16 必ず、帰ってきて
結局、その夜はほとんど眠れなかった。
白い鳥が残していった羽は、今は何事もなかったように私の枕元へ置かれている。手のひらに浮かんだ守護紋も、しばらくすると消えてしまった。
けれど、あの時感じたものは今も胸の奥に残っている。
細い、深い蒼色の光。
遠くにいるレオンハルト様へ、確かにつながったような感覚。そして…
『彼は向かう』
『暁』
「……どうして言ってくれなかったのよ」
ベッドの中で膝を抱えた。
明け方には北の森へ向かう……
白い鳥の言葉が本当なら、もう時間はほとんどない。
昨日、あんなに話したのに…
怖いって言った…のに…
血だらけで倒れている姿を見たって伝えたのに…
そのあとレオンハルト様は、私の手を握って「必ず戻る」と言ってくれた。
『あなたのところへ』
そこまで言ったくせに…
自分が翌朝には北へ向かうことを、何も教えてくれなかった。
「……ずるい」
悲しいというより、腹が立ってきた。
私を心配させたくなかった?
きっとそうだろう。あの人なら、そう考える。
でも、それって…前の私と同じじゃない。
何でも「大丈夫」と言って、自分で全部抱え込んで、大切な人に心配をかけないつもりで何も話さない。
私は、それでどうなった?
「……駄目」
こんなところだけ似なくていい。
時計なんてないけれど、窓の外はまだ真っ暗だった。
私はベッドから降りると、上着を羽織った。
そして扉へ向かう。
一人で勝手に出たら怒られるけど分かっているけど…
だから、扉を開けた。
当然のように、外には二人の騎士が立っていた。
「ミキ様?」
驚いた顔をされる。
「すみません。レオンハルト様に会いたいんです」
「ですが、この時間は――」
「北の森へ行くんでしょう?」
二人の騎士が、顔を見合わせた。
その反応だけで十分だった。
「……やっぱり」
胸が、ぎゅっと苦しくなる。
でも、泣かない。
今は、ちゃんと話したい。
「一人では行きません。どちらか一人、一緒に来てください。それならいいでしょう?」
騎士たちは少し迷ったあと、一人が頷いた。
「では、お部屋付きの侍女もお呼びいたします」
「……はい」
言うことを聞く。私、成長したと思う。
*
「ミキ様!?」
呼び出されたエミリアさんは、寝起きとは思えない速さでやって来た。
「どうされたのですか?」
「レオンハルト様のところへ行きたいの」
「この時間に?」
「北の森へ行くって聞いたから」
エミリアさんが黙った。
「エミリアさんも知ってた?」
「……」
「知ってたんだ」
責めるつもりはない。
多分、言えなかったのだろう。
「申し訳ございません」
「謝らなくていいよ」
私は首を横に振った。
「レオンハルト様に、直接聞くから」
エミリアさんは私をしばらく見つめていた。
「……分かりました」
そして、
「参りましょう」
そう言って、私の隣に立ってくれた。
*
夜明け前の王城は、昼間とはまるで違っていた。
長い廊下に人影はほとんどなく、窓の外にはまだ夜の色が残っている。ただ、騎士団の詰所へ近づくにつれて、少しずつ人の気配が増えていった。
鎧の音
低い話し声
荷物を運ぶ音
嫌でも分かる。本当に出発するんだ。
詰所近くの中庭へ出ると、馬が何頭も並んでいた。騎士や魔法師らしい人たちが装備を確認し、慌ただしく動いている。
そして……その中心に銀色の髪が見えた。
「……レオンハルト様」
声に出した瞬間…彼が振り向いた。
目が合う、驚き…
それから、明らかに困った顔。
「ミキ様?」
私は、まっすぐ彼のところへ歩いた。
「なぜこちらに?」
「それ、私が聞きたいです」
「……」
「北の森へ行くんですか?」
周囲が少し静かになった気がした。
でも、そんなことはどうでもいい。
レオンハルト様は一瞬だけ目を伏せ、それから静かに答えた。
「……はい」
「いつ決まったんですか?」
「昨夜です」
「私と話したあと?」
「はい」
「じゃあ、言う時間はありましたよね?」
「……」
答えない。
「どうして言ってくれなかったんですか?」
「ミキ様」
「私が怖がるから?」
「……はい」
やっぱり……
「白い鳥の警告を聞いた直後です。これ以上、不安にさせる必要はないと思いました」
「それって」
自分でも声が強くなるのが分かった。
「私のためですか?」
