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乙女ゲーのモブキャラに転生したら王子にプロポーズされました  作者: いち
第2部 ノエル編 最終章 ゲームの終わり
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魔力過多

ジュリア視点です

「え?ノエルが魔力過多症に?」



定期的にノエルの診察をしてくれているマリアンヌ様からその報告を受けたのは、ノエルが妊娠して7ヶ月に入った頃。



「でも、なんで急に?確かにノエルは魔力が高い方ではあるけれど、魔力過多症になるほどではないでしょう?」



今日のお茶会は恒例の秘密のお茶会ですが、内容はノエルと赤ちゃんのことです。

降嫁したとはいえ、元王女の体調に問題があるなど、あまり知られていい話ではありません。



「『サーチ』で探ってみたのですが、どうやらお腹の子の魔力が高いらしく、それを母体が支えきれないようなのです」



『サーチ』とは、マリアンヌ様が数ヶ月前に完成させた新しい魔法で、前世で言うなら、レントゲンとMRIとCTとエコーを合わせたような、体の内部を診ることが出来る凄い魔法です。

とはいえ、視えるのはマリアンヌ様だけですけれど。


話が逸れましたわね。

とにかく、愛娘のノエルは赤ちゃんの魔力に耐え切れずにいる、と。



「何か、魔力過多症を抑える方法はないの?」


「通常であれば、魔力を抑える薬を飲ませたり、日々多めに魔力を発散することで抑えるのですが、お腹の子への影響を考えると、薬は危険が伴いますし、大きなお腹を抱えて大きな魔力の発散も危ないですね」



何か、何か私達にできることはないのでしょうか。


しばらく部屋の中はシンとしていましたが、やがてお義母様がポンと手を打ちました。



「以前、クロエ嬢がノエルに送り付けてきたブローチがあったでしょう?体力を根こそぎ奪う魔法のかけられた」


「ええ……でもあれは魔力ではなく体力ですよね?」


「ええ。でも、あのブローチにかけられた魔法を細かく分析して、魔力を程よく吸収する物に変化させましょう!」


魔法陣が描かれたものなら書き直すだけですが、普通に魔法を組み込まれただけの物を分析して作り変えるのは、かなり高度なテクニックと集中力が求められます。


でも。



「そうしましょう。ノエルの為にもできるだけ早く作らなければなりませんね」


「ジュリアちゃんは私より魔法が得意だから、ジュリアちゃんは魔法具作りに専念して。公務は私が代わります。マリアンヌちゃんも魔導具作りに協力してくれる?」


「ええ、もちろん」


「あとは、マークにも手伝ってもらいましょう。あまり知られていないけど、マークは魔力が高く、扱いもとても上手いし、新しい魔法を作るのも上手いのよ」



お義父様。

結構凄い方だったんですね。

現役時代は賢王として尊敬していましたけれど、魔法までお得意だとは知りませんでしたわ。

特に隠居されてから自由気ままにされていたので、ちょっと尊敬の念が薄れていました。

ごめんなさい、お義父様。



「では、出来るまでの間はノエルちゃんにはベッドで安静にしつつ、初級魔法を常時使用してもらって、何とか凌ぎましょう。

でも、あまり時間はありませんわ。魔力を使い続けることは、体力を奪うことにもつながりますから。そうなると、母体が危なくなります」



マリアンヌ様の言葉に、私は緊張で背中を汗が伝いました。




それからはほぼ徹夜で、魔導具作りに取り組みました。

ブローチにかけられていた魔法の分析は割と早く終わったのですが、問題は魔力を吸収するというメインとなる魔法の構築。

魔力を吸収すること自体はできるのですが、ほんの少しの魔力ですぐに壊れてしまうのです。

お義父様の才能をもってしても、魔力を吸収できるのは3時間ほど。

吸収した魔力を外部に発散させられればいいのですが、それが中々難しいのです。



「やはり、魔導具にため込める量が少ないのが困りものですわね」


「外部に発散できれば………ん?」



お義父様、何か思いついたようです。



「どうされましたの?」


「いや、妊婦が魔力を大量に発散するのは体力も奪われるから危ないんであって、本来なら魔力過多症の者は定期的に発散しているんだよな?」


「ええ」


「それだ!何もノエルだけに背負わせる必要はなかったんだ。

魔導具で吸収した魔力を、他の人間が身につけて発散すればいいんじゃないか?」



そうか!

他の誰かを媒体にして魔導具から、吸収した魔力を発散すれば、誰にも負担がかからずに済むはず。



「ただ、発散する人間に吸収した魔力が合わなければ、発散する人間もただでは済まないが……」


「ならば私にやらせて下さい」



突然かけられた声に驚いて振り向くと、アインくんが真剣な顔で立っていました。



「申し訳ありません。何度か声をおかけしたのですがお返事がなかったもので、少し扉を開けてみたらちょうど魔導具の話が聞こえたのです」


「とても危ないことよ?アインくん。あなたに何かがあればノエルが傷つく。それもわかった上で名乗りを上げたの?」


「私は……ノエルとは魔法の相性もいいと信じています。

日々一緒に暮らしていれば、魔力の波長が重なりやすくなります。

あとは念の為、ノエルから直接私が魔力を吸い上げて、外に放出してみます。それでうまく行けば、問題ないでしょう」


「わかった。君の尽力に感謝する。ただし、魔力の相性が悪ければ君はこの役目を負えないと覚悟しておいてくれ」


「わかっています」


「そうと決まれば、早速予備分も含めていくつか作ってみよう」



お義父様の言葉を皮切りに、私達は魔導具の作成に取り掛かったのです。


結果として、ノエルの身体にこもった魔力をアインくんは難なく吸収、放出しました。


これなら魔導具いらないんじゃ?と思いがちですが、この方法ではアインくんは終始ノエルに張り付いていないといけません。

アインくんも忙しいのです。

それに今度は逆にアインくんの体力が削られてしまいます。


マリアンヌ様の話から3週間後、私達は魔導具を開発しました。

ブレスレットの形になっていて、パッと見は魔導具には見えません。


ノエルは赤ちゃんを諦めなくていいことにとても安心したようで、泣きながらお礼を言ってくれました。

アインくんも、一時期の張り詰めた雰囲気が消えて、肩から力が抜けたようです。


妊娠初期から王城に戻ってきているノエルの頭をそっと撫でて、私達はアインくんだけ残して部屋を出ました。

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