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乙女ゲーのモブキャラに転生したら王子にプロポーズされました  作者: いち
第2部 ノエル編 第五章 新しい生活
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夏の離宮とご褒美の約束

ノエル視点です

定期テストの後、お母様から急に「夏の離宮へ行ってらっしゃい」と言われて、今日からアイン様と夏の離宮へ1週間の旅行です。


お母様が紙鷹を飛ばしているとは言っても、離宮の使用人さん達も準備があるだろうから、と私とアイン様は昼少し前に出発しました。


今日はエリクお手製のお弁当付き。

お昼を少し回った頃に、ちょうどいい野原があったので、そこにラグを敷いてお弁当を広げます。



「アイン様、ご存知?私の両親は、お父様がお母様のお弁当を摘んだことがきっかけで仲良くなったの。お母様が花嫁教育の為にトリスへ来られる途中でも、お母様の実家のコック長のお弁当を食べたんですって。

私、食べることも好きですけれど、美味しいものを誰かと共有することも大好きですわ」



私はチキンのソテーを取って。アイン様の口元に運びます。


前にもこんなことがありましたわね。

あれは、初めてのデートの日。

でも今日は、あんなに恥ずかしい思いはしないつもりです。

今日は私が積極的にアイン様に食べさせて差し上げるのです。

フォークは渡しませんわよ?



「義父様のチキンのソテーは絶品ですね。ノエルも、」

「食べてみますわ」



フォークを奪われないうちにチキンのソテーを口に入れます。


ああ、とっても美味しいです。


次に私はミニトマトを持って、アイン様の口元に運びました。


ここまでは順調だったのです。

なのに。


アイン様は私の手をグイッと掴むとそのまま口の中へ入れました。

ヌルリ、とアイン様の舌が指先を這います。



「ひゃっ」



背筋がゾワッとして、変な声まで漏れてしまいました。

その隙にアイン様がフォークを奪い取ろうとしますが、それだけは死守します。



「つっ、次は何を食べます?」


「じゃあ、ポテトフライを」



クスッと笑ってアイン様がいいました。

どうやら私が食べさせたがっていることに気がついたようです。



「はい、どうぞ」



アイン様の口元に持っていくと、素直に口を開けてパクンと食べました。



「うん、おいしい。おかわり」


「はい」



もう1つポテトフライをフォークに刺してアイン様の口元に……持っていくはずが、またしてもアイン様に手首をつかまれ、くるんと私の口元にポテトフライが。


ここで強情をはっても仕方ないので、あーんと口を開けて、ポテトフライを入れてもらいました。

ちょっと、いやかなり恥ずかしいです。

必死に咀嚼してチラリとアイン様を見ると、とても嬉しそうです。



「ノエル。自分で食べるのは諦めて?」


「………分かりましたわ」



それからはお互い交互に食べさせあって、お弁当を完食しました。


さて、再び馬車に乗って夏の離宮を目指します。


ですが、馬車に揺られているうちに、お腹も膨れて段々眠くなってきました。

アイン様に気付かれないように頑張って起きていたのですが、睡魔には勝てず、気が付いたら夢の中でした。


くうくうと眠る私をアイン様が優しく見つめていたことなど、私は知りませんでした。




「ノエル、着いたよ」



アイン様の言葉にハッと目が覚めます。


どうしましょう、頑張っていたはずが眠ってしまっていたようです。

イビキとか、寝言とか、ヨダレとか大丈夫でしょうか。



「ノエルは夢の中で、どんな服を私に着せていたんだい?」



ぐっ!

寝言を言っていたようです。



「ノエル?」


「その……」



言えません!

夢の中でアイン様の婚礼衣装を見ていたことなど!



