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乙女ゲーのモブキャラに転生したら王子にプロポーズされました  作者: いち
第2部 ノエル編 第五章 新しい生活
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実家に帰らせていただきます

ノエル視点です

それは、珍しくマリアンヌお義母様と晩餐をご一緒しているときのことでした。

マリアンヌお義母様は、普段エリクお義父様が王城にいる間はご自身も王城にいらっしゃいます。

そんなに離れたくないなんて、失礼かもしれませんが、お義母様可愛いですね。



「ノエルちゃん。あなた、出産してしばらく経つまで里帰りする?」


「里帰り?」



アイン様が持っていたフォークをカチャン、とお皿にぶつけました。



「初めての出産で不安も多いでしょうし、私は早朝から夜遅くまで王城にいるから、いつ陣痛が来ても安全だし、出産の時はジュリア様に付いていてほしいでしょう?」



そう言われて考えます。

確かに、16歳、成人扱いとは言ってもまだ未熟と言ってもいい身体で初めての出産ですから、不安はあります。

妊娠してからは情緒不安定になるときもありますし。

出産の時にお母様にそばに付いていていただけるのはとても安心です。

何より、私の食事管理の為に、お義父様がわざわざ帰宅する手間も省けます。



「そうですね……でも」



そう、でも、なんです。

アイン様がそばにいないのは、それはそれでとても辛いし寂しいのです。


チラリとアイン様を見ると、微妙な表情。



「ノエルの好きにしていいんだよ?」


「あら、アイン。あなた他人事みたいに言っているけど、ノエルちゃんが里帰りするなら、あなたも一緒に王城で暮らすのよ?」


「えっ?そうなんですか?」



私もアイン様もびっくりです。



「当たり前じゃない。あなたはどうせ王城での仕事があるし、領地に関する仕事も王城で済ませてしまえばいいわ。

妊娠初期の妊婦を夫と引き剥がしたら、それこそ余計に不安になるでしょう?」



さすがお義母様です。

でも、一度は嫁に出た身。

今では一貴族の妻に過ぎない私が王城に戻っても良いものなのでしょうか。



「妊娠期間中から出産して少しするまで実家に帰られる夫人は割と多いのよ?

あなたはたまたま実家が王城だというだけ。

それに、あなたの顔を見ればノア陛下も大喜びするでしょうし、仕事も捗るかもしれません」


「仕事が捗る?」


「あなたの妊娠が分かって以来、もしもあなたに何かあってはと、ご公務に身が入らないようなのよ」



お父様……

心配はとてもありがたいですけれど、国王がそんな様子で良いのでしょうか。

私の提案した父親の育児休暇施策についても、お母様と宰相で取りまとめて、まさに今議会にかけられているというのに。



「エドワード殿下もアルフォンス殿下もあなたに会いたがっているし、女性の身体が妊娠してどのように変わっていくのかを知るいい機会ですわ」



そう言えば、アルフォンスにもエドワードお兄様にもめっきりお会いしていません。


私がお母様のお茶会に呼ばれて登城する時間帯は、お二人とも学園で勉強中ですし、エドワードお兄様は正式に立太子して、公務でお忙しそうです。

アルも、勉強に忙しいみたいで、お二人が城内にいる時も、なかなか声をかけづらいのです。


でも、里帰りすれば、お話する機会が増えるかもしれません。



「私、実家に帰らせていただきますわ!」



嬉しくてハッキリと宣言すると、マリアンヌお義母様は肩を震わせて笑いだし、アイン様は苦笑していらっしゃいます。

私、何かおかしたことを言いましたかしら。



「ノエルちゃん。そのセリフは、夫婦喧嘩して妻が怒って実家に帰るときに言うセリフよ?

