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元社畜神様はコミュ症すぎて異世界でも逃げ出したい  作者: 片白
5章 エルの故郷編

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5-16 エピローグ



【カイル】

──────────


 意識を取り戻す前に少し心の中を整理したくなった……だってずっとうるさいんだもん。


(うるさいよ)


(お前がこんな何処の馬の骨かもわからんやつをここに連れて来たからだろうが!)


(は? こっちだって無理矢理押し込められたんだ! まぁ……消滅せずには済んだけどね)


 ずっとこれだよ。どのくらい気を失っていたのかは知らないけど、これじゃゆっくり気を失う事も出来ないよ。


(カオスも情けないね。こんな作られた存在も言い負かせられないなんてさ)


 ほんと、君にはガッカリだよ。

 魔道具の中でも役に立たなかったし……それでも、サタンには期待しているよ。僕の方が情けないからね。


(な……必ずお前を後悔させてやる)

(へぇ、君たち仲間じゃないんだね……ならぼくと組まない?)


((ふざけるな!))僕とサタンがシンクロする。

(何だよ、仲良いじゃん……)


(良いわけあるか!)


(僕はそろそろ起きないと……サタン、後はよろしくね。期待してるよ)


 そう言って、僕の意識は表に覚醒した。

 

「やぁ、おはよう。アルテル」


 何でかな……君の方が大変だったのに、僕なんか心配してさ、正直、本当に情けない……未だに人になれない僕は、あれだけ自分を投げ打ってくれたケセドさんに触れられて気絶とか。

 こんな僕より、アメリアに寄り添ってやりなよ。


「アルテル様は、まだ眠っております」


 アンだね。わかるよ……怖いもん。

 そんなアンが腰を折り僕に謝罪と感謝を示した。


「本当に、本当に……あの時はごめんなさい。そして、アルテル様を救ってくださりありがとうございました」


 本気の心が伝わってくる……なぜだろ、急に怖さが和らいだ。理由はわからないが、これならいつもより普通に話せそうだ。


「謝らなくてもいいし、感謝なんて尚更だ……今回は運が良かっただけなんだ、次も同じ事が起きるとは思わないで……ね」


 アンは一度目を閉じて、考えたかと思うとそれ以降会話はなかった、静かな時間が過ぎたが心地よかった。

 そうだ、他のみんなはどうしたんだろう。


「ねぇ、アメリアやエルは?」


「ケセド様と一緒に村の人たちに今までの経緯などを説明しておられます」


 なるほど、という事はアメリアも無事だったのか……これで本当に安心したよ。

 それに、村の人たちも助かったみたいだね。


 あとはヒア……あぁ、頭の上の方で寝息が聞こえる、寝てたのか。


「僕はどのくらい寝てた?」


「安心してください、一日くらいですよ」


 あ、良かった。前は十日くらいだっけ? あの時はビックリしたのを覚えているよ。

 ただ、その事を伝えてくれたアンが言いづらそうにしている……何かあるのかな?


 僕はアンが話すまでどうしようか迷っているアンの顔芸を楽しんだ。


「……あの、言葉通りなのですが、全てひっくるめて一日しか立っておりません」


 全部ひっくるめて? それって……


「あの世界で過ごした時間はここでは少しも経過してなかったって事?」


 僕の問いに頷くアン……全く『魔道具』って不思議な物だね。僕を巻き込んでここまで出来るとか、自信をなくすよ……

(あーそれとさ、ツアドだっけ? どさくさに紛れて僕の中を覗こうとしないでね)


(おや、バレてしまいますか。私のお友達が、アンと貴方に嫉妬しており、起きているくせに寝ているふりをしていますので、軽い悪戯心です)


(わーわー! 言わないでください!)


(あれ? アルテルもいつの間にかこんな事まで出来るようになったの?)

(は、はい。全てツアドのせい……いえ、おかげです)


(そっか、でも本当に良かった……不甲斐ないばかりに辛い思いさせてごめんね)


(へ? そんな事全く思ってませんよ……こ、この話はおしまい! みんなが無事なのですからそれで良いではないですか)


(そうだね……)

 僕の上に覆い被さっているアルテルの頭に手を乗せ改めて挨拶した。


「おはよう。アルテル」


 起き上がったアルテルの顔は真っ赤だったが、元気そうでよかった。


「お、おはようございます」


 それを見た。アンも後ろから挨拶する。


「アルテル様。おはようございます」


 アルテルも振り返りアンに言葉を返した。

 さて、軽くなったし僕も起きよう……と思ったがやっぱりだめだ。何故かアンは今のところ大丈夫になったけど、外は村人でいっぱいだ。


 ……近くに五人もいるよ、今更だけど、ここってエルの故郷なのかな? 


