オケアノス9
コイオスとテュポーンは、よく森の中で遊んでいた。テュポーンの身体からは時折、黒い煙が立ちのぼっていたが、コイオスはそれを気にする素振りも見せなかった。
ウラノスもまた、その黒い気体の存在を認識していた。それはただの異常現象ではなく、かつて混沌が示していた力に近いものではないか——そう疑い始めていた。混沌が消える前、彼女は言っていた。「あなたたちの傍に在り、常に見守っている。」と。「……まさか」ウラノスは低く呟いた。その瞬間、ひとつの仮説が彼の中に形を成す。混沌は、テュポーンの内側に宿っているのではないか。だが、それをどう確かめるというのか。
(もしテュポーンを滅ぼすことで、母が戻るのだとしたら——。この世界そのものがすでに本来の軌道を外れつつあるのなら、いっそ母を復活させ、再び秩序を導かせるべきではないか)その思考が芽生えた瞬間、ウラノスは自らの内に生まれたものの危険性を理解した。それは、本来なら決して触れてはならない類の考えだった。
参考文献
Hesiod(紀元前約700年)Theogony(=『神統記』).
Mircea Eliade(1957)Le Sacré et le Profane(=『聖と俗』).
推定総盗用率:およそ15–30%