「もちろんです」
「じゃあ駄目です」
レオンハルト様が目を見開いた。
「……何がです?」
「勝手に私のためって決めて、何も言わないの」
「しかし――」
「私もやってたから分かるんです」
言葉を遮った。
「前の世界で、ずっと……」
夫が病気になった時も…
子供たちに心配をかけたくなかった時も…
疲れていても…
苦しくても…
私はいつも大丈夫、大丈夫だから…そう言っていた。
「心配かけたくないからって、何でも一人で抱え込んで……それが優しさだと思ってた」
レオンハルト様は、黙って聞いている。
「でも違ったんです。あとになって思いました。私が何も言わなかったら、周りの人は私が何を考えてるかも、どれくらいしんどいかも分からない」
私は一歩、彼へ近づいた。
「だから今度の人生では、ちゃんと頼るって決めたんです」
「……」
「だからレオンハルト様にも、一人で抱え込んでほしくない」
胸が苦しい。
でも言わなきゃ…ダメだ。
「私が心配するかどうかは、私が決めます」
昨日、カイルがレオンハルトへ言った言葉とほとんど同じことを、もちろん私は知らない。
「怖くても、知りたいんです。大切な人のことだから」
深い蒼色の瞳が揺れた。
「……申し訳ありません」
「謝ってほしいわけじゃないです」
「では」
少しだけ困ったような顔。
「どうすれば、お許しいただけますか?」
「次からは言ってください」
「……次」
「危険な任務に行く時も。心配なことがある時も。私に関係することを勝手に一人で抱えない」
「……」
「約束して」
しばらく……レオンハルト様は何も言わなかった。
「分かりました」
ゆっくり頷く。
「約束します」
「本当に?」
「はい」
「破ったら怒りますからね」
「今回以上に?」
「今回以上に」
少しだけ笑うと、レオンハルト様もようやく笑った。
「それは……避けたいですね」
「でしょう?」
やっと、胸につかえていたものが少し取れた。
*
「それで……」
私は、改めて彼の姿を見る。
普段より重そうな装備
腰には剣
背中にも荷物
完全に戦いへ行く人の姿だった。
「どれくらいで帰ってくるんですか?」
「順調なら、三日ほどで」
「順調じゃなかったら?」
「……」
「今、黙らない」
「五日程度を想定しています」
「五日……」
長い……いや、たった五日かもしれない。
でも、昨日まで毎日会っていた人がいなくなる。
それだけで今から寂しい。
「そんな顔をしないでください」
「どんな顔?」
「今にも泣きそうな」
「泣きません」
多分…
「だって、約束したでしょう? 戻ってくるって」
「はい」
私は彼の胸元を見る。
「お守り、持ってます?」
「もちろんです」
即答…
騎士服の内側からあの小さなお守りを取り出して見せてくれる。
生成り色
深い蒼色
守護紋
それを見ただけで、少し安心した。
「昨日、少し光ったんです」
「……やはり」
「やはり?」
「私の方もです」
「え?」
レオンハルト様が、お守りを手のひらに乗せる。
「昨夜、守護紋が光りました。その時……あなたの声が聞こえた気がした」
「何て?」
「『無事でいて』と」
「……」
届いてた…あの時、私が思ったこと…
胸の奥がふわっと温かくなる。
「私も」
手のひらを開く。今は消えている。でも…
「あの時、手に同じ守護紋が出たんです。そこから蒼い光が伸びて……どこかにつながってる感じがして」
「私に?」
「多分」
二人でお守りを見る。
「これ……やっぱり普通のお守りじゃなくなってますよね」
「ローグ殿が聞けば、飛んで来そうですね」
「絶対調べるって言う」
「渡しませんが」
「まだ言うの?」
「当然です」
真顔… 思わず笑った。
「じゃあ、ちゃんと持っていてくださいね」
「はい」
「何かあったら」
言いかけて、何ができるか分からないことに気づく。
それでも…
「私も、ここから守ります」
レオンハルト様が、少し驚いたように私を見る。
「だから」
お守りの上へそっと自分の手を重ねた。
「一人で戦ってるって思わないでください」
「……」
彼の表情が変わった。
言葉ではうまく説明できない。
嬉しそうで…苦しそうで…愛おしいものを見るような…そんな優しい顔。
「ミキ様」
「はい?」
「……抱きしめても?」
「え?」
時間が止まった。
「……今」
聞き間違い?
