人間43
ナオは夜番の最初の見張りを務めていた。
彼は不思議な体躯の持ち主だった。その身には宇宙のあらゆる精妙が深く染み渡り、森羅万象の気配が静かに息づいていた。目は闇に漂う燐光を捉え、淡く浮かぶ輪郭、揺らめく影、そして星々の狭間へ立ち昇るかすかな光まで見て取ることができた。耳は風のささやき、草木のざわめき、虫の羽音、猛禽の羽ばたき、獣の足音や這い進む物音を聞き分ける。さらに遠くで響くジャッカルやハイエナの鳴き声、狼の群れの遠吠え、ミサゴの鋭い鳴き声、果てはイナゴのかすかな羽音に至るまで聞き逃すことはなかった。鼻孔には、咲き誇る花々の芳香、薬草のみずみずしい香り、獣の放つ濃厚な臭気、そして爬虫類がまとったほのかな麝香の匂いが絶え間なく流れ込んでいた。
彼の肌は、熱や冷気、乾燥や湿り気をはじめとする、無数の微細な変化に応じて絶えず震えていた。彼は時空を満たすすべてのものに支えられて生きていた。しかし、その生は決して自由ではなく、過酷で、常に危険と隣り合わせだった。彼を生かすものは、そのまま彼を滅ぼすものにもなり得る。だからこそ彼は、警戒を怠らず、力と知恵を尽くし、逆境に抗い続ける不屈の精神だけを頼りに、生き抜いていくほかなかった。
参考文献
Boex, J. H. H. (1911) La Guerre du feu(=『火の戦い』).
Merleau-Ponty, M. (1945) Phénoménologie de la perception(=『知覚の現象学』).
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