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乙女ゲーのモブキャラに転生したら王子にプロポーズされました  作者: いち
第2部 ノエル編 第四章 ヒロインのジンクス
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リリーの提案

ジュリア視点です

 クロエちゃんからの「贈り物」によく似せたレプリカを作ると、私とお義母様はそれをアルに渡しました。



「これを、今回のお土産にするといいわ。クロエちゃんに似合いそうでしょう?」


「はい!是非クロエに付けてもらいます」


「それからね、クロエちゃんもそろそろホームシックになる頃だと思うから、2ヶ月したら一旦戻ってらっしゃいな。

折角だから、パーティーを開催する時にでも。

パーティーの詳しい日時はまた紙鷹で知らせるわ」


「はい。お母様」



まだあどけなさの残るアルを見ていたら、これから行う作戦に胸が痛みます。



お義母様からの提案はこういうものでした。


まず、ブローチをアルから渡して、正直に答えるか、誤魔化すか。

アルにとってこれは試練です。

クロエちゃんが正直に答えたのなら、どういう処置を取るのか。

誤魔化したなら、ちゃんと裏付けをとって事実を確認するのかどうか。


そして、クロエちゃんとアルが帰ってきた時のパーティーで、私たちはクロエちゃんを断罪します。

細かく言えば、トリスの学園にいたときの態度、それからアインくんへ何通も送ってきている手紙の公開。

ノエルに届けられたブローチについての公開。


クロエちゃんの手紙に、アルの精神が耐えられるか不安ですが、本人の精神力に賭けるしかありません。


オブライエン子爵は、おそらく勘当するでしょう。

仮にも王女の命を狙ったのです。

勘当でもしなければ、子爵家の常識を疑われます。


そして、アルがどうしてもクロエちゃんと別れたくないと言うのなら………おそらく離れたがらないでしょうが、その場合はジン共和国内の、元々キホーテ家の領地だった所へ行かせ、そこで監禁します。

キホーテ家のあった場所には、今は白百合の塔と呼ばれる白亜の塔が立っています。

見た目は普通ですが、魔力無効化魔法がかけられていて、そこに監禁されている限りはどんな小さな魔法も使えません。

クロエちゃんとアルには、白百合の塔へ入ってもらいます。

もちろん、拘束の指輪付きで。

犯罪者でもいいから一緒になりたいのなら、ジン共和国に二人で行ってもらうしかありません。


仮に、アルの恋が冷めたなら、クロエちゃんは拘束の指輪をつけた上で追放処分になります。


今のクロエちゃんはだいぶサイコさんなので、罪の意識もなくノエルを傷つけたりしそうです。

なので、クロエちゃんの追放後は、冷たいようですが、トリスへ入った瞬間。半永久的に中央広場で石化するようにします。


これが、今回の作戦です。

お義母様の提案は子供には厳しすぎると感じる方もいるかもしれませんが、第二王子の婚約者だと言うことと、婚約者を裏切ろうとしたこと、王女を害そうとした罪。

これらのことから、厳しくせざるを得ないのです。

王子の婚約者だからと甘い処分にしてしまえば、他の貴族や平民に示しが付きません。


アルが旅立つ日。

私とノア様は、何か少しでもおかしなことがあればすぐに王城に手紙を送るよう言い聞かせました。


アルは何も知らず、ニコニコとミモザへ帰っていきました。


アルから、一生恨まれる覚悟もできています。



それから2週間後。

アルから紙鷹が届きました。

いつの間にか、紙鷹を使えるようになっていたのですね。


手紙の内容は、クロエちゃんはブローチに魔法がかけられていると感じたので付けなかった、と。

アルはミモザの学園の魔法学の講師の方に協力してもらって調べたそうですが、なんの魔法もかけられていなかったそうです。

当たり前ですわよね、レプリカですもの。

ただ、ブローチを目にしたときのクロエちゃんの尋常じゃない怯え方が気になると書いてありました。

ホームシックで、少し精神が参っているのかもしれない、とも。


とりあえず、アルがクロエちゃんの言葉だけを鵜呑みにするおバカさんじゃなくてよかったです。


後は、パーティーでの断罪と、クロエちゃんへの懲罰のみです。


ちなみに、断罪と言っても参加者の皆さんの前で行うわけではありません。

ノエルを除いた私たち王族と、その婚約者、それに筆頭公爵家のフランソワ公爵とオブライエン子爵の間だけです。

フランソワ公爵は、言うなれば立会人ですわね。


私たちは最後の詰めに向けて、着々と準備を始めました。


アインくんには何をするのかある程度話していますが、ノエルには何も話していません。


話せば傷つけるでしょうし、でも黙っていても、アルとクロエちゃんが白百合の塔へいくとなれば不審がり、遊びに行きかねません。


なので、ノエルには、クロエちゃんは重い感染症を患っている為に、白百合の塔へ隔離すると話すつもりです。

アルはクロエちゃんから離れたがらない為に付き添いでついていくのだと。

信じてくれるといいのですけれど。


……………………………………………………


そしていよいよパーティーの日がやってきました。


アルとクロエちゃんもミモザから帰ってきます。


一旦家に帰って着飾ったクロエちゃんを、パーティーが始まる前に控え室に呼びます。

クロエちゃんはなんの罪の意識もないのか、ニコニコと私達のいる控え室に入ってきました。



「お久しぶりです。王妃様」


「ええ。久しぶりね。アルからは、少し精神が参っているようだと聞いていたけど、見た感じお元気そうね?」


「あ……え、ええ。一時的とはいえトリスに帰ってこれましたから」



どうやらようやく、私達の雰囲気がいつもと違うことに気がついたようです。



「あの、アイン様は?あと、ノエル様も」




ノエルはついでですか?