言葉だけ聞くと、まるでアインと喧嘩しているみたいだから、その言い方はやめましょうか」



お義母様に言われて、私は真っ赤になりました。

少し考えてから、言い直します。



「アイン様。出産後落ち着くまで、私と一緒に実家に参りませんか?」


「もちろん、喜んで」



アイン様は嬉しそうに笑いました。

王城の元使用人仲間にも会えますし、アイン様にとってもきっと楽しい毎日になるに違いありません。



「では、今夜のうちにでも紙鷹でお母様にお知らせしますね」


「ええ。きっと喜んでくれるわ」


「お義母様、お気遣いいただき、ありがとうございます」



お義母様の優しい気遣いにお礼を言うと、あっさり言われました。



「私もエリクもあなた達に会える時間が増えるから一石二鳥?三鳥くらいなのよ」



お義母様の言葉に、私とアイン様は苦笑しました。

でも本当はわかっているんです。

口ではああおっしゃいましたが、1番は私を落ち着いた状況に置くために配慮してくださったのだということが。


マリアンヌお義母様、本当に大好きです。


その晩、私が紙鷹で手紙を飛ばすと、30分もしないうちに紙鷹が届きました。


内容は、私が里帰りするのがとても嬉しいということ。

妊娠中も出産も産後も力になってくださるということ。

お父様が自室でスキップしているのを目撃してドン引きしたことが書かれていました。


お父様が……国王が、スキップ……



私が遠い目をしていることに気がついたアイン様が、私に手紙を読んでいいか尋ねて、手紙を読み始めます。


途中でピキリ、と固まって、なんとも言えない表情をなさいました。


ええ、その反応は正しいと思いますわ。


私とアイン様はしばらく遠くを見つめて、ため息をつきました。



「良かったね、ノエル。皆様喜んで下さって」


「ええ、本当に」



その時、また紙鷹が届きました。

小鳥の姿ではないので、お母様からではありませんね。


差出人を確認するとお祖母様でした。


手紙には、私達の滞在中は、静かな自分たちの離れで過ごしてほしいということ。

今からとても楽しみだということ。

それから………お祖父様が一人寝室でスキップしている姿を見てドン引きした事が書いてありました。


何でしょう、このデジャヴ。


さすが親子、とでも言うべきでしょうか。

と言うことは、お兄様もアルもそうなる可能性があるという事ですね。


私の脳裏に4人仲良く手を繋いでスキップしている姿が浮かび、慌てて頭を振って変な妄想を振り払いました。



里帰り当日。

王城まではさほど遠くないので、馬車で行くつもりだったのですが、アイン様は許してくださらず、結局私とアイン様が転移魔法で王城へ先に来て、荷物を積んだ馬車があとから到着することになりました。


私達の暮らす部屋をどこにするかで、お父様とお祖父様が揉めて、ジャンケンで決めることになりました。

勝ったのはお父様。


私は、結婚前に使っていた部屋でアイン様と暮らすことになりました。



「なんだかとても、懐かしいな」


「ええ。今でもアイン様の執事服姿が頭に浮かびますわ」


「ここにいる間はノエルの専属執事になろうか?」



冗談めかして言ったアイン様に、私はクスクスと笑いました。



「それもいいですけれど、執事は使用人棟での寝泊まりですわよ?」


「それはだめだな。お腹の子に毎日話しかけないといけないし、ノエルの温もりがないと、私はもう眠れないからね」



今度は二人でクスクス笑います。

本当に、私は幸せで、恵まれていると実感しました。



それからは毎日、お父様とお母様、マリアンヌお義母様とエリクお義父様、それにお祖母様とお祖父様が訪ねてきてくださいます。


私が生まれたときの話や、出産時にお父様がいかに役に立たなかったのか、命名権はくじ引きで勝った人が得るので、アイン様だけに決めさせることはない、とかそんなお話をします。


ちなみに、私の名前はお祖母様が付けてくださいました。

素敵な物語のヒロインのお名前から取ってくださったのだとか。

アルの名付け親はエドワードお兄様。

こちらは、当時エドワードお兄様が大好きだった物語の王子様のお名前だとか。


こうして考えてみると、名付け一つとっても、そこに乗せられた想いがあり、生まれた子供への初めてのプレゼントになるのですのね。

くじ引きは私も参加できるので、しっかり考えたいと思います。


でもお腹のこの子が生まれるのはまだ当分先。

今は、お腹の子の為に、ゆったりした気分で、栄養をしっかり取って元気な赤ちゃんを生むことに専念しましましょう。


私は少しだけ目立ってきたお腹をそっと撫でました。



「みんながあなたの誕生を待っているわ。怖がらずに、元気に生まれてきてね?」



無理なのはわかっていますが、自分のお腹にキスをしたくなりました。


アイン様が帰ってきたら、キスをしてもらいましょう。


そんなことを考えているうちに、私はうつらうつらし始めて、やがて寝てしまいました。


様子を見に来てくれたメリーがそっと膝掛けをかけてくれたことも知らずに。

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