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乙女ゲーのモブキャラに転生したら王子にプロポーズされました  作者: いち
第2部 ノエル編 第三章 それぞれの思い
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夏の離宮へ

クロエ視点です

ノエル様が2週間学園をお休みになると連絡が入ると同時に、私の元へノエル様からお手紙が届きました。


内容は、婚約者のバトン様が性的嗜好により、ノエル様にはふさわしくないと判断され、婚約解消となったこと、バトン様が退学されたことが書いてありました。


きっと、泣きながら書いたのでしょう。

所々、インクが滲んでいます。

他のご友人にも伝えてほしい、と書いてあることから、ご自身の口からお話されるのは辛いのだろうとお察しします。

こんなに悲しんでいるノエル様を見ていたら、私のバース様への想いなんてとても軽かったのだと実感させられました。


私は午後のお茶会で周りに人がいないのを確認して、今回の出来事をお伝えしました。


皆さん、沈痛な面持ちで話を聞いています。



「今度の王族主催のパーティーでは、どなたをエスコート役に選ばれるのでしょうね」


「エドワード様にはエリザベス様が、アルフォンス様にはクロエ様がいらっしゃいますからね。

かと言って、うかつにその辺の貴族のご子息に頼まれると後々面倒でしょうし」


「ノエル様に相応しくない性的嗜好、というのが気になるわ」



アリア様、気にかけるところが違いますわ。



4年のクラスでは、突然のバトン様の退学、そしてもうお一方、ミモザから留学にいらしていた女性が急遽退学されたということで、少し騒ぎになったようです。


エドワード様のいるクラスですので、表立って噂される方はいないそうですが、中には面白おかしく、バトン様とその女性が逃避行をなさったのでは、と口さがないことをおっしゃる方もいたそうです。


ちなみにこれ、全部アリア様の情報です。

私がお茶会でお話した翌日にはこれだけの情報を集めていました。



「今回のパーティー、ノエル様は参加されないかもしれませんわね」


「マリアンヌ様からルディちゃんに授けられた恋のテクニックも、また次回ですわね」


「私のことはいいのですけれど、ノエル様が心配ですわ。

王女殿下であられる以上、パーティーに出ない訳には行かないでしょうし」



その時、私達のもとに紙鷹が飛んできました。



「ノエル様からですわ!」


「まぁ、なんと?」


「今度の週末、3日間王族所有の夏の離宮に遊びに行かないか、と」


「ずっと王城にいても息がつまりますものね。

それに、王妃様が3人目の天使様からご加護を頂いたのは、確か夏の離宮でしょう?

私、ぜひ行ってみたいですわ」


「あら、それなら私だって」


「私もですわ」



結局、全員でお邪魔することになりました。

私達はまだ誰も紙鷹を使えないので、ティア様が学園の帰りにお返事を届けてくださることになりました。



そして、週末。

一台の馬車に全員は乗り切れないので、荷物も合わせて三台の馬車で向かいます。


ノエル様は少しやつれているようでしたが、予想していたよりはお元気そうで安心しました。



「ノエル様。私、テーブルマナーなどわからないのですけど、大丈夫でしょうか」



不安そうなアリア様に、ノエル様が天使の笑顔を向けます。



「夏の離宮は使用人も最低人数ですし、公式の場でもありませんから、私達の真似をしておいしく食べていただければ充分ですわ」



馬車の中でも話は弾みます。



「そう言えば、ノエル様の専属執事の方、とても素敵な方ですのね」


「ありがとうございます。彼はまだ、執事見習いとして勤め始めてから、一年も経っていませんのよ?」


「まぁ、それなのにこんなしっかりした執事に?」


「指導に当たった筆頭執事の教え方と、本人の努力の賜物ですわね」


「失礼を承知で申し上げますが、私、ノエル様には彼のようなしっかり者で努力家の男性がお似合いだと思いますわ」


「うふふ。そうですわね、アインのような男性の奥様は、真面目に愛されて幸せになれそうですわね」



居心地が悪くなったのか、それまで気配を消していたアインさんが咳払いを致しました。



「からかったわけではないのよ?気を悪くしたならごめんなさいね、アイン」


「ノエル様がそう言ったからかいをする方ではないことは存じております」


「ありがとう。アインも可哀相ですし、他の話題にいたしましょう」



そこからはアリア様の恋の話や、アリア様がこのままだと留年してしまうことなどを話しました。


アリア様、前世では勉強ができたのですから、ここでも努力すればいい成績を納められると思うのですが。


こっそり聞いた話によると、平民が貴族並みの知識を得てもあまり役には立たないのだとか。

ただ、高魔力保持者は国から保護されますので、学園には編入したものの、将来の目標などもなく、やる気が出ないのだそうです。



「将来は王妃様の国土防御魔法陣の強化のお手伝いや、治療院での治癒魔法など、国に関係するお仕事についたらどうかしら」


「国を守る魔法陣や攻撃魔法や治癒魔法に力を注ぐのは楽しいかもしれないわね。

とりあえず、留年しない程度に頑張るわ」



前世でもそうでしたが、アリア様はマイペースです。



そんなことを話しているうちに、馬車が夏の離宮に到着致しました。


アインさんと夏の離宮の使用人頭の方が荷物をおろしている間に、メイドさんに離宮の中の説明を受け、私達の泊まる部屋に案内してもらいました。


びっくりするほど広いです!