「何て?」
「あなたを、抱きしめてもよろしいですか」
聞き間違いじゃなかった。
「……」
どうする?いや……どうするも何も嫌じゃない。
むしろ…
「……はい」
自分でも驚くほど素直に答えられた。
次の瞬間、ふわっと身体が包まれた。
「……」
レオンハルト様の腕、初めてではない。
倒れた時に抱き留めてもらった。
お姫様抱っこもされた。
でも、これは全然違う。助けるためじゃない。
私が許したから…この人が
私を抱きしめたいと思ってくれたから…
広い胸にそっと頬が触れる。
心臓の音が聞こえる。
私と同じくらい……速い。
(……緊張してるんだ)
そう思うと、急に愛おしくなった。
私は、迷いながらゆっくり腕を上げた。
そして、レオンハルト様の背中へそっと手を回す。
腕に力が入った。
「……ミキ様」
耳元で聞こえる。低い声…
「必ず戻ります」
「はい」
「必ず」
「……はい」
「だから」
少しだけ……抱きしめる腕が強くなる。
「待っていてください」
……胸が苦しい。
でも嫌じゃない。
「待ってます」
私は、彼の騎士服をぎゅっと掴んだ。
「だから……絶対に帰ってきて」
「はい」
「私のところに」
言った。自分から…
レオンハルト様の身体が一瞬、止まった。
そして、もっと強く大切にするように抱きしめられた。
「……はい」
声が少しだけ掠れていた。
「あなたのところへ帰ります」
*
どれくらいそうしていたのだろう。
ほんの数秒だったのかもしれない。でも、私にはもっと長く感じた。やがて、名残惜しそうに腕がほどかれる。急に寒い…そう思ってしまった。
「……」
顔が見られない。絶対に真っ赤……
「ミキ様」
「はい」
「こちらを」
「無理です」
「なぜです?」
「顔が赤いから」
「私も同じです」
「え?」
思わず見上げる。
本当だった。耳まで…真っ赤。
「……ふふっ」
笑ってしまった。
「笑いましたね」
「だって」
「ミキ様も同じでしょう」
「私はいいの」
「なぜです?」
「……何となく」
二人で笑った。こんな時なのに…
これから危険な場所へ行くのに…
でも、だからこそ笑って送り出したかった。
「副団長」
少し離れたところからカイルの声がした。
「そろそろ」
「ああ」
時間が来てしまった。
レオンハルト様の顔が騎士のものへ戻る。
「では」
「はい」
「行って参ります」
「……」
その言い方、なんだか……
「そこは」
思わず呼び止めた。
「『行ってきます』でいいんじゃない?」
レオンハルト様が目を瞬かせる。
「日本では?」
「帰る場所がある人が、出かける時に言う言葉です」
「……」
「行ってきますって言ったら、待ってる人は『行ってらっしゃい』って」
一瞬………彼の瞳が揺れた。
そして、とてもとても優しく笑った。
「……行ってきます、ミキ」
「……!」
初めて……様がない??
