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原石の軌跡――新しき力と古の知恵  作者: 永火
第3章 魔法大戦
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山の翁 その1

山を登る。


何もない山の中、一歩進むごとに道が造られていく。

標高はそこまで高くないけど、慣れない山道。


少し疲労がたまり始めてきた頃を見計らうように、切り株へと導かれていく。

少しの休息……、何処に住まいがあるのかは知らないけれど、

山の中腹は越えたところだろう。


休息を終え、少し進んだ先に倒木で造られた橋のかかった川が見える。

その先、茅葺き屋根の山小屋が見え、その前に腰の曲がった老人が立って

――こちらを視ている。


「よく来たね。……まぁ、まずは上がりなさい。」


老いた人特有の弱弱しい声ではなく、意志の宿った声が近寄っていないのに

すぐ近くで聞こえた。


山小屋の中は、雑多な物が積まれ、少し独特の匂いが鼻腔をくすぐる。

火のついていない囲炉裏の先に、老人は長杖を片手に静かに座っている。


「幻理の所の子か……。混ざり者の弟子とは……。

いや、すでに成っているのか?何とも面白い。」


こちらを観察する目。凝子さんと似ているようで少し違う。

視られているのが”外”ではなく、”内”を視られているような。


「初めまして、結城時雨の元で教わっている月城詩織です。」


「……いかんな、挨拶を忘れるとは。これだから長く生きるといかん。

初めまして、儂は……山の翁とでも呼んでくれ。

……本名など、とうの昔に忘れてしもうた。」


山の翁と名乗った老人は、少し恥ずかしそうに頭を掻く。


「幻理の所の子かと思ったが、しぐ坊の所だったか。

あやつも弟子を取ったか……、そうかそうか。」


しぐ坊……、時雨さんの事だろうか。

また、時雨さんの知らないことが出てきた。


外から飛行術式の飛翔音が耳へと届く。

――音が大きい。魔法少女の飛行術式?


「あぁ、そう警戒しなくてもいい。

君の同類……とでも呼ぼうか。」


飛翔音が、小屋の近くで途切れる。

魔法少女よりは洗練され、魔法使いよりも拙い魔力が視える。


「おじいちゃーん。誰か来てるのー?」


少女の声。明るく、元気のある声が小屋の入り口から響く。


「おー、いらっしゃい。こっちへおいで。」


孫を相手するように、老人は少女に手招きする。

血縁関係……、ではなさそう。どちらかというと師弟のような。


いや、師弟にしては少し違うような……?


「あれ?此処に魔法少女……?

――違う。……貴女は魔法少女じゃない。」


「私が、成りたくても、成れない魔法使いに成った。

……月城詩織。”視える”世界はどんな物?」


視える世界?……やっぱり魔法少女は、魔力が視えていない?

視えない方が普通?なら、私は何故、視える?


「はぁ、花梨(かりん)や、そこまで邪険にしなくてもよいだろうに、

詩織は、詩織で思考の渦へとはまるか……。何とも、若いとは難しいものよ。」

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