戦争の前の話
元春日部。未だ淀んだ魔力渦巻くこの地にて二つの陣営がゆっくりと、
しかし着実に集結し始めている。
崩れて窪地となった両端にて、片側は緊張が走りもう片側は緊張感のない会話が響く。
本来なら、私は反対側の魔法少女側に居たのだろうか。今となっては分からない。
周りには魔法使いが、長い竿から白地に様々な紋章が描かれた長い旗を垂れさせている。
自身の固有魔法をモチーフにしているらしい紋章が、”七十”ほど。
地面に突き立ててあるもの、担ぐように靡かせているもの。
「さて、詩織。これから戦争だが、緊張はしているな?」
時雨さんが時計のような紋章を地面に突き立て、こちらへ向かってくる。
……緊張は、あまりないのかもしれない。
――こちらへ魔法が届くところが予想できないから。
「いえ……。あまり緊張はありません。魔法少女が。
ざっと千人ぐらいしかいないのに、こちらまでたどり着けそうなのは数人でしょうから。」
千人の魔法少女。半分以上は鉄級か銅級くらい。
……魔法使いなら敵にすら数えられない戦力なのではないだろうか。
「面白いことを言うねぇ。集団で戦うならそうだろうさ。
――これから提案するのは一騎討だよ。」
幻理さんが、これだけの戦力を用意しておきながらとんでもないことを言い放つ。
「一騎討ですか?これだけ魔法使いを集めておいて?
……ならあの話し合いの後にでもすぐ戦ってもよかったのでは?」
頭数を集めた意味が分からない。物見遊山にでも誘ったのだろうか?
「まぁまぁ、詩織ちゃんの言うことは分かりますが、何事にも格式は必要ですよ?
この戦いを見届ける魔法使いが、これだけいるのも、わざわざ陣を張っているのも。」
凝子さんが星が複数個描かれた旗を担ぎながらこちらを見る。
「まぁ、あちらの出方では集団で戦うことにはなりますが……。
それにしても格式は重要ですよ。特に今の世の中じゃ、こっそりやるより大々的にやった方が良い。」
「それに、あちら側にはテレビ局もいるみたいですし、視られていることを意識しなきゃ後々面倒なんですよ。」
格式。世間体。魔法使いがいままで意識していなかったであろうことを意識しないといけなくなる。確かに考えれば納得できる。
「あぁ、交渉は私と……、詩織にも来てもらおうか。その方が面白い。」
幻理さんが短めの棒に白い旗を括り付けながら話しかけてくる。
「さぁ!前哨戦の交渉と行こうか!」