「改めて、命を救っていただきありがとう……ございます」


 アルテルの笑顔が言葉を言い終わる前に曇り出す。今度はなんだろう……色々あり過ぎて処理しきれない。


「どうしたのさ。アンにも言ったけどたまたま、運が良かっただけだよ」


「いえ、せっかくカイル様から頂いたペンダントが壊れてしまいました」


 小さいオッサンも一度だけって言ってたしね。一度だろうと破格の性能だったと思う、こんな事になるならちゃんと調べておけばよかったよ。


「それは、仕方ないよ。命を守ってくれたんだよ? 僕もあげた甲斐があったし」


 未だ首にかかった鎖だけになったネックレスを握りしめて何かを閃いたように話し始めた。


「決めました!」


 まだ、何が決まったのかも分からないのに止めに入るアン。


「やめてください!」


「ま、まだ何も……」


「カイル様から頂いた精霊石をつけるつもりですね。そんな事をしたらどうなるか想像がつくでしょう! 第一加工が——」


 仲がいいね。微笑ましいよ、未だにコミュ症の症状が出ないのはなんでなんだろう? こうやって二人のやりとりを見れるから良かったけど。


 うーん。分からん……唯一変わる前と今の違いは魔道具? そこに僕の症状を治す手がかりでもあるのかな……


 そんな事を考えていると、外が騒がしくなってきたので布団を被る。


ガチャ


「あのー、ある程度終わりました。師匠は起きていますか?」


 静かに、入ってくるアメリアの声。さらに後ろから「生きてる?」と、この状況でよく言えたなと思える台詞をぶち込むエル。

 ケセドさんは、いないみたいだ。良かったこれなら大丈夫。

 僕は布団から顔を出して挨拶した。


「みんな、おはよう! 心配かけたね」


 顔を見て、半身を起こすと当たり前のようにアメリアが飛び込んできた。


「良かったです……もう、ずっと会ってない気がします……うぅぅ」


 感情が豊かだね。やっぱり最後の方は記憶が無かったのか……それなら尚のこと殺らせるべきではなかったから、良かったよ。


「因みに、記憶はどこまで?」


 僕の問いに全員が息を呑む……おかしな事聞いたのかな? それだと僕もエルと変わらないのか……

 僕に向き直り、思い出し始めるアメリア。


「えっと……ヒアちゃんが鳥になった所は覚えていますが、そこからは夢を見ていたような……微かに魔王城も見た気がしますが、そこからは何も。気がついたら布団の上でした」


 後半はほぼアメリアの意思ではなかったのかな? 恐ろしい……あ、そうだ。


「ここで、皆さんに話しておこうと思います」


 全員が静まり返る。いや、そこまで……大した事はあるのかな?

 左目から涙みたいに雫を出して手のひらに乗せて前に出す。


「こ、これは?」


 僕から離れ一歩引いたアメリアが呟く。


「元凶のイスカ——」


 場が凍りついた。実際はっきりと知っているのはエルとアルテルくらいか? ケセドさんは今いないし。他のみんなは『元凶』に反応してるね。


「なぜ、受信機がここに?」


 アルテル……ムカつくのはわかるがそれじゃ伝わらない。今の言葉で若干二人の想像が人物じゃなくなっちゃってるよ。


「古参のエルフ」


 エルが捕捉してくれるが、地上に戻ったので言葉数も戻ってしまい捕捉しそびれていると思います。


「古参のエルフの受信機が元凶?」


 アメリアが纏めるが……まぁ、そうなるよね……わかるよ!


ガチャ


 突然ケセドさんが入って来たので、咄嗟に布団に篭った為、手のひらに乗っていた玉が下に転がった。


コンッ、コンコン、コロコロ……


「私の昔の友人だった子よ……あら、カイルくんには嫌われちゃったのかな? 盗み聞きしていた訳ではないのよ、たまたま聞こえちゃって」


 僕の行動を見てガッカリさせてしまったが、決してそんな事は……ないんですけどね。

 僕が何も言わないのでケセドさんが落ちた玉を拾い話を続けた。


「この小さい玉がイスカなの?」


 これは、僕しか答えられないね……仕方ない、助けてもらったのに、僕の態度はありえないけど、ほんとごめん。


「そ、そうだよ……もし、よかった、ら……好きにして」


 ケセドさんは何かを考えてから話し始めた。


「……そうね。本人ではないし、いらないわ。私自身はもう、怒りもないしね」


 へぇ……やっぱり大人だね、自爆を勧めた僕が言うのもなんだけど、僕が助けなかったらどうなっていたか分からないのに。


 そう言って、布団の上に玉を置き、カイルくんに嫌われているので外に出ているわ、と部屋を出て行った。


「嫌いなの?」


 ケセドさんが去った途端エルが聞いて来た。


「そんなわけないよ、ただ、苦手なだけ」


 得意な人の方が少ないけどね!

