第二戦 業火対時 後半
砂岩が泡立つように溶け、ガラス化していく。
業火は、魔力砲が放たれた方角へまともに狙いを付けず発砲。当たれば御の字、当たらなくても牽制程度になればいい。そんな希望的観測の攻撃。
ただ、時雨さんはすでに其処にはおらず、”業火の後方”で魔法弾の雨をまた降らせる。最初の追撃よりも、弾幕は濃く、より正確に。
反射的。音か、気配か。業火の魔法障壁が辛うじて時雨さんの魔法弾を受け止める。ただ、長くは待たないと思う。
――攻撃に対して直角に受けたら、魔法少女の障壁程度、すぐに破けるだろう。
2秒経過。業火は、障壁での防御を諦め、時雨さんに対して横へ移動する。速い、ただし魔法少女の足としては。
移動。砂岩で出来た戦場では、多少走りやすい条件。それでも、業火にとってみれば、初めての経験。魔物から向けられた殺意ではなく。”人”による確実に殺すという意思を向けられた経験。
普段の業火を知らないけど、魔物との戦闘ではここまで追いつめられることは無かったのだろう。息は上がり、冷汗が頬を伝っている。
時雨さんの弾幕は業火の髪を掠めるように過ぎ去る。その一発一発が当たれば命を奪う。派手な爆発も音も少ない、けれども流れた弾が、砂岩を大きく抉り取る。
半円を描くように業火は、走る。魔法による身体強化によって、体力的には息切れしないだろう。それでも、恐怖からは逃げることができない。
3秒経過。業火は散発的に射撃を繰り返すが、もうすでにまともに狙いは定まっていない。それどころか手は震え、まともに構えられてすらいない。
時雨さんの弾幕はいつの間にか止んでいた。それでも、業火は”何か”から逃れるように走り、射撃を繰り返している。
……いや、走っているのは業火本人の認識だろう。実際にはほとんど歩いているのと変わらな速度。
「……はぁ。此処までだな。聞こえているかは知らんが、次で決めてやる。それまでに投降なり、戦い続けるなりすればいいさ。」
射撃されているのに、障壁すら張らずに、淡々と声を掛ける時雨さん。
≪切断 抜杖≫
杖の先から、大鎌のように魔力で造られた刃が展開される。
――まるで中世の死神が、この世に顕現したかのようだった。
業火は焦点の合わない目でただ立ち尽くし、手から銃が零れ落ちる。そして崩れるように膝をつき、両手を挙げる。
明らかな降伏。その動作が終わる寸前には、業火の首筋に時雨さんの鎌が添えられていた。
「……降伏します。――だから、殺さないで。」
絞り出す様にか細い声が、嫌に戦場に響く。




