人間29
ナオの復讐は甘すぎる、と口にする者もいる。だが、彼が勇猛果敢な戦士だからこそ、その甘さは、腕力にも俊敏さにも恵まれない者たちの心を惹きつけた。
ファウムのアグに対する憎悪はナオに少しも劣らず、むしろ恐れはナオ以上だった。アグの三兄弟は全身を濃い毛に覆われ、刃さえ立たぬかと思わせるほど頑健だった。三人のうち誰か一人が人を殺すと決めれば、必ず三人そろって手を下す。彼らに歯向かった者は、自ら命を落とすか、一族もろとも滅ぼされるか、そのどちらかしかなかった。かつてファウムは彼らとの同盟を望んだことがあった。だが三兄弟は彼を疫病のように避け続けた。骨の髄まで染みついた猜疑心ゆえに、彼らは他人の言葉も行いも、善意さえ信じようとはせず、どんな媚びへつらいも鼻で笑った。ファウムもまた、誰にも従わぬ冷酷な男だった。しかしその一方で、従う者には寛大であり、人から認められることを強く求め、固く結ばれた排他的で揺るぎない共同体を築こうとする――統率者としての資質を備えていた。彼は冷酷な声音の奥に相手への畏敬を滲ませながら言った。「オルハムに火種を返せ。そうすればガムラは好きに連れて行っていい。さらに、お前を私に次ぐ地位へ迎えよう。私が不在の間は、部族の戦士はすべてお前の命に従う」
参考文献
Boex, J. H. H. (1911) La Guerre du feu(=『火の戦い』).
Sahlins, M. (1972) Stone Age Economics(=『石器時代の経済学』).
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