「………新しい盛装ですわ」



「ふっ。そう」



アイン様はちょっと笑うと、開けられた馬車のドアから外に出て、私が降りるのをエスコートして下さいました。


花嫁修業の間はいつもアイン様が王城まで送ってくださるので、アイン様のエスコートで降りることにもだいぶ慣れました。

アイン様が専属執事だった頃にも、学園の帰りにはいつもドアを開けて私が降りるのをエスコートしてくれていたのですが、いざ交際を始めてみたら、なんだか急に恥ずかしくなって、なかなか慣れなかったのです。


以前の癖なのか、ご自分で荷物を持とうとするのを、離宮の使用人の方が慌てて止めて荷物を受け取ります。



「だいぶ慣れたつもりだったけど、まだ貴族として扱われるのには慣れないな」


「でも、だいぶ貴族の子息らしくなりましたわ。執事として働いていた頃のアイン様も素敵でしたけれど」


「義母様の貴族教育は、なかなか厳しいからね」



そんな話をしながら、それぞれの寝室に案内されて、一旦、簡単に荷解きだけすると、私たちはリビングに行きました。

リビングには、既にお茶のセットとお菓子が用意されていましたが、使用人さんの姿はありません。

この時は、まだ偶然だと思っていたのですが、そろそろ夕食という時間になって、誰も呼びに来ないな、と思っていましたら、ドアの隙間にカードが置いてあることに気が付きました。

夕食の支度ができております、と。


これは、もしかしなくてもアレでしょうか。


お母様達が私を身籠った時に来た時のように、使用人さんは極力姿を見せず、私達二人きりにさせてくれているのでしょうか。


その、まだ私たちは婚約中ですし、そのお気遣いは早すぎると思うのですが。


もしかして、お母様からの指示なのでしょうか。

充分にありえます。

お母様、気が早いですわ。

こんなことを知ったらきっとお父様が泣いてしまいますわ。



「ノエル。使用人の方が姿を見せないのって……」



どうやらアイン様も新婚旅行で二人きりになれることをご存知のようです。



「その……気が早いですわよね」


「そうだね。でも、私は嬉しいけれど。人目を気にせずノエルを可愛がる事ができるからね」



アイン様!

これ以上甘やかされたら私は鼻血の出し過ぎで倒れます!



