全然知りませんでした
ノエル視点です
話数の順番を変えた為、多少時系列が前後しています
年齢設定も変えています
今日の分の花嫁教育を終えて、王城を歩いていたら、廊下でルディちゃんに出会いました。
「ルディちゃん。お久しぶり。今日はどうしてこちらへ?」
「マイク殿下とお茶会のお約束があって……」
頬を染めるルディちゃん。
可愛いです。
それより、マイク殿下にお茶に誘われたということは………
「あのパーティーの後、うまくいきましたの?」
「ええ。思いのほか話があって。今はまだ交際中ですけれど」
「良かったですわね。あとはシエルちゃんですわね」
「あら。ノエル様はまだご存じなかったのですね。シエル様もゼル団長と婚約いたしましたのよ」
「まぁ!全然知りませんでしたわ。お二人とも、どうして私に教えてくださいませんでしたの?」
お二人が上手くいったのは喜ばしいですけれど、学園を退学してからそう言った話題にはすっかり疎くなってしまいました。
なんだか少し寂しいです。
アイン様は学園に通ってらっしゃいますけど、流石に女性の恋の話題には参加しませんものね。
「だって、恥ずかしいじゃないですか。特にシエル様はご自身からアプローチされたそうですから、特に恥ずかしかったのではないでしょうか」
「そうですわね。確かに、自分からうまくいったと報告するのは恥ずかしいですわね」
「では、私はこれで。またお茶会をしましょうね」
「ええ、是非。近いうちにお招き致しますわ」
ルディちゃんは足取り軽く行ってしまわれました。
私も今日の花嫁教育が終わったことを報告しに、お母様のもとへ向かいます。
トントン、とノックをするとティレーズがドアを開けてくれました。
お母様は手元の書類を、真剣な顔で読んでいます。
「王妃様、ノエル様がいらっしゃいました」
お母様は書類を畳んで抽斗に仕舞うと、私に向かって微笑みました。
「おかえりなさい。今日はもう終わったの?」
「はい。正直、私が学ぶことはあまり多くないのですわ。領地運営については教えていただいていますけれど、学園入学前にお母様からも教えて頂いていたでしょう?だから、あまり教わることは多くなくて」
「そう。本来なら期間を短縮して挙式をしても構わないのだけど……ノア様が絶対に反対するでしょうね」
婚約披露パーティーで、半泣きだったお父様を思い出します。
確かに、あの様子だと期間の短縮は認めてくださらないでしょうね。
お母様はため息をついて笑うと、ふと真面目な顔になりました。
「そう言えば、今週末にアルが一時的に戻ってくるわよ」
「アルが?クロちゃんの容態は大丈夫なのでしょうか」
「………そのことも含めて、帰ってくるのでしょうね」
お母様は複雑な表情をされました。
アルにも、もうだいぶ会っていません。
可愛い弟ですから、会えるのが楽しみです。
クロちゃんの様子も聞けるかもしれませんし。
私はいそいそと自室に戻りました。
………………………………………………………………
そして週末。
王家の紋章が入った馬車に乗って、アルが一人で帰ってきました。
馬車から降りたアルを見て、私は思わず眉を顰めました。
「おかえりなさい、アル。あなた、随分やつれて顔色も悪いけれど、大丈夫なの?クロちゃんの病気が感染ったのかしら」
「ただ今戻りました。お姉様、病気が感染ったわけではないので、大丈夫です。それより、お母様は?」
「お母様のお部屋であなたの到着を待っているわ」
「分かりました。私は少しお母様と大事な話があるので、お姉様はしばらく部屋に来ないでください」
なんだか仲間外れな気分ですが、おそらく大切なお話なのでしょう。
私は頷いてアルを見送りました。
私は私でやらなければならないことがあります。
アイン様へのラブレター10枚です。
思いの丈を綴ることは苦ではありませんが、10枚というのはなかなか書けるものではありません。
お祖父様が昔お祖母様に送ったそうですけれど、お祖父様、頑張ったのですね。
同じことの繰り返しにならないように気をつけながら、手紙を書きすすめていきます。
ですが流石に10枚ともなると、語彙も尽きてきます。
私はメリーの買ってきてくれた恋愛小説をパラパラと開いて、使えそうな文章を探して、何とか8枚まで書き進められました。
