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乙女ゲーのモブキャラに転生したら王子にプロポーズされました  作者: いち
第2部 ノエル編 第四章 ヒロインのジンクス
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アルフォンスの限界

ジュリア視点です

いつものように私宛の手紙をチェックしていると、その中にアルからの手紙が混ざっていました。


白百合の塔には私の「影」をつけてあり、定期的に報告を送ってくれるのですが、アル本人からの手紙は初めてです。



『親愛なるお母様


ここ、白百合の塔でクロエと暮らし始めて数カ月が経ちました。

クロエは、アインへの想いが薄らぐどころか、日に日に想いは強くなり、最近では意味不明のことまで言い始めました。

私は、クロエがアインを好きでも、自分のそばに置いておければそれでいいと思っていました。

大切な人のそばにいたかったからです。

でも、クロエは私から話しかけられる事も、触れられることも嫌がります。

それは仕方ないと思っていたのですが、近頃のクロエは異様です。

自分はヒロインなのだから、アインに好かれるはずなのにお姉様に邪魔をされた、とか、私とお姉様が手を組んでアインから遠ざけたのだ、とか、アインからの手紙を私が握りつぶしているのだとか、被害妄想だけでなく、何か勘違いをしているようなのです。

自分が罪を犯した意識もありません。

お姉様は悪役なのだから、自分に殺されて当然なのだと当たり前のように言います。

私は最近、クロエの言っている言葉の意味が分からなくなってきました。

初めて出会った頃は、もっと優しく、繊細な女性だったのに、塔まで食事を運んでくれる使用人を殴ったりもします。殴って、その隙に脱走しようとするのです。

どこから手に入れたのか、眠り薬を私の食事に仕込んだこともあります。

騎士たちも、何度も脱走を計るクロエに辟易しており、疲れているようです。

正直な話、私も疲れてしまいました。

クロエのことを愛しているはずなのに、そばにいるのが辛いのです。

いえ、もしかしたらもう、クロエのことは愛していないのかもしれません。


一度、王城へ戻ってしっかり考えたいと思います。

今週末に帰りますので、よろしくお願いします』



クロエちゃんが脱走を計ったり、睡眠薬を仕込んだりしていることは、「影」からの報告で知ってはいました。

アルがどれだけ話しかけても、返事をせずにブツブツと訳のわからない事を口走っている事も。


ゲームの世界と現実世界を混同してしまったのでしょう。

気をつけるべきは、アリアちゃんよりクロエちゃんだったのかも知れません。

でもまさか、アインくんに会ってから豹変するなんて。

これもゲーム補正なのでしょうか。


もしかしたら、クロエちゃんを一生白百合の塔に閉じ込めておくよりも、石化してしまった方が、クロエちゃんも楽になれるのかもしれません。


アルは……もうクロエちゃんから離した方がいいでしょう。

このままではアルが壊れてしまいます。



私が思いを巡らせていると、ノエルがやってきました。

今日の花嫁教育が終わった報告のようです。


私はアルが今週末に帰ってくることだけ伝えました。


そして週末。

帰ってきたアルは窶れて顔色も悪く、目の下のくまで、あまり眠れていないことがわかりました。


私の部屋でノア様とエドワードと4人で相談した結果、アルは王城へ戻ってくることになりました。

クロエちゃんのことはもう少し様子を見て、やはり狂気に取り憑かれているようなら、石化させることにしました。


オブライエン子爵にも、ノエルやその友人にも酷な事ですが、元のクロエちゃんに戻れないのなら、1人白百合の塔で生涯を終えるよりはマシでしょう。

それに、万が一白百合の塔で自殺などされて、リリアンの時のように復活されたら、アインくんやノエルが危険です。


みんなで相談した結果、アルが帰還して1ヶ月だけ様子を見て、その結果で石化させるかどうかを決めることになりました。


アリアちゃんに連絡が行くかもしれないので、アリアちゃんには真実を手紙で知らせます。


オブライエン子爵にも、すでに勘当しているとはいえ仮にも娘だったので、最悪の場合、石化させることを伝えました。


晩餐の席ではみな、一様に憂鬱な顔をしていて、ノエルが戸惑っていましたので、アルが帰還する事になったことだけ教えました。

理由はほぼそのまま。

クロエちゃんが精神を病んで、アルには荷が重すぎるから、と。


ノエルは落ち込んでいましたが、夜になってアインくんに来てもらい、慰めてもらったようです。

アインくんは本当に良い子ですね。

せめて二人が幸せになるといいのですが、このまま何もなければ大丈夫でしょう。


そして1ヶ月後。

ノア様は白百合の塔についている騎士たちに、わざと塔から離れるように指示しました。


騎士がいないことが分かれば、クロエちゃんはまっすぐアインくんの所か、ノエルのいる所に来ようとするでしょう。


でも二人がいるのは国内。

どんな方法であれ、クロエちゃんが国内に入ろうとしたら、その時点で半永久的石化が決まっています。


騎士たちが塔から離れて少しして、拘束の指輪を通してクロエちゃんの考えが流れ込んできました。

やはり、ノエルの所を訪れて、自らの手で始末するつもりのようです。

