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マリエッタに手紙の話をすると、始めは難色を示したものの、最後にはにっこり笑って許可してくれた。
なんだかたくらんでそうな笑い方だったのが気になるが、気にしないことにした。
早速、手紙を書こうと思ったのだが、文字など何一つ知らないので、マリエッタに口頭で伝えて、文章にしてもらう。
それを見よう見まねで書いてみて分かったのだが、この子供の手では力加減が難しく、インクが紙に滲んだいたずら書きのような手紙になってしまった。
よく考えれば、私くらいの子供って字を書く以前に、絵ですらも描けてない様な気がする。
そんな事を思い出したのは、リカの甥っ子がちょうどそのときに子供特有のいたずら書きをしていたのを思い出したからだった。
けどこれも訓練のうち。
そう思い込むことにして、マリエッタにもらった書き損じの紙を使って練習をするリカなのだった。
それから数日後の王都の魔法学校。
エドガーはうんざりしていた。
その原因はと言えば、目の前の魔法生物の教授である彼なのだが。
彼にリカの日用品の購入先を聞いてからというもの、日を空けることなく彼の娘自慢が開始するからだ。
やれ妻の化粧を真似するようになっただの、パパと結婚すると言われただのいい加減うるさい。
煩いを通り越して公害だ。
話の最中にあさっての方向を見始めたエドガーに気がつくことなく、教授は延々と話し続けている。
が、突然彼はエドガーに投げかけてきた。
「そういえば校長にお嬢様がおられたとは知りませんでしたな。」
「教授、私に娘はおりません。」
「え?では先日は…?」
「あれは恩師の子供に送ったものだ。」
「はあ、そうですか…。」
教授はそう頷きながらも、エドガーから買い物の内容を聞いていた彼は、内心首をかしげる。
恩師の子供に生活用品一式買い与えるものだろうか。
いや、この人一般常識とか加減とか生まれたときに母親のお腹の中に忘れてそうだもんなぁ…。
「恩師といえば、マリエッタ女史ですな。あの方のお子様なら大層お美しくなられるでしょうな。」
「いや、彼女は師匠の養子だ。この事は内密にな。
だが、あの子は将来師匠以上の美人になると私は思っている!」
さっきまで教授の話をつまらなそうに聞いていた時とは打って変わって、鼻息も荒く教授に予言するエドガーに教授は開いた口が塞がらなかった。
今までこんなに生き生きとした校長など見たことが無かったからだ。
それでも長年この学校に勤めている彼だからこそわかる変化で、普通の人には目がらんらんとして怖いだけにしか見えない。
「先日、日用品を贈るついでに装飾品でもと思いまして、髪飾りを送ったのですがきっと似合うと思うのです。」
「それはそれは、きっとお喜びになられたのではないですか?」
「…いや、彼女には直接渡していないからな。師匠にもなるべく会うなと釘を刺されている。」
いままで生き生きとしていたエドガーが、しおしおと目に見えて落ち込んでいく。
初めてリカに会ったあの日、エドガーはマリエッタによって出入り禁止を言い渡されていた。
それはもちろんリカに興味を持っていた姿が、あまりにも危険人物らしいことと、彼の容姿にも原因はあった。
彼は子供に好かれないタイプだ。
泣く子も黙るどころか、ひきつけを起こされたこともある。
エドガー自身は子供は大好きなのだ。
しかし、子供にとっては彼の高身長から繰り出される怖い顔は恐怖でしかないので、リカの心身の健康のためにも、大きくなるまではリカに接触する事は禁じられたのである。
教授はその話を聞くと、確かにそうかも…と心の中で思った。
彼の娘が職場を訪れたとき、彼本人は知らないが、エドガーを目撃して酷く泣いていたのを覚えている。
さらに申し訳ないことに、娘が悪いことをすると
「悪いことしていると、校長先生に来てもらって叱ってもらいますからね!!」
というと、娘が素直に言う事を聞くのは、彼には黙っておいたほうがいいだろう。
とにかく、子供にとってはエドガーは神話に出てくる子供をさらうという怪物よりも怖い存在なのだ。
子供にとってはなまはげ以上に怖い存在なエドガーさん




