回答用紙 その3
「あー、どっちの時です?」
「最近の方だな。途中で行方不明扱いにしたから持ってても咎められんだろう。」
別の罪では咎められると思います。
「師匠、弾丸を消したのは……あー、候補が多すぎる。
んー、消え方的に削り取った感じではないし、干渉かな……
――幻影で世界ごと騙した?」
世界干渉……時雨さんが燃費が悪いと言っていた。
「それって魔力の消費が悪いって時雨さんが言ってませんでした?
……また部分的な仕様で干渉したんですか?」
「詩織の方が視えてるじゃないか、バカ弟子。世界ごと騙すなら、
――拳銃ごと無かったことにするさ。」
「まぁ、それを認識できるかは別問題だけどねぇ。」
幻理さんが愉快そうに笑う。
「あー、確かにそうですね。存在してなければ観測できないですもんね。
いや、いやいや時雨は偶に観測してますよね⁉あれはどうやって……」
「その程度自力でたどり着け、天才様?」
時雨さんも愉快そうに笑う。
「……痕跡?でも存在しなくなった後には無さそう?魔力痕も視えない。
方法は分からないけど自己観測の保存?
でもそれの持ち越しはどうやって?」
凝子さんがその場でくるりくるりと回りながら、思考の渦へと潜る。
「……結論は出ないですね。……詩織ちゃんは何が視えてました?」
「私は……、時雨さんも幻理さんも固有魔法は違えど、工程が違うだけで
結果は同じ事が出来るのでは?だから観測が可能かと……?」
「完全に同じことは出来ないだろうねぇ。ただ、結果だけを同じにすることは
――”出来る”。その観測方法は自分で到達しな。」
幻理さんが答えのようで答えじゃない回答をする。
「……なんで時雨はそこまで出来てるのに、”玄位”に至ってないんです?
普通に先を視てますよね?なんで”典位”なんです?」
「んー、まぁまだ視えてるだけだからだな。それに俺は、戦闘が主体だ。
研究もしているがそれだけじゃ意味がないだろう?」
「あー、そういえばそうですね。時雨の師匠も戦闘主体でしたっけ?
同じ”典”の。会うことは無かったですけど、それなりに強かったとか。」
時雨さんの師匠……会ったことないけどどんな人なんだろうか。
「時雨さんの師匠って、今は何をしているんですか?」
少し場の空気が重くなる。
……もしかしたら聞いてはいけない事だったかもしれない。
「師匠は……もういないよ。だいぶ前に”帰理”を果たした……。
あぁ、そうかそうか、帰理について話したことなかったな。」
「帰理ってのはだねぇ……まぁ、簡単に言ってしまえば”死”だよ。
満足した魔法使いの末路さね。何で満足するかは当人次第さ。」
幻理さんが続けるように言葉を紡ぐ。
「ただ、あいつの”魔法”はまだ生きているのさ。
これまでも、これからも”魔法術式”がある限りこれだけは変えられないのさ。」
術式と何か関係があるのだろうか……。
「魔法術式の根源は、あいつの魔法だよ。魔法弾を創るだけの固有魔法。
時雨の師匠は新しい魔法使いの基礎の親さ。
――私とあいつの合作なんだよ、魔法術式は」