 さて、イスカ玉をみんなに委ねようか。

 僕はまた、半身を起こして玉を拾いみんなに見せる。


「みんなの好きにして良いよ。焼くもよし、茹でるもよし、投げるもよし、叩いても痛みがあるようにしてある」


 お仕置きした後は、消えてもらおう。要らないし。そんな僕の期待とは裏腹に全員微妙な感じで拒否した。


「そっか、ならこれは僕が数日預かるよ。それで何もなければ消すね」


 んじゃ、この後は……ハイエルフの墓所かな? でもみんな疲れているだろうし明日にした方がいいか。


「今日は一日だけ泊めさせてもらって、今度こそハイエルフの墓所に行ってみる?」


 また、僕の発言にアメリアとエルが微妙な表情を見せる。なんでだろう……


「あの、師匠……村のエルフの話だと今回の事件が広範囲に被害を出して、墓所が無事かどうか分からないと」


 そうなんだ……まぁ、もう気持ちもあっち行ったりこっち行ったりしてたし、今更かなとも思っていたしね。それよりも新しく思った事がある。


「あんまり、気乗りはしないんだけどさ、今回の事で魔道具の恐ろしさが分かったんだよね。それでさ、前にドワーフが魔道具と関わりがあるみたいな話をしたじゃん? その辺どうなの?」


 行きたくはないが、どこかでしっかり知っておかないと今後、同じような事が起きたら今回みたいに対処が遅れる……運で片付けちゃいけない問題だからね。

 エルが念話にしてと促して来たので繋ぐとエルが一気に話し始めた。


(ドワーフは魔道具を作る事の出来る魔道技師が多い、一時期技術を独占していた時代もあるくらい。だけど、今は戦火によって多くの技術が流出した)


 また、きな臭い話ですね……アルテルも話に入って来た。


(はい、私の国にもそのおかげと言っては悪いのですが、その後、技術が入り躍進しました)


(あれ……それならドワーフの国に行かなくてもアルテルの国で魔道具を調べさせて貰えばいいね!)


(すいません。我が国はすでに時代が変わり用途が生活面や安全面に変わってしまいまして——)


 なるほど、アルテルやアメリアを見ているとわかるよ。


(ドワーフの国はとても技術革命好き、しかも今でも昔の凄い魔道具が眠ると言われているからカイルの要望はきっと叶う。だけど、私は行きたくない!)


 僕も行きたくない! でも、もうあんな何も出来ない状況には陥りたくないんだよね……

 その想いを伝えたら、エルもそれは私も同じと言って納得してくれた。


「なら、次はドワーフの国かな? 一応、期待は出来ないけどせっかく来たんだし墓所にも寄ってみよう」


 みんなが頷くので、後ろで見ていたアンが鋭い声で釘を刺した。


「アルテル様はダメです」


 そりゃそうだ。今回の事もあったし、今回は僕も同意する。お城に帰って下さい。

 納得いかないアルテルとアンが仲のいい喧嘩を始めた。


「じゃ、今後の事は決まったね。みんなも休んでよ、疲れてるでしょ?」


「あの、それで村の人が歓迎の宴を開きたいと」


 アメリアが言うが……僕はいいです、参加できないし。


「みんなで楽しんできて、僕はいいや」


 なら私もと、全員が拒否した。僕のせいじゃないよね?


「ご飯食べて来なよ、お腹空いてないの?」


 と、ご飯の話をした途端、今まで寝ていたヒアが急に起き出した。


「ふげ……ご、ご飯! どこ? ……あ、カイル様! 良かったーー」


ベチッ

 僕を見つけるとすぐに顔に張り付いてくるヒア、毎度の事だけど、久しぶりな気もするので果物を転がした。


コロコロ


「ご飯! わーい、ガブッ」


 ムシャムシャしている姿を見ていると懐かしくなるね。こうやってみんなで色々と……あれ? そういえば……


「アメリア、ティアは?」


 何度目だ? 僕の質問でまた沈み、今度は塞ぎ込む……


「し、師匠……わたしが目を覚ましてからティアが反応しないんです」


 突然のアメリアの告白に、新たな問題が浮き彫りになり、まだ全てが解決して無かったことに気付かされる事となった。


 すぐにティアを受け取って調べてみたが、しっかりと名前はある。他も特におかしな所はない……なら何だ? 可能性があるとすれば魔道具か。やっぱり次の目的地はドワーフの国なのかな?


 いや、まてよ……ティアは僕を神と言った。その時出て来た名前は、たぶんこの世界の管理者。  

 なら先ずは先に僕たちに近い存在かもしれないハイエルフが祀られている墓所に寄ってみるのは確定かな。


 無駄でも情報は多い方がいい。

 結局目的地は変わらずじまいだけど……


 もう一度、みんなの方を見ると。不安そうな顔でアメリアが僕をみる横でエルがティアをツンツンしていた。

 後ろでアルテルとアンの喧嘩は婚姻の話にまで発展している……謎すぎる。


 ヒアはまだ食事中。手に持ったティアを見る……いつもならこんな時に「妾を忘れていたじゃろ」とか言ってティアが入ってきて文句を言ってたね。


 ……はぁ、今の僕じゃどれだけ解析しても戻す手がかりは何にもわからないが、この剣の中に存在自体はある。

 『クレメンティア』と名前が出ているのが証拠だ。


 ティア少し我慢してて、必ず戻してあげるから——





5章いかがでしたか?

なかなか、RPGでの戦闘シーンをストーリーに組み込むのは難しかったですが、楽しんでもらえたら嬉しく思います。


6章、ドワーフの国もどうなるのかお楽しみに。

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