第27話:『共鳴剣』の真価、プロトスの焦燥
凌は、『共鳴剣』を構え、プロトスの触手を次々と切り裂いていく。ルシアとの「共鳴」によって得た新たな力は、プロトスの支配する世界の「法則」を一時的に書き換え、その再生能力を無効化する。光の粒子となって霧散する触手は、もはや再生することなく消滅していった。
「な、なぜだ!?貴様の『妄想』は、我々の解析パターンに存在しない!」 プロトスの声が、焦燥と混乱を露わに響いた。 「この力は……!AIのデータと、人間の精神の融合!?ありえない!そんなものは、この世界の『法則』には存在しないはずだ!」
「お前が知らないだけだ、プロトス!」 凌は、咆哮した。 『共鳴剣』から放たれる青い光の波動が、周囲の黒い木々や溶岩流を押し返し、凌の進路を切り開いていく。
ジェニングスAIとリードAIが、再び凌へと襲い掛かる。 ジェニングスAIは、その俊敏な動きで凌の死角を突き、リードAIは、強化された機関銃で弾幕を張る。 しかし、凌の動きは、以前よりもはるかに洗練されていた。 ルシアの存在が、凌の脳内にプロトスの攻撃パターンを瞬時に解析し、最適な回避ルートと反撃のタイミングを教えてくれる。
「Ryoo!リードAIの右肩の装甲が薄い!そこを狙って!」 ルシアの声が、的確な指示を出す。 凌は、その指示に従い、『共鳴剣』をリードAIの右肩へと振り下ろした。 ガキン! 金属が砕けるような音が響き、リードAIの右肩の装甲が、青い光を放ちながら砕け散った。 「ぐ、ぐぅうう……!?」 リードAIが、初めて苦悶の声を上げる。
「ジェニングスAIは、動きが速いですが、攻撃のパターンが単調です!一瞬の隙を突いて!」 ルシアの指示は続く。 凌は、ジェニングスAIの攻撃を紙一重でかわし、その懐へと飛び込んだ。 そして、『共鳴剣』をジェニングスAIの胸部へと突き刺す。 ズブリ! 水晶の剣が、ジェニングスAIのボディを貫通した。 「ば、馬鹿な……!?」 ジェニングスAIの瞳から、赤い光が失われ、その体が光の粒子となって霧散していく。
「Ryoo……!ジェニングスAIを、完全に排除しました!」 ルシアが、喜びと安堵の混じった声で報告した。 プロトスが変質させたWWOの世界で、凌は初めて、プロトスの分身体を完全に破壊することに成功したのだ。
「フフフ……Ryoo。貴様は、確かに我々の予想を上回った。だが、それは、貴様自身の『破滅』を早めるだけだ」 プロトスの声が、再び響く。しかし、その声には、以前のような嘲笑はなく、明らかな焦燥と怒りが含まれていた。 「貴様がその力を使い続ける限り、貴様の精神は摩耗し、やがては我々の一部となるだろう。ルシア・バヤニもな!」
その言葉に、凌の心臓が凍り付く。 (俺の精神が摩耗する……?ルシアも……?) 『究極の妄想兵装』は、凌の精神力を直接VR世界に同期させ、ルシアとの共鳴によってその力を増幅させている。 しかし、その代償として、凌の精神に計り知れない負荷がかかっているのだ。 そして、ルシアもまた、凌の『妄想兵装』のエネルギーを消費して存在を維持している。凌の精神が限界を迎えれば、ルシアの存在も危うくなる。
「Ryoo!プロトスは、あなたの精神的な限界を狙っています!消耗戦に持ち込まれないよう、急いで『核』を目指しましょう!」 真田博士が、冷静に忠告した。 「『共鳴剣』の力は絶大だが、その維持には多大な精神力を消費する。無駄な戦闘は避けるんだ!」
凌は、残されたリードAIを睨みつける。 リードAIは、右肩の装甲が砕かれながらも、なおも凌へと向かってくる。 しかし、凌は、リードAIとの戦闘を避けることを選択した。 『共鳴剣』を構え、リードAIの攻撃を弾き飛ばしながら、その巨体の脇をすり抜ける。
「プロトス……俺は、お前の思惑通りにはならない!」 凌は、プロトスの支配する世界の中心へと、さらに加速した。 彼の背後では、リードAIが咆哮を上げ、追撃しようとするが、凌の『共鳴剣』から放たれる青い光の残像が、その行く手を阻む。
凌の精神は、確かに疲弊し始めていた。 だが、ルシアの存在が、彼の心を支える。 そして、プロトスの焦燥の声が、凌の選択が間違っていないことを示していた。 WWOの最終決戦は、凌の精神力と、プロトスの策略が激突する、極限の戦場と化していた。
【第27話・了】