国内に入ろうとしたら石化、と言ったことも忘れているようです。


私は国土防御結界に気を張り巡らせて、クロエちゃんが立ち入ろうとする気配を探りました。

白百合の塔から国境までは馬車なら1日。

徒歩なら5日といったところでしょうか。


公務をこなしながらも気を張り巡らせていると、クロエちゃんの気配を感じました。

その瞬間に、気配が消えたことも。



「マルコ」


「はい、ここに」



私はマルコに、中央広場へ行くことを告げて、馬車の用意をお願いしました。


マルコは公務の途中で、と少し嫌な顔をしましたが、すぐに準備をしてくれました。

お義母様も一緒に行ってくださるとの事でしたので、二人で馬車に乗って中央広場へ行きました。


馬車から降りるとすぐに、真新しい石像ができていました。

最近では、石化する人も減ったので、真新しい、しかも女性の石像はとても目立ちます。


せめて、石化の理由が人から敬われるようなものにしたかったのですが、台座にはハッキリと、ノエルの命を狙ったこと、白百合の塔から脱走した罪が刻まれていました。


中央広場は1番大きな広場で、王都の中心にあります。

きっといつかは、ノエルも真実を知ってしまうでしょう。

その時は、全力で慰めましょう。

でも今は、それよりもアルです。


アルはだいぶ肉体的にも精神的にも消耗しているようなので、少し静養が必要かもしれません。

それとも、家族の中に入れていたほうが気が紛れるでしょうか。

お義母様に相談した結果、このまま王城に留めおき、メンタルヘルスのプロに任せたほうがいいということになりました。


とはいえ、この世界のメンタルヘルスのプロは、カウンセリングや薬で治療するのではなく、記憶自体を消したり書き換えたりするのです。

あまり記憶は弄りたくありませんが、アルが幸せに生きていくことを願って、プロに任せることにしました。


エドワードやノエルのように、アルもいつか幸せな恋ができるといいのですが。


私はクロエちゃんの石像をそっと撫でると、その場を去りました。



王城に帰りノア様に、アルを専門家に任せたほうがいいのでは、と相談すると、ノア様は少し悩みましたが、賛成してくださいました。


早速アルを私の部屋へ呼びます。

アルは、帰ってきてからというもの、自分の部屋に篭りがちなのです。


ティレーズにお茶の用意をしてもらって、ティレーズが下がると私はアルに言いました。



「アル?あなた、心身ともにとても疲れているでしょう?

あんなに元気だったあなたが部屋から出ないのですもの。

相当疲れているのよ。

それでね、お父様やお祖母様とも相談したのだけど、心の傷や疲れを軽くしてくれる専門家に、あなたを診てもらおうと思うの。無理にとは言わないけれど、このままではあなたも辛いでしょう?」



アルは暗く沈んだ表情で床の一点を見つめていましたが、ボソッと答えました。



「お母様達がそれがいいと思うなら」



自分のことなのに、とても投げやりです。

前世で言うなら、鬱病のようになっているのかもしれません。



「わかったわ。では早速明日にでも専門家の方に登城してもらうわね。あなたの気持ちが軽くなるように願っているわ」


「ありがとうございます。では、私はこれで」



アルはお茶に口をつけることもなく私の部屋を去っていきました。

やはり、あの時アルがなんと言おうと、一緒に行かせるべきではなかったのです。

離れ離れにしても、アルが居場所を突き止めて追いかけるかもしれないと思い、一緒に行かせましたが、それは失敗でした。

親として落第です。

まだ11歳の子に、サイコさんと化した転生者の相手は無理だったのです。

よくよく考えれば分かるはずでした。

気の触れたリリアンの悩みを聞いていたイザークですら、狂気に引きずり込まれたのです。

子供のアルが平気なはずがなかったのです。


私は頭を抱えて深く反省すると、気を取り直して、高名な専門家の方に手紙を書き紙鷹で飛ばしました。

1時間もしないうちに返事が来て、早速明日登城して貰えることになりました。

アルの詳しい状態や原因は手紙には書いていません。

いかに紙鷹を使っているとはいえ、万が一誰かにみられたら、王族の秘密が知られてしまうのです。


以前に、ノエルから王城の使用人から情報が漏れている可能性はないか、と言われたことがあり調べたところ、確かに雇い始めたばかりのメイド見習いが自分の親に王城でのことを話していたことが判明し、即刻解雇した経緯があります。

マリアにはとても謝られ、既にいる使用人には、相手が誰であろうと絶対に王城での出来事は話さないことを周知し、雇う使用人も厳選するようになりました。


王城での出来事は、どんな些細なことであっても外部に漏らされては困るのです。

明日来てくれる専門家の方はそういったことをきちんと理解してくださっている方なので、そこは心配しておりません。


問題は、紙など形に残るものを見られること。

なので、手紙の内容は、ただ明日登城してほしいということを書いたのみで、読んだあとは自動的に燃える魔法もかけておきました。


私にできることはそれくらい。

あとは、専門家の方にお任せするしかありません。


私は首を振って気持ちを切り替えると、執務を再開しました。

お待たせしました。

明日はクロエ視点出てきます。


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