人間30
アグもファウムの言葉に棘があることは感じ取っていたが、そのままガムラへ顔を向けた。丸い目には欲望に濁った光と相手を威圧するような色が浮かぶ。「沼の娘は俺のものだ。あいつに手を出す奴は誰だろうと殺す」その言葉にナオは激怒した。「火種を持ち帰った者がガムラを妻にするんだ!」「俺が必ず火種を持ち帰ってみせる!」
二人は互いを見据えた。アグとナオの間には、それまで争いらしい争いはなかった。互いの力が伯仲していることは知っていたが、利害がぶつかったこともなく、今日まで面識すらほとんどなかった。もちろん、一緒に狩りへ出たこともない。前日でさえ、アグは人目を避けて草原を渡るガムラを横目で見ただけだった。だが、ファウムがその娘を褒めた途端、彼の全身は震えた。元来衝動的な性格の彼は、久しく味わったことのない激しい欲望に突き動かされ、その瞬間からガムラを巡る者すべてを敵と見なすようになった。ナオもそれを察していた。左手で斧を握り締め、右手には槍を構える。アグたちは狡猾で屈強だった。黄褐色の肌には赤い体毛がまだらに生え、甲虫の殻のように鈍く光る目をしている。その素早さと怪力は、見る者に強い威圧感を与えた。
参考文献
Boex, J. H. H. (1911) La Guerre du feu(=『火の戦い』).
推定総盗用率:およそ1~8%