とりあえず、私たちは夕食を食べに行くことにしました。

………何故か私はアイン様の膝の上に座っています。



「うん。ここの料理も美味しいね。ほら、ノエルも食べてご覧?」



そう言って、私の口元にお料理が運ばれます。



「あの、アイン様。自分で座って食べられますわ」


「駄目だよ。可愛がるって言っただろう?」



やっぱり、私のお願いは聞き届けてもらえませんでした。


諦めて素直に口を開けてお料理をいただきます。



「かわいいね、ノエル。食べてる姿もすごく可愛い」



アイン様はとても満足そうです。

その後も私と自分の口に交互にお料理を運んで、最後のデザートになりました。



「私はそんなに甘い物を食べないから、これは全部ノエルにあげる」



今日のデザートはイチゴのスフレです。



「おいしい?」


「はい。アイン様も食べますか?」


「味見だけしようかな」



そう言って、私の唇をペロリと舐めました。



「うん。甘くて美味しいね」



どうしましょう、アイン様の方が数倍甘いです。


とりあえずこの状態を打破すべく、私は急いでデザートを完食しました。


テーブルに置いてあったメッセージカードに、お料理がとても美味しかったこと。特にイチゴのスフレが甘いのにさっぱりしていて食べやすかったことを記入しました。



「書き終わった?じゃ、リビングに行こうか」



そう言うと、アイン様はヒョイと私を横抱きにして、歩き出しました。



「アイン様!その、重いですから下ろしてください」


「ノエルは軽いから大丈夫。それよりちゃんと捕まっていないと落ちてしまうよ?」



万が一落ちて怪我をしたら大変です。

私はアイン様の首に手を回して、おそらく赤くなっているだろう顔を隠すために首元に顔を埋めました。



「ノエルは無自覚だからなぁ」



ぽそりとアイン様が呟きましたが、いまいちなんのことか分かりません。



リビングに着くと、アイン様はやっと私を下ろしてくれました。



「ノエル。私と踊っていただけますか?」



夏の離宮で踊るのはこれで二度目。

一度目は、私を慰めるために一緒に踊ってくれましたね。

今となっては懐かしい思い出です。



「ええ、喜んで」


「今だけ、執事に戻りましょうか。懐かしいだろう?」


「そうね。そんな余興も面白いかもしれませんわ」


「では、ノエル様。お手を」



私の手を取ってダンスの基本姿勢をとったアイン様は、低い声で鼻歌を歌い始めました。

ゆっくりと踊り始めましたが、時折アイン様の声が掠れます。



「アイン、風邪でも引いたの?」


「いえ?ああ、声ですか?声変わりして以来、高音域で時折声が掠れるんです。ご心配いただき、ありがとうございます」



アインは、あの頃に比べるととても上手になっていて、とてもさり気なく私をリードしてくれます。



「上達したのね、アイン」


「ええ。ノエル様に恥をかかせるわけには参りませんから」


「勉強も、とても頑張っていたわよね」


「学年首席だったノエル様に相応しいと思われたいですからね」



アインがそんなことを考えてくれていたなんて。



「嬉しいわ、アイン。でも、無理はしないでね?」


「かしこまりました、ノエル様」


「そうね。もし、テストの順位が上位10名の中に入っていたら、何かプレゼントをあげるわ」


「プレゼント?」


「ええ。なんでもいいわよ?」


「ありがとうございます。いい結果だと良いのですが」



あれだけ努力していたので、きっと上位10名の中には入るでしょう。

今からプレゼントの候補を予想しておかないといけませんわね。



「そろそろ暗くなってまいりましたし、温泉に入って今日はもう寝ましょうか」


「そうね。じゃあ、執事ごっこもこれでおしまい」


「ノエル、先に温泉に入っておいで」


「私は後でもいいのですけど」


「レディファーストだよ。それとも、一緒に入る?」


「ななな、何を!」


「冗談だよ。さ、早く入っておいで」



アイン様に促されるまま、私は自室の荷物の中から夜着を出して温泉に向かいました。


前に来たときは、友人の皆さんで入った温泉。

クロエちゃんは、大丈夫でしょうか。

アイン様に親しげに話しかけているのを見ていたときは、違う意味で心配でしたが、今はクロエちゃんの体調がとても心配です。


充分に温まってから温泉を出ると、私はアイン様に声をかけに行きました。


アイン様は顔を赤くして一瞬目を逸らし、そのまま準備をして温泉へ行ってしまいました。


私、どこかおかしなところでもあったのでしょうか。

私の夜着など、アイン様は見慣れているはずですし、アイン様が顔を赤くした理由がよくわかりません。


タオルで髪の毛の水分を取って、私は夜着の上にストールを纏って、リビングのドアを開けてアイン様が出てくるのを待ちました。


しばらくして出てきたアイン様は、私がリビングにいるのを見て、慌てて寄ってきました。



「まだ寝ていなかったの?髪も、濡れたままだと湯冷めしてしまうよ?」



そう言って、魔法で温風を出して私の髪を乾かしてくれました。



「眠れないの?」


「いいえ。アイン様にご挨拶をしてから寝ようと思いまして」



アイン様は一瞬固まると、次の瞬間には私を抱きしめていました。

抱きしめる力が強すぎて、少し苦しいです。



「ノエル。そんなに可愛いことを言って、私の忍耐を試しているの?」



え?と見上げたアイン様の顔が近づいて来て、そっと唇が重ねられました。

唇の間からアイン様の舌が入ってきて、どうしたらいいのか戸惑います。


そんな私をリードするように舌を絡めて、そっと唇が離れました。


既に私はクラクラです。

アイン様はそんな私をまた抱き上げて、私のベッドルームに入ると、そっとベッドに寝かせてくれました。



「おやすみ。ノエル」


「おやすみなさい、アイン様」


「私の寝室は隣の部屋だから、何かあったらいつでも訪ねてきていいからね」



アイン様は私の額にキスをして、部屋を出ていきました。


はぁ。

今日は本当に甘やかされた一日でしたわ。

残り6日、私の心臓はもつのでしょうか。

少し心配です。

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