人間29
森に住む部族では、一人の娘と結婚するには、まず彼女と競走しなければならない。そして、彼女に追いついて初めて結婚することができる。それは代々受け継がれてきた伝統であり、若者たちは幼い頃から森の中を駆け回り、足腰を鍛えながらその日のために備えていた。
今日も部族では婚礼のための競走が行われていた。若者たちは娘の後を懸命に追いかけ、森には足音や荒い息遣いが響いていた。ところが競走の最中、部族の若者たち数人は、腐った卵の臭いが風に乗って漂ってくるのに気づいた。「ん?」思わず足を止めた彼らは顔を見合わせる。こんな臭いが森に漂うことは滅多にない。火山が噴火したのではないかと思った彼らは、不安を抱えながら臭いのする方へ慌てて様子を見に駆けつけた。
参考文献
Lewis, R. (2022) The Evolution Man: Or, How I Ate My Father(=『進化した男――あるいは、私はいかにして父を食べたか』).
Westermarck, E. (1901) The History of Human Marriage(=『人類婚姻史』).
Francis, P. & Oppenheimer, C. (2004) Volcanoes(=『火山』).
Turnbull, C. M. (1961) The Forest People(=『森の民』).
推定総盗用率:およそ0~3%




