人間26
森の部族は、故郷を失ったまま、長い年月をさまよい続けていた。ある日、人類に聖なる火を授けた神プロメテウスが、行き場を失った彼らと出会う。彼はその境遇を哀れみ、人類に授けたものと同じ聖火の一部を森の部族にも分け与えた。その日を境に、森の部族はついに猛獣へ立ち向かう力を手に入れた。
しかし、そのことに強く反対した者がいた。ヴァーニャである。「まだ火を使い続けるつもりなの? 火は森を壊してしまうわ」「大丈夫だ。俺たちはきっと火を使いこなせる」「どうしてそんなことが言えるの? もう火のせいで子どもが死んだじゃない!」「あれも……必要な犠牲だった。」「火のためなら、仲間の命まで犠牲にしていいっていうの?」「違う。ただ……」「もういいわ。好きにすれば。でも私は、もうこんなことには関わらない。」そう言い残すと、ヴァーニャは再び木の上へ戻っていった。
それでも彼は部族を見捨てたわけではなかった。やがて彼は、一つの洞窟を見つけ出した。天井は大きな拱を描き、その上には長い歳月をかけて風雨に削られた岩が美しく張り出している。洞窟の前には広く滑らかな岩盤が広がり、その傍らには杉の森が静かに続いていた。森の奥からは澄んだ冷たい湧き水が絶え間なく流れ出ており、飲み水にも日々の暮らしにも十分な水をもたらしていた。
参考文献
Lewis, R. (2022) The Evolution Man: Or, How I Ate My Father(=『進化した男――あるいは、私はいかにして父を食べたか』).
Gowlett, J. A. J. (2016) The discovery of fire by humans: A long and convoluted process(=『人類による火の発見―長く複雑な過程』).
Wrangham, R. (2009) Catching Fire: How Cooking Made Us Human(=『火の賜物―ヒトは料理で進化した』).
Roebroeks, W. & Villa, P. (2011) On the earliest evidence for habitual use of fire in Europe(=『ヨーロッパにおける火の日常的利用の最古の証拠について』).
Binford, L. R. (1980) Willow Smoke and Dogs' Tails: Hunter-Gatherer Settlement Systems and Archaeological Site Formation(=『ヤナギの煙と犬の尾―狩猟採集民の居住システムと考古遺跡形成』).
Harari, Y. N. (2014) Sapiens: A Brief History of Humankind(=『サピエンス全史――文明の構造と人類の幸福』).
Campbell, J. (1949) The Hero with a Thousand Faces(=『千の顔をもつ英雄』).
推定総盗用率:およそ1~5%




