人間35
ナオはすぐには出発しなかった。ガムラをもう一度この目で見ておきたかったのだ。彼女は一本の梣の木の下に立ち、ゴーンたちは彼女を守るように背後に控えていた。ナオは、彼女が微動だにせず草原を見つめているのを見た。彼女の髪には矢じりのような花と月光色の睡蓮が飾られ、その肌はほのかに光を帯び、涼やかな川の流れや木々の緑よりもなお鮮やかに映っていた。
ナオは息を吸い込んだ。落ち着くことのない渇望と、獣や草木さえ作り変えるほど強い誓い――その激しい思いに、胸は今にも呑み込まれそうだった。優しさと怒りが彼の胸を満たし、ガムラとの間を隔てる者は誰であれ、人食いどものように憎く思えた。彼は斧を高く掲げて言った。「沼の娘よ、ナオはもう戻らない。土の中に、水の中に、あるいはハイエナの腹の中に消えることになろうとも、必ず火種をオルハムへ返そう。そして、貝殻も、青い宝石も、豹の牙も、野牛の角も、あなたのために力の限り持ち帰ってみせる」その言葉に、ガムラはわずかに心を動かされ、子どものように嬉しげな眼差しでナオを見つめた。しかし、ファウムは苛立ったように言った。「アグたちはもう行ったぞ」「すまない」そう言うと、ナオは南へ向かって歩き出した。
参考文献
Boex, J. H. H. (1911) La Guerre du feu(=『火の戦い』).
Campbell, J. (1968) The Hero with a Thousand Faces(=『千の顔をもつ英雄』).
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