格付け
「おっと。その前にだ、やらねばならんことがあったね。」
幻理さんがくるりとこちらへ振り返り、私を視る。
「詩織は、まだ階位を持っていない。まぁ、本来なら魔法使いに成った時点で付けるのが普通なんだがね。ちょっと、異例過ぎたからまだ済んでなかっただけだ。」
階位。……理との距離を示しているって、言っていたもの。
「交渉役の見届け人が格の一つもないようじゃ、格好がつかないからね。
本来なら師匠か引き取り手が授けるのが習わしではあるんだけど、箔を上げるのなら私が授けた方が良い。」
白旗を括り付けた短い竿を地面へと刺し、私に座るように促す。
幻理さんが私の頭に、手が触れるか触れない距離にかざす。
「幻影の魔法使い。玄位が一人、幻理が授ける。月城詩織、汝を端位の階位と認めよう。
……異のある者は、名乗りを上げたし。」
気が付けば、後ろにいる七十もの魔法使いの視線は、私たちに降り注いでいた。
「……異は無しと。これで能力は兎も角、立場的には正式に魔法使いの末席となったわけだ。
――改めて、ようこそ。月城詩織。」
魔法使いの一員となった。喜ばしいのか、悲しいのか。
私には、分からない感情が溢れる。
幻理さんが少し前を歩き、私が付き従う。
緩く窪んだ砂地を魔法少女の陣営を目指し、歩く。
「さぁ、堅苦しいのはいったんここまでだよ。
……詩織は、交渉の場では特に話さなくてもいい。しゃべりたければ喋ってもいいけどね。」
見届け人だからしゃべる必要は無い。確かに私がしゃべったところで何も変わらない。
――戦争が始まるのは”決定事項”だからだ。
「分かりました。……ただ、私は具体的には何をするためについていけばいいんですか?」
「見届けろ。……あー、交渉前に名乗りは上げてもらうか。
――自分が何者かを宣言することが、仕事だよ。」
幻理さんは、私に”名乗り”を上げろという。
”魔法”を教わり、”階位”を与えられた私に。
「気になったことへ質問もしていい。ただ、交渉は私の役だ。
私が戦争を引き受け、集結させた。ならこれは私の役だ。
まぁ、交渉次第じゃぁ、その場で開戦もありうるから戦えるようにだけはしときな。」
魔法少女と魔法使いの戦争。その交渉まであとわずか。