わかりやすいですね、クロエちゃん。



「二人はまだ支度中よ。会いたかった?」


「ええ。久しぶりですから。でも、この後のパーティーで会えますね」


「………クロエちゃん。あなた、なぜ自分がここに呼び出されたか、見当はついてる?」


「………いえ」


「本当に?アインくんの件、ブローチの件と言ってもわからない?」



クロエちゃんは真っ青になりました。



「お母様。どういうことですか?」


「クロエちゃんはね、こちらにいる間、アインくんにスキンシップを取りすぎたり、休みの日に家に押しかけたりと迷惑をかけたから、ミモザへ行くことになったの」


「まさか……そんな」


「ご友人の方から証言は取っていますよ。それにね、ミモザへ行ってからもとても頻繁に恋文を送っているのよ」


「嘘だ!」



アルには可哀想ですが、アインくんから預かった手紙をアルに見せます。

婚約者の字ですから、見間違えたりはしません。

読み進むうちにアルの顔色が悪くなっていきます。



「それから、あのブローチね。あなたに渡したのはレプリカだけど、本物には毒針がついていて、体力を根こそぎ奪う魔法がかけられていたわ。自分で確認する?」



頷いたアルに、無効化魔法をかけた上で手渡します。

アルはブローチに魔力を流しこんで、詳しくはわからなくても魔法がかけられていることに気がついたようです。



「クロエ。どういうこと?私の想いが重すぎるって本心?

アインが愛しいって」


「いえ、その、私は……」


しどろもどろになったクロエちゃんの手を、アルはギュッと握りました。



「大丈夫。本当のことだとしても、私は気にしないよ?

でも、君をアインには渡さない。お姉様もきっとアインを渡さないだろうね。心配しないで?君は、私が一生そばにいて、離さないから。君は第二王子の婚約者のままでいられるんだよ?」


「アルフォンス様、申し訳ございません。ですが私は、アイン様を……」


「だめだよ。君は私のもの。婚約した瞬間に、一生私のそばにいることが決まったんだ」



なんというか……

アルはストーカー的な面はありましたし、クロエちゃんから離れたがらないだろうとは予想していましたが、こうして実際に見ていると少し恐怖を感じます。

もはや天使というより、堕天使です。

恋は、こんなにも人を変えてしまうのですね。



「クロエちゃん。あなたをこのまま自由にしておくわけにはいきません。自分の婚約者を裏切り、王女であるノエルの婚約者を奪おうとしたばかりか、命を狙ったのですから。

本来であれば極刑ですが、アルは今のままのあなたでもそばにいたいようですし、ノエルは真実を知らず、アインくんも極刑は望んでいません。あなたは、追放とし、ジン共和国にある白百合の塔に軟禁する事とします。

また、もし今後トリス国へ入国しようとしたら、その瞬間に、半永久的に石化するようにします。

それと、これが最後のプレゼントになりますが、この指輪を。

クロエちゃん。とても、本当にとても残念よ。

あなたとはこれからも仲良くできると思っていたのに。


オブライエン子爵、あなたはいかがなさいますか?」


「オブライエン子爵家から勘当致します」


「お父様!」


「アル。あなたも一緒に白百合の塔へ行きたい?」


「はい。クロエの面倒は一生私が見ます」



アルには、きっとこれからほとんど会えなくなるでしょう。

それは親としてとても寂しいことです。

そして、アルが狂気を感じるまでにクロエちゃんを想っていることを知りながら、今回の処置を決めた事に、他の方法があったのではと思わずにいられません。

アルは、まだ11歳なのです。

物事の分別のつく歳とは言えません。



「アル。もしもクロエちゃんへの気持ちが冷めたときは、いつでも一人で戻っていらっしゃい」



親として言えることは、これくらいしかありませんでした。

出来るなら、早い段階でアルの目が覚めてくれるといいのですが。



お義父様がチリンチリンとベルを鳴らして護衛騎士を呼びます。



「お前に持たせられるものは、着替え程度だ。

後日送るから、もう行くがいい」



オブライエン子爵は複雑な表情で言いました。



「お父様!」


「お前はもう、私達の娘ではない」



クロエちゃんが、ガクリと膝をつきます。

そのクロエちゃんの両腕を抱えるようにして、護衛騎士が王城の外に待たせてある馬車へと連れ去ります。



「アル。あなたは明日行けばいいわ。着替えとかその他にも本とか、持っていくものがあるでしょう?」


「パーティーに出ないと不審に思われますしね。私は明日行くことにします。

なんだか、結婚が早まったみたいで嬉しいなぁ」



純粋に喜んでいるアルを、私達は沈痛な面持ちで見ていました。


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