第一戦 狼対星 その終
「へぇ……。」
凝子さんが銀狼から立ち上るオーラの様な魔力を感じ取り、目を細める。
「余剰魔力による魔力干渉……、副産物とはいえ知性無くして扱いこなしますか。……まぁ、獣では勝機を掴むことは出来なそうですが。」
≪多重 切り裂き 準備≫
わざとらしい声に出しての詠唱。凝子さんの左右に微かに空間が歪む。
銀狼が、警戒もせずに両手を振り上げ、凝子さんへ獣化した爪で引き裂きにかかる。
≪射出≫
動きらしい動きは無く、ただ声を発しただけ。不可視の刃が、迫る銀狼の両腕を切り飛ばす。血飛沫が銀狼の両肩から噴き出す。
「――アアアアアアアァァ!」
悲鳴が、戦場へこだまする。魔法少女が、画面の先で見ている人が息を呑むのを感じる。
「あぁ。やっぱり駄目ですか。そうですか、そうですか。理性を捨てるということは判断も捨てるということを認識してませんでしたか。残念です。」
凝子さんが、銀狼を冷めた目で見下ろし、観察する。脅威としてではなく、ただ望んだ効果が出なかった実験を見るように。
「ふむ……、これは戦闘不能でいいんですかね?此処から戦闘を続行させるのも酷なのでは?」
ぶつぶつと銀狼へと近づきながら凝子さんは思案する。
銀狼は、苦痛に顔を歪めてはいるけど、その眼には戦意が宿っており、ギラギラと凝子さんへ睨みを利かせる。
銀狼の目の前まで近づき、凝子さんがしゃがみ込み銀狼の状態を確認しようとした瞬間、銀狼が首筋を狙い噛みつこうとしてくるのを危なげもなく躱す。
「おぉ、怖い怖い。まだ戦おうとは、やはり理性の喪失は駄目ですね。魔物相手ならいざ知らず、対人戦闘では弱点でしかない。……少し眠っていてもらいましょうか。」
手に持った本で後頭部を叩き、脳を揺らす。銀狼が糸の切られた操り人形のように、力なく倒れ伏す。
「さてさて、さっさと回復させて、次の戦闘へ引き継がないといけませんね。」
淡い緑色をした魔法陣が数個展開され、銀狼の周りを囲む。魔法少女の使う回復魔法の術式と酷似しているけど、装飾の様なものが一切なく派手な演出もない。
――回復魔法の効果は、魔法少女の物よりもはるかに効果が高かった。
目に見える速度で腕が再生していき、体に残る細かな傷さえも跡が残らないほどに修復されていく。……古傷の跡まで消えていくのだから驚きだ。
「魔法少女の方、この子をさっさと回収してくださいな。……あぁ、しばらくすれば目が覚めるとは思いますが、あまり無理はしないように聞かせといてくださいね。回復したとはいえ、体力は消耗しているので。」
凝子さんは駆け寄る魔法少女にそれだけ伝えると、さっさと魔法使い側、私たちの方へ帰ってきた。