「今……」
「申し訳ありません」
「違う!」
慌てて首を振る。嫌じゃない。
全然むしろ胸がどうしようもなく嬉しい。
「もう一回」
「え?」
「もう一回、言って」
恥ずかしい。でも聞きたい。
レオンハルト様は、少し驚いてそれから…
静かに笑った。
「行ってきます、ミキ」
「……」
泣きそう。でも…笑う。
「行ってらっしゃい、レオンハルト様」
言えた…ちゃんと笑って…
*
馬に跨がりレオンハルトが、こちらを見る。
私は、その姿を目に焼きつける。
銀色の髪
深い蒼色の瞳
胸元には……私のお守り
騎士たちが次々と城門を抜けていく。
最後にレオンハルト様がもう一度、こちらを見た。
言葉はない。でも、分かった。
……約束、必ず帰る
私は、胸の前で両手を組んだ。
「……行ってらっしゃい」
小さくもう一度、呟いた。
そして、姿が見えなくなるまで
…ずっと……見送っていた。
*
「……行ってしまいましたね」
隣で、エミリアさんが言った。
「うん」
……寂しい。すでにものすごく…でも、
「大丈夫」
今度の言葉は、無理をして言った「大丈夫」ではなかった。
「信じてるから」
そう、信じる。レオンハルト様を…
そして、自分の力を…
白い鳥が言った。
『信じよ』
多分、こういうことなのかもしれない。
「ミキ様」
声をかけられる。振り返るとそこには、
ものすごくにこにこしたエミリアさん。
「……何?」
「いえ」
「何よ」
「いつから、レオンハルト様は『ミキ』と?」
「……」
忘れてた!!
「今!」
「まあ」
「今、初めて!」
「そうでございましたか」
「何、その顔!」
ニーナちゃんまで少し離れたところで、顔を真っ赤にしている。
「ニーナちゃん!」
「何も申し上げておりません!」
「顔が言ってる!」
もう!さっきまで泣きそうだったのに、思わず笑ってしまった。
*
北へ向かう街道
レオンハルトは、馬上で何度目か分からないほど
胸元へ手を当てていた。
「副団長」
隣を走るカイルが、呆れたように言う。
「お守り、逃げませんよ」
「黙れ」
「それにしても」
カイルがにやっとする。
「随分と長いお別れでしたね」
「……見ていたのか」
「いやぁ、中庭の真ん中ですから」
「……」
失敗した……
いや、後悔はしていない。
「抱きしめ――」
「カイル」
「はい?」
「これ以上言えば、戻ったら訓練を倍にする」
「横暴です」
「三倍」
「黙ります」
ようやく静かになった。だが、すぐに…
「副団長」
今度の声は、少し真面目だった。
「なんだ」
「必ず帰りましょう」
レオンハルトは、前を見る。
遠く北の空。薄暗い雲が森の上を覆っている。
「ああ」
胸元に小さなお守り。
『帰る場所』
その意味を指先で確かめる。
「必ず帰る」
*
一方…
王城へ戻った私は、すぐにローグ様のところへ向かった。
もちろん、エミリアさんと騎士付きで…
一人では行かない。もう、ちゃんと学習した。
「ローグ様!」
執務室の扉を開ける。
「ミキ?」
机の上、書類に埋もれたローグ様が顔を上げた。
「どうした?」
「話があります」
「レオンハルトならもう――」
「知ってます」
「……知っている?」
「白い鳥が教えてくれました」
ローグ様の表情が一気に変わる。
「昨夜か?」
「はい」
私は、白い羽、守護紋、蒼い光。
そして、レオンハルト様のお守りにも同じ光が現れたことを説明した。
聞き終えたローグ様は、しばらく何も言わなかった。
「……見せてみろ」
「何を?」
「手だ」
手を差し出す。今は、何もない。
「守護紋は?」
「消えました」
「もう一度出せるか?」
「分かりません」
「レオンハルトを思え」
「……」
「何だ」
「普通に言わないでくださいよ」
「今さらだろう」
「今さらって何!」
もう!!
