↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲーのモブキャラに転生したら王子にプロポーズされました  作者: いち
第2部 ノエル編 第三章 それぞれの思い
124/164

思わぬ提案

アイン視点です

ノエル様への気持ちを心の奥深くに封印して、俺は変わらずノエル様の執事として働いている。


王城内では、王妃様とマリアンヌ様が真剣な顔をして話し合っている姿をよく見かけるようになった。


そして、ノエル様がご友人と夏の離宮に向かわれる前日、俺はマリアンヌ様から呼び出しを受けた。


ノエル様に事情を話し、メリーにあとを頼んでマリアンヌ様の小部屋へ行く。


ノックすると、マリアンヌ様が扉をあけて俺を迎え入れてくださった。

中にはコック長のエリクさんもいる。



「本日は、どのようなご用件でしょうか。

ノエル様のことで何か?」


「いいえ。あなた本人に話があるの。

ここからは、執事としてではなく、あなた個人と話をしたいから、あなたも本音で答えてね」


「かしこまりました」


「何から話したらいいのかしら。

そうね。私とエリクが夫婦だということは知っているわよね?エリクが私の家に婿入りしたことも知ってる?」


「はい。存じております」


「それでね、私達の間には子供がいないのよ。

家督は私が継いでいるのだけど、やはり、後継となる子供が欲しくてね。それ以前に、私たちも子供を愛したいのよ」



そう言って、マリアンヌ様はエリクさんを見上げる。



「エリクや王妃様とも話したのだけど、あなた、私達の養子になる気はないかしら」


「え?私が、ですか?」


予想もしていなかった展開に、頭がついていかない。



「もちろん、本当のご両親との思い出もあるでしょうし、嫌なら断ってくれていいのよ?」


「嫌というより、なぜ私を?私は、元は孤児でございます。侯爵家には相応しくないのでは。それに、養子でも家督を継げるのですか?」



王城の執事としての教育は受けてきたが、貴族としての教育は受けていない。

しかも、侯爵家となれば、それなりに高位の貴族だ。自分がふさわしいとは思えない。



「まず、トリス国では養子でも家督を継げるわ。

それから、相応しいかどうかについては、これまでのあなたの働きを見てきた上で、私たちはあなたを選んだの。

もちろん、養子になってくれるなら、責任を持って貴族としての教育はするわ。

でもね、王城の執事として働いているあなたには、ほとんど教育の必要はないと思っているの」


「そう、なのですか?」


「ええ。ただね」



マリアンヌ様の声がワントーン下がった。



「その場合、執事としての仕事はやめてもらうことになるの。

侯爵家は上位貴族だから、仕事も多いし、継承者が執事をしている、というのは世間的にもね……」



ビクリと体が震えた。

ノエル様の専属執事から、外れる?

これまでのように、ノエル様の一番おそばにいることが出来なくなる?

いや、元々ノエル様が落ち着かれたら専属執事から外してもらおうとおもっていたじゃないか。



「アイン。これはあなたのためでもあると思うの。あなた、ノエル様のことを愛しているでしょう?」



顔から血の気が引いた。

決して表には出さないように気をつけていたはずなのに、なぜ……



「専属執事と王女様では、一緒にはなれない。

けれど、侯爵家の子息と王女様なら、婚姻も可能になるわ」



これは……

俺をノエル様から遠ざけようとしているのだろうか。

執事と王女の禁断の恋に発展させない為に。



「アイン?ちゃんと聞いていた?侯爵家の子息なら、婚姻は可能なのよ?」



俺が……ノエル様と結婚できる?

本当に、そんなにうまくいくのだろうか。

ノエル様の気持ちはまだバトン様にある。

俺が侯爵家に養子に入っても、ノエル様に好意を持ってもらえるとは限らない。



「あなたの考えている通り、婚姻が可能になるだけで、必ず婚姻できるとは限らない。

それでも、あなたはその可能性にかけてみる?

