時に、後ろを振り返ると、そこにはぴたりと動きを止めた子狼たち。

しかし、一番前の狼は勢いを殺しきれなかったらしく、ころりと転げた。


「あ、動いた!」

『きゃうん!』


一番にたどり着こうと意気込んだのはいいが、一番に失格になってしまい、しょんぼりと耳を伏せる。

その可愛らしい様子にくすくす笑いながら、もう一度木に向かう。


「まりえったがころんだ!」


今度はさらにスピードアップして叫ぶと、勢いよく振り返る。

さっきより近くなった子供達。


しかし。


「あれ?」

『ん?』

『あれ?』

『だれ?』


その中心に、子狼というにはあまりに大きすぎる人間が立っていた。

木漏れ日にきらめく黄金色の髪はオールバックにして一部を三つ編みにしている以外は背中へ流れるように伸びて、その髪の隙間からにょっきりとのびた三角の耳。

森の葉っぱのような瞳が面白いものを見つめるようにリカをじっと見つめている。

まるで人形のように整った顔をしていて、触れば切れてしまうようなそんな鋭利な刃物のような印象を受けるが、彼の微笑がそれを吹き飛ばしていた。


「やあ、はじめまして。君がリカだね?」


知らない美しい人はそう言ってリカに挨拶した。

それにあわててリカも挨拶を返した。


「は、はい!リカと申します。あの、どちら様ですか?」

「私はヨハンだよ。今日から君の先生をすることになったんだ。よろしくね。」

「こちらこそ、よろしくお願いします。」


リカがぺこりとお辞儀をすると、彼はにこにこと笑いながら、リカの頭をぐりぐりと容赦なくなで繰り回した。

どうやら彼が例の新しい先生らしい。

しかし、マリエッタの家ではなく、どうしてこの森の奥地へ来たのだろうか。

狼たちも知らない人に警戒して、こちらを伺っている。

リカが内心首をかしげている間も、ヨハンはぐりんぐりんと頭をなで繰り回していた。


「いやぁ、ちゃんと挨拶もできるなんて、ちいさいのにえらいねぇ!

年の割りにしっかりしてるし、落ち着きもある。おまけに勉強熱心らしいし、これなら教えるのも楽に出来そうだね。」

「あ、ありがとうございます。」

「うんうん。素直なのもよろしい。森の精霊の気持ちも分かるなぁ。こんないい子なんだからね。」

「精霊…ですか?」

「おや?まだ君の師匠から聞いてなかったのかい?

君には精霊たちに手伝ってもらいながら魔力の調節をしたほうがいいと思うんだ。

とりあえず君のお師匠様の家へ行こうか。」


ヨハンはリカの手を取ると、マリエッタの家へ向かったのだった。






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