最終戦 守護者対贋作 その終
相手の消耗を待っている余裕は、もうない。それでも、望みをかけての持久戦か、余力を残さない短期決戦か。
――待ったところで、勝機は訪れない。ならば……、ならば短期で決める。
小雨を耐えていた花が崩れ始める。”花畑”は”城”に呑まれた、私を守る場所は無い。花畑を作っている余裕はないのなら、最低限の守り以外は捨ててしまえ。減衰されるのなら、肉薄すればいいだけ。
花を一つだけ残して魔力へと戻し、回収できた分を身体強化へと当て速度を得る。周りの景色が線のように見える中、私を捉え切れていない弾幕の中を縫うように進む。
途中にあった壁は、至近距離で魔力砲を放ち穴を開け通り過ぎる。出来るかどうか確認するよりも、出来る前提で突き進まなければいけない。止まったら的になるだけなのだから。
紫苑が見え、盾と杖が鈍い音をたてぶつかり合う。”弾幕は降り注いでいない”、つまり紫苑にもこの城の弾幕は当たるということ。
――周りの攻撃が激しいのならば、同士討ちの危険のある内側にもぐりこむ。
「……ずいぶんと、思いっきりが良いと言うべきか、恐怖心はどこへ捨ててきたんですか?」
紫苑が引き攣った笑みを浮かべながら盾越しに聞いてくる。……考えればこの程度の攻撃なんて時雨さん達との模擬戦で何度も見た。
「むしろこの程度で、止められると考えていたんですか?白金等級も随分とぬるま湯なようですね。」
盾と杖から不快な音がし始めたところで、腹部へ鈍い痛みと後方へ飛ばされる感覚が襲う。片足が蹴り抜かれた紫苑を確認するよりも前に、飛行術式を使い再び接近を試みる。
紫苑が剣を地面から引き抜き、構えるのを見ながら”不安定な術式”を杖の先へと展開させ、再びの激突が始まる。
杖と剣、負けるのならば杖だろうと子供でも分かるかもしれない。……”必要以上に魔力を溜め込んだ術式”これが壊されればどうなるのか、魔法を使うものなら理解できるだろう。
剣が杖へと当たった瞬間に、木の裂けるような音と共に空間を震わせるような魔力の音が微かに聞こえ、”花”を紫苑と私の間へねじ込む。
閃光と轟音が、感覚を奪う。防ぎ切れなかった部位の左腕の感覚も奪われていることを認識しながら砂煙と霧散し始めている魔力が晴れるのを待つ。
私の左腕は引きちぎれるように消し飛んでいたが、痛みはまだ来ない。アドレナリンの効果で感じていないだけだろうから、回復術式で少しでも回復をさせておく。……さすがに手が生えるような真似は私にはできないが。
爆発の中心から少し離れた位置に足があらぬ方向へと曲がった紫苑が見えた。意識もあり、盾も剣も健在で立ち上がろうとしていることは分かるが、自分自身の怪我の具合を認識出来て無さそうだった。
半ばほどから無くなった杖を投げ捨て、紫苑のいる場所へ歩いて向かう。諦めたのか、気絶したのか動かなくなった紫苑を確認しなければいけない。
攻撃術式をいつでも放てるように待機をさせながら、動かない紫苑へと近づく。気絶はしていないらしい、顔がこちらを向いているが、動かない。
「……まだ、続けますか?降伏すると言えば肉体の損傷ぐらいなら直せる魔法使いはそれなりにいるはずです。」
少しの沈黙が流れ、やや悔しそうに、自分の身体を確認しながら紫苑が言葉を続ける。
「……えぇ、降伏します。私の……我々の負けですね。」




