戦争前の話し合い その2
席に着いた幻理さんが、ちらりとテレビ局のカメラを一瞥する。
「あのテレビ局もつれてきな。ただし、質問も発言も認めないがね。
……ただ、この光景を民へ見せるんだよ。そこに情報屋の意見は要らない。」
三善さんが携帯端末を操作して、しばらくすると記者とカメラマンがやってくる。
記者が何かを口走ろうとした瞬間、幻理さんと三善さんがほぼ同時に制止を掛ける。
「貴方らには質問する権利も、発言する権利もない。あるのは見る権利だけだよ。」
「すいませんが、この場では報道の自由は無いそうです。今しばらくは堪えてください。」
記者の人は何か言いたそうにしていたけど、引き下がった。
「この戦争は、私たち魔法使いと貴女方魔法少女が行う戦争である。行政が何と言おうが構わんが、戦う権利は魔法少女のもんだ。」
幻理さんが、魔法少女の森崎さんを見て問いかける。
「魔法少女は、自らの意志で此処に来たのかい?此処にいる全員が。
……己の意志じゃなく来たやつがいるのなら、帰してやんな。――邪魔だよ。」
森崎さんが少し、息を呑み、言葉を紡ぐ。
「全員の意志は、私にはわかりません。でも、私は……私の意志で此処にいます。」
幻理さんが懐から高そうな和紙を取り出し、机に三枚広げる。
「そうかい。じゃぁ、こちらの要求も検討できそうだね。
……戦争の方法について決めようか。こちらの提示するのは……、一騎討だよ。別に一本勝負じゃなくてもいい、三回戦やって、勝ちが多い方が勝者でもいいのさ。」
「一騎討……ですか?戦力のぶつけ合いでもなく?」
森崎さんが、和紙を一枚受け取りながら、不思議そうに聞いてくる。
「あぁ、魔法少女がどれだけ居ようが、戦闘能力の差は補えないだろう?
……それに、無意味に命は散らすもんじゃない。ただの老婆心だよ。」
「まだ我々は憎しみ合う”敵”じゃない。……まぁ、憎しみを抱くのも少なからず居るのかもしれんが、根切りにするほどの事態じゃない。」
森崎さんと三善さんの目が見開かれる。戦争を、その先の話が今、ここで出されている。
「……わかりました。お気持ち感謝します。」
安堵感と、悔しさが滲むような声と表情で森崎さんは答える。
敵と教えられた相手に、配慮されたその事実が心を締めているのだろうか。
「その紙にはこれから話すことを……三善と詩織が書きな。最後の一枚は双方を確認してから書くとしようか。」
矢立……古い筆記具だったと思うそれを私と三善さん、それぞれ一つ渡される。
……え?筆で書けと?
目の前で矢立を受け取った三善さんは慣れた手つきで準備を整える。
「あの……、幻理さん?これどうやって使うんです?」
「ん?あぁ、詩織さん。矢立は此処のふたを開ければ……、使えますよ。」
幻理さんが答える前に、三善さんが渡された矢立を使い解説してくれた。
細い筆と綿に染みこませた墨が姿を現す。
「準備が整ったところで、始めようか。……まず、形式は一騎討で問題ないね?不満があるのなら、ここで言いな。」
「そこに問題はありません。……できれば三回戦行ったうえで勝敗を決める方法でお願いします。」




