戦後処理 前半
一夜明け休息を取ったのち、荒れた戦場に机と椅子、ついでに床まで用意された場所に再び集まった4人。私の左腕も紫苑の足も直され、戦闘で傷ついているのは戦闘装束と戦場だけだった。
勝敗はすでに決まっているのに、さらに何を話すというのだろうか。
「さぁ、再びこうして集まったわけだが……、この戦争の勝者は我々、魔法使いで異論はないね?」
幻理さんが集まった人と顔を合わせるなり軽く言い放つ。魔法少女側がごねようとも結果は揺るがないとでもいうように。……まぁ、あの結果でごねてもどこの誰が見ても勝敗が明らかだということもあるだろうが。
「えぇ、魔災庁の上の方は何やら騒がしいみたいですが、我々陰陽寮もそちらと同意見です。」
三善さんは戦った当事者ではないからか、朗らかに答えているが、彼の上の人間はそうでもないらしい。
「私たち魔法少女は、負けました。えぇ、その結果についてとやかく言う気はありませんわ。」
紫苑さんも口では同意してはいるけど、やはり悔しさがあるらしく少し震えているような気がした。
幻理さんが懐からやや丸まった和紙を取り出す。この戦争直前に取り決めた規定を書いた和紙をするりと広げて、全員に見えるようにする。
「勝者の要求を敗者は可能な限り呑むこと。……つまり我々にはそちらに要求を伝える資格があるということだよ。」
「そしてそちら、魔法少女にはその要求を可能な限り呑む義務があると。……まぁ、そんなに怯えなくてもいいさ、私たちは蛮族じゃない、取って食ったりはしないよ。」
少し紫苑さんが怯えているのを気にしてか、冗談を言いながら幻理さんが机の上に新しい和紙を広げ、矢立から筆を執る。
「要求は、三つ。一つ、魔法少女を魔法使いが再教育……まぁ、指導をしたいって魔法使いが何名かいるんでね。二つ、魔法少女の育成環境の整備、まぁ、一つ目と被るような内容だがね。三つ、魔法少女の”起源”の研究……、これは私の弟子凝子からの要求だが、私らにとっても何かしらの利益があると見て入れただけさ、外道な扱いはしないと約束しよう。」
話しながら幻理さんがすらすらと和紙へ綴る。目の前の二人へ意識を向けていないのか、茫然としている二人の事は放置されている。
「ん、そんなにこんな要求が意外かねぇ?我々にも利益がある。そちらにも利がある。まぁ、お上の方はどうだか知らんが、魔法少女の殉職率も下がるからいいこと尽くめだろう?」
「いや……、私たちとしては有難いのですが。その、お金とかその辺が要求されたり、魔法使いのイメージ改善などが来るのかと……。」
紫苑さんが弁明するように、やや早口でしゃべり出す。魔災庁や魔法少女が想像していた要求の予想が思わずこぼれたのも、少し想定外の事だったからだろう。
「別に金なんて私らには、そこまでして欲しがる様なもんじゃないのさ。欲しけりゃ適当に蔵を漁って歴史的なもんを売り払えば良いだけさ。イメージ改善?して何の意味がある。政府の言ったことに間違いがあったのかい?わたしゃ、無いと思うね。」
少なくとも、私が見た魔法使いの中でお金に困っている人を見たことない理由が、はっきりとした。