うちは貧しい子爵家なのでそもそも屋敷自体が狭いのですが、私達の泊まる部屋は、全員が寝るベッドをすべて置いてもまだ余裕がありそうです。



「ノエル様。随分大きなお部屋ですのね」


「ここは元々ダンスホールだったのを、今回だけ寝室にしてもらったのですわ」



なるほど。

いくら王族所有の離宮とはいえ、この広さの寝室はおかしいと思っていたのです。



「着替えは隣の部屋ですることになるけれど、基本的にここは寝るためだけの部屋だと思ってくださいな」



その時、トントントンとノックされ、アインさんが顔を出しました。



「ご歓談中失礼いたします。お嬢様方の荷物をすべて隣の部屋に移し終えました。

なお、今夜の夕食は今から3時間後の午後6時を予定しております。

苦手な食べ物などがございましたら、私から料理長に伝えますが」


「私は好き嫌いはございませんわ」


「私も嫌いな食べ物はないですわね。好きな食べ物はありますけれど、そこまで贅沢は言いませんわ」



ティアちゃんとシエルちゃんが答えて、他の方も嫌いなものはない、と答えると、アインさんは一礼して部屋を出ていきました。



「今夜は枕投げをしましょうね」


「枕投げ?なんですの?それ」



アリア様の言葉にみなさん首を傾げます。



「ひたすら他の人に向かって枕を投げる遊びです。最終的に枕のなくなった方の勝ちですわ」


「まぁ………」



野蛮な、と思われるかと思っていると、皆さん目を輝かせました。



「なんて楽しそうな遊びですの!ぜひ、やりましょう」



私もアリア様も本当は枕投げの詳しいルールなど知らないのですが、要は楽しければいいのです。

ストレス発散にもなりますし、枕は柔らかいので当たっても痛くありませんし、何より、ノエル様がとても楽しみにしていますもの。


夕食までの時間は着替えて乗馬をしたり、お茶をしたりしてのんびり過ごしました。



王城でお菓子を頂いたことは何度もありましたが、お料理をいただくのは初めてです。

パーティーでは、ほとんど食べられませんでしたし。



「まぁ!」


「美味しいですわ!」



それぞれ感嘆の言葉が漏れます。



「料理長に、とても美味しいお料理で皆さん喜んでいる、とお伝えしていただける?」



ノエル様がメイドさんに伝えています。

年配のメイドさんは、ハッとしたように目を見開くと、かしこまりました、と頷きました。



「それから、これ。私の手作りではなくお母様の手作りなのだけど、これから3日間少ない人数の中お世話になるので、皆さんで召し上がって?」


「王女様……本当に、王妃様によく似ていらっしゃいますね。

王妃様が以前こちらへ訪れた際も、料理の感想やお礼、それに手作りのお菓子をお礼に、と私どもに下さったのです。懐かしいですわ」



ノエル様は少し驚いたようでしたが、ふんわりと天使のような笑顔を浮かべました。



「私達は、あなた方がいないとなにもできないのですもの。お礼をするのは当然ですわ」


「もったいなきお言葉、ありがとうございます」



メイドさんはエプロンで涙を拭きながら下がっていきました。



夕食も食べ終わって、夜のお茶もしてお腹も落ち着いてきました。


さあ!枕投げの時間です!


みんな一緒に夜着に着替えると、早速各々ベッドを陣取り、枕を投げる準備をしています。

皆さん、やる気満々ですね。



「用意、スタート!」



アリアちゃんの掛け声とともに部屋の中を一斉に枕が飛び交います。

枕投げなんて、前世でもしたことなかったですが、こんなに楽しいなんて!


あまりにも盛り上がっていた私たちは、ノックの音に気が付きませんでした。



「失礼いたします。明日のご予定ですが……」



運悪く、ちょうどドアを開けたアインさんの顔に、誰かの投げた枕がジャストミートしました。


チラリと皆さんを見ると……どうやら投げたのはノエル様のご様子。



「ご、ごめんなさい、アイン。わざとじゃないの!」



必死のノエル様に、口元を抑えるアインさん。



「クッ……ククッ、ははっ」



堪えきれないというように、アインさんが笑い出しました。

執事が感情を表に出すことは滅多にありません。

それは、アインさんも同じだったのでしょう。



「アインが、笑った……」


「失礼いたしました。明日のご予定ですが、特にご要望がなければ、天然温泉でのんびりされてはどうでしょうか」



ああ。

せっかくのイケメンスマイルがもう消えてしまいました。



「天然温泉?」


「ええ。この夏の離宮には、美肌効果のある天然温泉を春の離宮から引いてあるんですの。

最近ではお母様の指示で、お湯に浸からなくても汗を流すことのできるサウナというものも作られたそうですわ」


「サウナがあるなんて!」



アリア様が驚いています。

私もびっくりです。



「美肌効果……」 


「スベスベになるらしいですわ」


「スベスベ……」



他の皆さんも興味が出たようで、明日は天然温泉を満喫することになりました。



それにしても……先程アインさんが笑った時、ノエル様が少し赤くなった気がするのですが……

それに、アインさんを見る目も普段より優しいような……


もしかして、もしかするのでしょうか。

でも、執事と令嬢の恋愛はご法度。

ノエル様がまた辛い思いをしないといいのですが。

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