それとも、これまで通り自分の気持ちを押し隠して、ノエル様がいつか嫁ぐのを見届ける?」



究極の2択だと思った。


ノエル様の適齢期まであと数年。

俺は心から祝福して差し上げることが出来るだろうか。

ノエル様のいなくなったこの城で、これまで通りに働けるのだろうか。

しかし、俺には執事としてポアロ様や他の方に育てていただいた恩がある。



「明日から3日間、夏の離宮に行くのでしょう?その間、ゆっくり考えて。

返事は……そうね、次の王族主催のパーティーまででいいわ」


「わかりました。しっかり考えます」


「俺もマリアンヌも、君が子供になってくれるのを心待ちにしている。その事だけは忘れないでくれ」



エリクさんが優しく笑っていってくれた。


部屋を出て、明日からの準備に取り掛かる。

夏の離宮には使用人が常時いて、料理やベッドメイキングなどの心配はない。

俺がすることと言えば、荷物持ちや雑用程度だ。

考える時間はたくさんある。


誰に相談すべきだろう。

一人で決められる話ではない。

しかし、相談するとなれば、ノエル様への気持ちも打ち明けなくてはならない。


考えに考えて、思い浮かんだのは育ての親とも言えるポアロ様だった。


この時間、ポアロ様は陛下の公務のお手伝いをしているはず。

時間をもらえるとしたら、晩餐後だ。


俺はポアロ様が陛下の執務室から出てきたタイミングで、晩餐後に時間をいただきたいと願い出た。

ポアロ様は深く追求することもなく、黙って頷いて下さった。



晩餐後、俺達使用人も賄いを食べて、それぞれ予定のある方はそちらに、予定が全て終わった方は自室へと戻る。



「アイン。30分だけだが時間がある。ついてきなさい」



俺はポアロ様のあとについて行った。

たどり着いたのは、この時間には誰も訪れない裏庭。

庭師も仕事を終えて自室に戻っているから、本当に二人きりだ。



「相談事ですか?」


「はい。ポアロ様しか、ご相談に乗っていただける方が思いつかなくて」


「マリアンヌ様の、養子の話ですか?」


「ご存知、でしたか……」



と言うことは、俺の気持ちも知っているのだろう。



「私は、それほど分かりやすかったでしょうか」



何が、とは言わずに尋ねる。



「君はうまく隠していましたよ。隠し方がうますぎて、逆に私や王妃様、マリアンヌ様は気づいてしまったのです」


「許されない想いだと言うことは、重々わかっております」


「マリアンヌ様のご提案は、君にとっていい話だと思いますが」


「ですが……ここまで育てていただいたのに」


「君の心配事はそれだけではないでしょう?

あの方と離れて、その後に気持ちを寄せていただけるかどうか、それが怖いのではないですか?」


「仰っしゃる通りです」



俺は結局、怯えているのだ。

ノエル様から離れたものの、ノエル様が別の男性を選ぶ可能性を。



「私は、心配いらないと思いますがね。

どちらにせよこのままでは報われない。

それならば、少しでも可能性のある方に賭けた方が後悔がないと思います」



ポアロ様の言うことはもっともだった。



「しっかり考えて、答えを出しなさい」



ポアロ様は懐中時計を見ると、それだけ言って去っていった。



次の王族主催のパーティーまであと半月。


ノエル様の部屋を見上げると、ランプの灯りが揺れていたので、俺はとりあえず急いでノエル様の部屋に向かった。




「ごめんなさいね、毎晩のように」


「お気になさらず。今夜もダンスをしますか?」


「そうね。アインのリードもだいぶうまくなってきて、まるで貴族の子息みたいよ」



マリアンヌ様との話を知っているのかと思ったが、そうではないようで、純粋に感想を述べられただけのようだった。



「アインの手は、いつも温かいわね」


「そうでしょうか。あまり意識したことはないのですが」


「先日のように髪を撫でてもらえる?」


「かしこまりました」



フワフワの髪を優しく撫でる。

こんなことでノエル様の傷が癒えるなら、どれだけでも撫でていよう。



「アイン。正直に答えて?使用人としてではなく、男性として。

私には、女性としての魅力がかけている?」


「まさか!そんなことは断じてございません。

ノエル様は、すべての令嬢の憧れでございます」


「それは言いすぎだわ」


「バトン様のことを気にかけていらっしゃるのなら……失礼ながらあのお方に見る目がなかっただけかと存じます。ノエル様は、どこからみても魅力的な令嬢ですよ」


「アインは褒めるのが上手ね。あなたといると本当に落ち着くわ」


「光栄です」


「明日から夏の離宮ね。使用人が少ないからアインの仕事も増えるかもしれないけれど、よろしくね」


「かしこまりました」



そろそろお休みにならなければ、明日お辛くなるだろう。

髪を撫でていた手を止めて、そっと体を離す。



「ありがとう、アイン」


「いえ………それではこれで失礼いたします」



そのまま部屋を出て行きかけて、俺はふと足を止めた。

魔が差した、というのだろうか。



「もしも私が貴族の子息なら、ノエル様から見て魅力的に映りますか?」


「ええ、もちろん。あなたは今のままでも充分魅力的よ」


「………ありがとうございます」



ノエル様の迷いのない答えに、俺の心は揺さぶられた。



「いつか、あなたとパーティーで実際にダンスが出来たら、楽しいでしょうね」



そんなことはあり得ない、と思っているからこそ出た言葉だろう。

俺は複雑な気分で一礼すると、今度こそ部屋を出た。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。