人間26
しかし、ファウムはナオに微塵の好意も抱いていなかった。以前の彼であれば、ナオの言葉を聞いた途端、激昂していたに違いない。だが今は、災厄に追い詰められ、その怒りさえ押し殺さざるを得なかった。(『豹の子』と手を組むのも悪くはない。たとえ利にならずとも、始末する術ならいくらでもある)そう判断したファウムはナオへ向き直り、低く言い放った「このファウム、口にしたことは違えぬ。火を取り戻すことができれば、ガムラをお前に与えよう。そして、お前を何の代償もなく我が子として迎え入れてやる」そう言うと、彼はゆっくりと手を掲げた。その仕草には粗野さと侮蔑が色濃く滲んでいた。そしてガムラに前へ出るよう合図した。ガムラは震える足取りで一歩前へ進み、不安と戸惑いに曇った瞳をそっと上げた。ナオが自分を見つめていることは分かっていた。だが、その姿を目にした瞬間、胸の奥から嫌悪がじわりと込み上げた――(火さえ取り戻せば、あとは人食い族に喰われてしまえばいい)彼女は心の底から、そう願った。
ファウムは節くれ立った手をガムラの肩に置き、野太い声で誇らしげに叫んだ。「人の娘でガムラに敵う者はいない。こいつは雌鹿を肩に担ぎ、夜明けから日暮れまで歩き続け、飢えと渇きに耐え、獣の皮を剥ぎ、湖を泳いで渡る……。予言によれば、この娘は不死の子を産むという。ナオよ、もしお前が火種を持ち帰ることができたなら、斧も角も貝殻も毛皮も差し出す必要はない。ガムラはお前のものだ」
参考文献
Boex, J. H. H. (1911) La Guerre du feu(=『火の戦い』).
Harari, Y. N. (2014) Sapiens: A Brief History of Humankind(=『サピエンス全史――文明の構造と人類の幸福』).
推定総盗用率:およそ3~8%