「ノエル様、晩餐のお時間ですよ」
メリーに言われてハッと時計を見ると、知らない間に随分時間が経っていました。
「今日はアルがいるから、晩餐も楽しいものになるわね、きっと」
「そうですわね」
ウキウキと食堂へ向かいましたが、食堂は予想外にシンとしてました。
どうしたのでしょう。
「遅くなり、申し訳ありません」
「いや、ノエル。別に構わないよ」
エドワードお兄様が笑顔でいいます。
それ、本当ならお父様のセリフだと思うのですが。
「今日のお料理はアルの好きな物ばかりね」
「ええ、そうですね」
やっぱり、アルは元気がありません。
疑問が顔に出ていたのか、お父様が話してくださいました。
「ノエル。アルは、1週間後にここへ戻ってくることになったんだよ」
「また一時的に?」
「いや。クロエ嬢の看病をやめて、婚約も解消することになったんだ」
「えっ?」
アルはあんなにクロちゃんのことが好きでしたのに、看病を途中で投げ出して帰ってくるなんて。
「クロエ嬢はね、感染症の他にも少し精神を病んでしまったようでね。アルでは看病は難しくなってしまったんだ。
それに、精神を病んでしまっては、アルの婚約者にしておくわけにもいかないしね」
お父様の仰ることはもっともです。
精神を病んでしまったのなら、専門家に任せるべきですし、王族の婚約者のままでいるわけにもいきません。
「クロちゃんの様子は?」
「お姉様は、聞かないほうがいいと思う」
アルがこんなに窶れるくらいです。
きっと、相当重症なのでしょう。
アイン様と婚約してから、私は知らないことがとても増えた気がします。
忙しいからというより、情報源がなくなったからでしょう。
寂しい気もしますが、こればかりは仕方ありません。
「ノエル。クロエちゃんはかなり精神が参っていて、あまり現実も認識できていないみたいだから、お手紙は控えなくては駄目よ」
クロちゃんから一度もお手紙の返事が来たことがなかったので、数回送っただけで、お手紙を送るのは止めましたが、今後は何かあっても送らないほうが良さそうですね。
本当はルディちゃんやシエルちゃんの事を報せたかったのですが。
私は力なく頷くと、再びお料理に手を付けました。
せめて、友人の皆さんにはクロちゃんのことを知らせようと思います。
晩餐の後、私は何ともいいようのない寂しさに襲われて、ご迷惑とわかっていながら、アイン様に紙鷹を飛ばしました。
今すぐ会いたい、と。
ハンバード侯爵家は、王城からそれほど離れていません。
アイン様は本当にすぐ会いに来て下さいました。
「ノエル?何かあったの?」
「クロちゃんの病態が悪化して……来週末にアルが引き上げてくることが決まったのです」
「…………そう。クロエ嬢が」
アイン様は何かを考えるように口元に手をやりましたが、すぐに私に向かって微笑みました。
「クロエ嬢も病気が治ったら帰ってくるかもしれないし、今は無事を祈ろう?
それより、私へのプレゼントの進捗は?」
「う………あと少しですわ」
「すごく楽しみにしてるからね」
「あう………」
結構おまたせしているので、できるだけ早く仕上げないと。
この際、恥を忍んでお祖母様やお母様にも相談しましょう。
アイン様に髪を撫でてもらって、気持ちも落ち着いたところで、アイン様は帰ることになりました。
「最近、ノエルの教育の終わるのが早すぎて、家に帰っても会えないから寂しいよ」
「私もですわ。でも、用もないのに長居するわけにもいきませんもの」
「そうだね。明日は授業が早く終わるから、久しぶりにデートでもしようか」
「はい!じゃあ、マリアンヌ様にキッチンをお借りして何か軽くつまめる物を用意しておきますわ」
「ありがとう。普通の王妃様や王女様は自分で料理なんてしないと思うんだけど、トリスの王族の方は本当に親しみやすくていいね」
アイン様は私の額にキスをすると、そのまま帰っていきました。
明日のデートの約束が出来たので、私は重かった気分もなくなり、その夜はぐっすり眠りました。
登場人物の年齢を修正しました。
詳しくは「ノエル編登場人物のおさらい」で当時のノエルの年齢を記載しています。
※今後の展開などについて少し時間をおいて考え直したい為、
ストックしてある6/4分まで公開されたら一旦更新をストップ致します。