でも、言われた通り目を閉じる。
……レオンハルト様、今頃どこにいるかな。
まだ街道?寒くないかな。
ちゃんと休んでね。
無事で帰ってきて…そう思った瞬間!!
手のひらが温かくなる。
「……あ」
……守護紋
……円
……葉
……星
そして、中心から細い蒼色の光。
今度は、はっきり北の方角へ伸びている。
「……」
ローグ様が立ち上がった。
「これは……」
「方角を示してるの?」
「恐らくな」
「じゃあ」
胸が跳ねる。
「レオンハルト様がいる場所が分かる?」
「可能性はある」
「本当に!?」
「ただし」
「……はい」
「絶対に、それを理由に北へ行こうとするな」
「……」
「ミキ」
「……はい」
「返事」
「行きません」
「本当か?」
「……今は」
「ミキ」
「行きませんって!」
ローグ様が深いため息をつく。
「お前は本当に……」
「でも」
手のひらを見る。………蒼い光
「これがあれば、何かあった時に分かるかもしれない」
「そうだな」
「だったら使い方を教えてください」
「……何?」
「この力をレオンハルト様が帰ってくるまでに、少しでも使えるようになりたい」
守られるだけじゃない。
もし、白い鳥が見せた未来が本当に近づいてきたら
「今度は私が守るから」
私は、手を握る。ローグ様はしばらく私を見ていた。
そして小さく息を吐く。
「……分かった」
「本当?」
「ああ。ただし、ベルン監視付き」
「やっぱり」
「当然だ」
「じゃあ、お願いします」
「それと…レオンハルトが戻った時に、私が殺されない程度にな」
「はい?」
ローグ様がほんの少し笑う。
「何で?」
「お前に無理させたと知ったら、あいつがうるさい」
「大丈夫ですよ」
口にして止まる。
「……無理しない程度に頑張ります」
言い直したらローグ様の目が少しだけ優しくなる。
「それでいい」
*
その頃、北の森。
まだ森の入口にも着いていない街道で
レオンハルトの胸元がわずかに光った。
「……?」
お守りを取り出す。守護紋の中心に淡い蒼色。
さっきよりはっきりしている。
触れると温かい。その瞬間、胸の中へ不思議な感覚が流れ込んだ。
……心配…でも、それ以上に強い意志。
『守る』
言葉ではない。ただそう感じた。
「……ミキ」
思わず、名前が漏れる。すると守護紋が、一度…脈打つように光った。まるで返事をするように…
その時だった。
前方を走っていた騎士が突然、馬を止めた。
「副団長!」
レオンハルトが顔を上げる。
「どうした!」
騎士が街道の先を指す。
「……あれを」
北の空、まだ森までは距離がある。
なのに…そこから黒い霧が街道を這うように、こちらへ向かってきていた。
そして、黒い霧の中……何かが歩いてくる。
人影?一人…いや……何人も…
「……剣を抜け」
レオンハルトの声が、一瞬で騎士のものへ変わった。
黒い霧の中から現れた者たち…
それを見たカイルが息を呑んだ。
「……第一調査隊」
連絡が途絶えたはずの騎士たち…
だが…その目は、全員赤く濁っていた。
レオンハルトの胸元でミキのお守りが、強く光った。
遠く離れた王城で、私の手のひらに浮かんだ守護紋も同じ瞬間、眩しいほどの光を放つ。
「……レオンハルト様?」
胸がざわつく。嫌な予感…
でも今度は、ただ怖がるだけではなかった。
私は、光る守護紋を強く握りしめた。
「……お願い」
届くかどうかなんて分からない。それでも、心の中で強く願う。
「守って」
その瞬間、北の街道でレオンハルトの身体を白い光が静かに包んだ……




