人間23
森林部族にとって、食糧不足は常に深刻な課題であった。森林部族が長期にわたり食糧不足に直面した主な理由は、森林において人間が利用可能な食糧資源の密度が低いことにある。森林は豊かな生物多様性を有しているものの、人間が直接利用可能な動植物資源は、大型草食動物が群れをなす草原や、比較的安定した漁業資源をもたらす河川や湖沼とは異なり、広範囲に点在している。そのため、野生果実や木の実、塊根植物などを採集するには、多くの時間と労力を必要とした。また、森林は植生が密で視界が悪いため、獲物は容易に身を隠して逃げることができ、狩猟の成功率は低かった。さらに、森林に生息する動物の多くは小型であり、得られる肉量は限られている一方、大型獣は個体数が少なく、捕獲も容易ではなかった。加えて、森林の食糧資源は強い季節性を有しており、野生果実、木の実、キノコ類などは特定の季節にしか豊富に得られない。雨季や乾季、寒冷期には動植物の生育や活動が大きく影響を受けるため、食糧供給は大きく変動した。さらに、森林は湿度が高く、食料は腐敗やカビの発生が起こりやすい環境にあった。十分に発達した保存技術を持たない部族にとって、食料を長期間備蓄することは困難であり、その結果、季節的あるいは一時的な食糧不足に陥りやすかった。また、森林生態系の環境収容力には限界があり、長期的に維持できる人口は限られていた。人口が増加すると、周辺の資源は急速に消費されるため、部族は移住するか、人口規模を抑制せざるを得なかった。さらに、洪水、長雨、干ばつ、森林火災、疾病などの自然災害は、利用可能な動植物資源をさらに減少させ、食糧危機を引き起こす要因となった。農業が未発達な森林部族にとっては、森林の密集した植生と限られた日照条件も農作物の栽培に不利であった。焼畑農業を行った場合でも、土壌の肥沃度は比較的短期間で低下するため、新たな耕作地を継続的に開墾する必要があった。このように、食料の獲得コストの高さ、供給の不安定さ、保存の困難さ、さらには農業の発展が制約されることなど、複数の要因が相互に作用した結果、食糧不足は森林部族の生存を脅かす慢性的かつ重要な課題となっていた。
参考文献
Lewis, R. (2022) The Evolution Man: Or, How I Ate My Father(=『進化した男――あるいは、私はいかにして父を食べたか』).
Binford, L. R. (1980) Willow Smoke and Dogs' Tails: Hunter-Gatherer Settlement Systems and Archaeological Site Formation(=『ヤナギの煙と犬の尾―狩猟採集民の居住システムと考古遺跡形成』).
推定総盗用率:およそ3~8%




