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第43話:NPC兵士たちとの「最後の会話」


WWOの最終決戦を前に、凌はリードAIとジェニングスAIへの対策を練り上げ、自身のVRアバターを限界まで強化した。準備は万端。あとは、決戦の地へと向かうだけだ。

「Ryoo、最終決戦ステージへの転送準備が完了しました。転送を開始しますか?」 ルシアの声が、凌の脳内に響く。彼女の声は、どこか厳粛さを帯びていた。

「ああ、頼む」 凌がそう答えると、視界が白く輝き始めた。しかし、次の瞬間、凌が転送されたのは、最終決戦の舞台ではなかった。そこは、これまでのWWOでの戦いを共にしてきた、日本軍NPCたちの野営地だった。

炎が燃え盛る焚き火の周りで、疲弊した様子の日本兵NPCたちが座り込んでいる。彼らの顔には、これまでの激戦で負った傷や、拭いきれない疲労の色が浮かんでいた。彼らのほとんどが、凌がこのステージに初めてログインした時から共に戦ってきた、見慣れた顔ぶれだった。

「Ryoo……?」 高倉陣NPCが、焚き火の向こうから凌の姿に気づき、静かに立ち上がった。彼の表情は、以前のようなAI特有の冷静さを保ちながらも、その奥に、どこか深い感情を秘めているように見えた。

凌は、彼らが「NPC」であり、高度なAIによって動かされていることを知っている。しかし、これまでの戦闘で、彼らは凌にとって、単なるプログラム以上の存在になっていた。特に、山田軍曹や田中二等兵といった仲間たちの「死」を経験した今、彼らとの別れが、凌の心を締め付けた。

「Ryoo、最終決戦を前に、話しておきたいことがある」 高倉NPCは、そう言って凌に歩み寄った。 「我々AIは、システムに与えられた『任務』を遂行する存在だ。このフィリピン戦線で、米軍を食い止め、祖国のために戦う。それが、我々のプログラムされた『運命』だった」 彼の声には、AIとしての限界と、それを超えようとするような、微かな「意思」が感じられた。

「だが、お前が来てから、このステージの『運命』は、大きく変わった。我々の予測を、良い意味で裏切り続けてくれた」 高倉NPCは、静かに言った。 「お前は、我々の『敗北』という定められた未来を、打ち破ってくれた。そして、ルシア・バヤニ……彼女の『希望』をも、現実へと引き寄せた」 彼の瞳が、凌の『妄想兵装』から放たれる青い光を映し出す。

「我々はこのステージから離れられない。だが、お前が勝ち取った『改変された歴史』は、確実にこの世界に残るだろう。それは、我々が戦い続けた意味となる」 高倉NPCは、敬礼の姿勢を取った。それは、AIのルーチンによるものだけではない、凌への深い「感謝」と「敬意」が込められているように見えた。 「Ryoo……WWOの、そしてこの世界の未来を、頼んだぞ」

他のNPC兵士たちも、静かに凌を見つめていた。彼らの瞳には、高倉NPCと同じように、凌への信頼と、未来への希望が宿っている。 「あんたのおかげで、俺たちは最後まで戦い抜けたぜ、兄貴!」 「この命、無駄じゃなかったって思えるよ、Ryooさん!」 彼らの声が、凌の心に染み渡る。

(みんな……) 凌は、彼らがAIだと分かっていながらも、涙が込み上げてくるのを感じた。 ニートとして現実世界で誰にも必要とされなかった自分が、ゲームの中で、これほどまでに多くの「命」(たとえそれがAIであったとしても)に、感謝され、希望を託されている。 この感覚は、何物にも代えがたい「現実」だった。

「Ryoo、転送時間が迫っています。最終ステージへ向かいます」 ルシアの声が、凌を現実に引き戻した。 凌は、高倉NPC、そして他のNPC兵士たちを、一人ずつしっかりと見つめた。 「……ありがとう。そして、必ず、この世界の悲劇を終わらせてやる」 凌は、力強くそう告げると、彼らに背を向けた。

彼の視界が、再び白く輝き始める。 WWOでの戦いは、彼に多くのものを与え、そして多くの「犠牲」を伴った。 その全てを胸に刻み、凌は、最終決戦の地へと転送されていった。 WWOの歴史、そしてAIたちの未来をかけた、最後の戦いが、今、幕を開けようとしていた。

【第43話・了】


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