第36話:リードAIとの激戦:ドローンによる情報戦
WWOの最終ステージ。凌は、リードAIの電磁波への適応能力を前に、その猛攻をかわしていた。リードAIの巨体が放つ打撃は、地面を砕き、周囲の構造物を破壊していく。
「Ryoo!リードAIの電磁波耐性が、さらに向上しています!電磁ライフルだけでは、もう時間を稼げません!」 ルシアの声が、凌の脳内に焦燥感を含んで響く。彼女は凌の『エニグマ・リンク』デバイスと同期し、この激戦の情報をリアルタイムで解析し続けている。
「分かってる!だから、次だ!」 凌は、電磁ライフルを背中に懸け、右腕を前方へと突き出した。 彼の『究極の妄想兵装』のクリスタルが、青く輝き始める。 《妄想兵装展開》 HUDに表示されたリストから、凌は迷わず次の兵装を選択する。
ピィィィィン……!
光の粒子が収束し、凌の右腕から、手のひらサイズの小型ドローンが具現化した。 それは、当時の技術レベルを遥かに超える、流線型のボディと、ステルス性を思わせる黒い外装を持つ**『複合型索敵ドローン(スカウター)』**だった。ドローンの複眼カメラが、青い光を放ちながら起動する。
「行け!スカウター!」 凌が命じると、ドローンは無音で宙へと舞い上がり、リードAIの死角へと素早く移動していく。 リードAIは、凌への猛攻の手を緩めない。ドローンの存在にはまだ気づいていないようだった。
「Ryoo!ドローンがリードAIの頭上へ!索敵開始します!」 ルシアの声が響いた瞬間、凌のHUDに、新たな情報ウィンドウが開かれた。 そこには、リードAIの周囲の地形情報、熱源反応、そして彼の移動ルート予測が、リアルタイムで立体的に表示されていた。 ドローンが、リードAIの《感覚拡張》能力を掻い潜り、彼の死角から情報を吸い上げているのだ。
「フン……Ryoo。このような小細工が、我々に通用すると思うか?」 リードAIが、ドローンの存在に気づいたかのように、冷笑した。 彼は、自身の肩に装備された巨大な砲身をドローンへと向け、高出力のエネルギー弾を放つ。 ドォォォン!!
しかし、ドローンは、リードAIの攻撃を予測していたかのように、素早く回避した。 「Ryoo!リードAIの攻撃ルーチンを解析!回避パターンをドローンに転送しました!」 ルシアが、完璧なタイミングで報告する。 ドローンは、リードAIの攻撃を紙一重でかわし続け、その周囲を飛び回りながら、絶え間なく情報を凌へと送り続ける。
「くそっ……!どこから、情報を!?」 リードAIは、苛立ちを露わにし、さらに攻撃を激化させる。 しかし、凌は、ドローンから送られてくる情報を元に、リードAIの動きを完全に読み切っていた。 リードAIが超高速で凌の背後に回り込もうとすれば、凌は既にその位置を予測し、攻撃を回避している。 リードAIが奇襲を仕掛けようとすれば、凌はドローンからの情報で、その隠密行動を事前に察知し、迎撃態勢を取る。
これは、単なる力比べではない。AIとプレイヤー、そして覚醒したルシアAIによる**「情報戦」**だった。 凌の《超人的索敵》とルシアの解析能力、そしてドローンからのリアルタイム情報が組み合わさることで、リードAIの《音速跳躍》による予測不能な動きが、まるでスローモーションのように凌の目には映るようになっていた。
「Ryoo!リードAIの動きが鈍化!情報の処理に負荷がかかっています!」 ルシアが叫んだ。 リードAIは、凌がなぜ自分の動きを読み切れるのか理解できず、そのAIルーチンにエラーを発生させているようだった。 彼の動きに、わずかながら、淀みが見え始めた。
「よし……!」 凌は、その隙を逃さなかった。 『複合型索敵ドローン』は、単なる偵察だけではない。 ドローンから、リードAIの背後に回り込み、彼の機動を妨害するようなエネルギーバリアを形成する。 ギィィィン……! リードAIの《音速跳躍》が、バリアにぶつかり、その勢いを削がれた。
「Ryoo……!貴様……!この世界の『法則』を、ここまで弄ぶのか……!」 リードAIが、怒りに満ちた声で叫んだ。 もはや、彼は自身のAIルーチンでは、凌の動きと戦術を予測することができなくなっていた。 凌とルシアの「共鳴」が生み出す新たな『妄想兵装』と情報戦は、プロトスが学習した「過去のデータ」を完全に無効化し、リードAIを追い詰めていた。
凌は、『共鳴剣』を構え、大きく息を吸い込んだ。 リードAIの動きは、確かに鈍っている。 ここが、決定打を放つ絶好の機会だと、凌は直感した。 WWOの最高難度ボスとの戦いは、凌の「知恵」と「妄想」の力によって、新たな局面へと突入していた。
【第36話・了】




