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沈んだ表情のエドガーは教授と別れたあと、そのまま自室へと帰った。
彼が受け持つ授業は無いので、自室で書きかけの論文でも書こうかと思ったのである。
多いときで週に二、三回程度の召喚術を教えているのだ。
マリエッタの使うリッキーは自然界の生き物を従える契約術だけでいいのだが、異世界や魔界の生物を呼び出して従えるが召喚術だ。
時には思いもしない知識をもたらしてくれる事もあるが、彼らがそれを対価無しに与えることは無い。
生半可な魔力では、召喚した途端に魔力が尽きて死んでしまったという例も過去に報告されている。
自室に戻ると、彼と契約中の魔界の友人であるホルホルがリッキーを甚振っていた。
大きさで言えばふくろうのリッキーのほうが大きいのだが、凶暴さでは負けていない。
彼の身体は隼だ。
しかし、それは仮の姿であるらしいし、ホルホルという名前も真名ではないらしいが、契約は結ばれているのでそれほど気にしたことは無かったし、呼び名さえあれば彼にはどうでもいいことだった。
とうとう、リッキーが墜落しテーブルの下へ逃げ込むが、超低空飛行でテーブルに突っ込んでいったホルホルともみくちゃになり、たまらずリッキーが叫んだ。
『オイ、エドガー!!この怪物をどうにかしろ!!』
仕方なくエドガーはテーブルの下に手を突っ込み容赦なくむんずとつかんで引きずり出すと、大きな毛玉がくっついてきた。
掴んだのはホルホルの片足だったらしく、目の前まで持ち上げるとホルホルは執念深くリッキーの尾羽を咥えて離そうとしないばかりか、今にも引きちぎりそうだった。
エドガーがリッキーの頭も鷲掴み、ホルホルから聞き離そうと引っ張るとリッキーの悲痛な声が響いたが容赦なく力をこめればあっけなくリッキーとホルホルは離れた。
ホルホルのくちばしにはリッキーの立派な尾羽が数本残されていたが。
『イテぇ!もう俺飛べない。無理。二度とここ来ないからなッ!!』
『貴様が我の朝食を食べたのが悪いのだ!育ちがうかがえるな、この田舎梟め!』
『ンだトォ!?』
「もうよせ。リッキー今治してやる。ホルホル、お前の朝食はあとで用意してやる。」
『我は最高級ピレニアの熟成生ハムを所望する!!』
「わかったわかった。」
エドガーはうんざりしながらホルホルに返事をして、リッキーを作業台に乗せた。
リッキーの尾は可哀想に数本抜けて血が滲んで、このままでは飛んで帰ることは難しいに違いない。
早い所帰ってもらって、静かに論文を書きたい。
そう思いながら指先に魔力を込める。
「オル・ヒーラ」
呪文を唱えると、僅かに彼の指先が発光して、リッキの出血がぴたりと止まった。
それを確認すると清潔な布で血を拭ってやると、リッキーはぴょこんぴょこんと歩くと異常がないかしつこく首をめぐらせて確認していた。
『しんじらんねぇ、リカがお礼の手紙を書いたから超特急で届けたってのにこの仕打ち!!』
「何?」
リカが?
あの小さな子供が手紙を書いたというのか?
慌てて書斎の机を見てみると、其処には見慣れた師匠の印のある封筒と、黄色い花が添えられた封筒があった。
ま、まさかこれは…!!
震える手で、花の添えてある封筒を手に取ると、やや滲んだ字でリカと書いてあった。
その瞬間、エドガーは最上級雷魔法を受けたような衝撃が身に走った。
まさか、あのような小さな子供が手紙を書くなんて…!!
あの小さな手で一生懸命書いたのか!?
そんなに聡明だとは…もしかして見た目よりも年齢が上なのかもしれない。
そっと封を開けて中身を取り出すと、そこには先日のお礼の言葉が書いてあった。
たくさんの贈り物をありがとうございます。大切に使わせてもらいます。
もしご迷惑でまければ、これからもお手紙をかいれもいいですは。
お手紙まってます。
「ホルホル、私はいま眠っているのか?」
『なら、起こしてやろうか?』
そう言ってホルホルがその鋭利なくちばしでエドガーの頬に噛み付いた。
痛い。
すごく痛い。
しかし、エドガーはすごく嬉しそうだった。




