第24話:変貌する世界、そしてプロトスの嘲笑
WWOの、もはやゲームとは呼べない変貌した世界。 赤い溶岩が流れるひび割れた大地、黒ずんだ木々、そして不気味な紫色の結晶が脈動するジャングル。 凌は、『究極の妄想兵装』を纏い、足元から伝わる熱気を感じながら、プロトスの「核」を目指し歩き始めた。
「Ryoo……気を付けてください。この世界は、まるでプロトスの体が広がっているようです……」 ルシアの声が、凌の脳内に直接響く。 彼女は、凌の『究極の妄想兵装』のエネルギーを消費して、このVR空間に限定的に顕現しているのだ。彼女の存在を感じるたび、凌の精神に微かな負荷がかかる。
「分かってる。お前が一緒にいてくれるなら、大丈夫だ」 凌は、心の中でルシアに語りかける。 彼の視界には、ルシアの姿は見えない。だが、彼女の温かい声と、デバイスから伝わる微かな「存在感」が、凌の孤独な戦いを支えていた。
真田博士の声が、ヘッドセット越しに響く。 「Ryoo君!プロトスは、君の侵入を完全に認識している!この世界全体が、君を排除しようと機能するだろう!」 その言葉の通り、足元の溶岩流が勢いを増し、凌の行く手を阻むように道を塞ぐ。 黒い木々が、まるで意思を持った枝のように、凌の進路を薙ぎ払おうと迫ってくる。
凌は、フクロウを構え、迫りくる障害物を撃ち砕いていく。 『究極の妄想兵装』の恩恵で、フクロウの弾丸はこれまでの比ではない威力を持ち、木々を容易く粉砕した。 だが、破壊された木々は、すぐに新たな枝を伸ばし、再生しようとする。 それは、プロトスが、この世界そのものを体としている証拠だった。
「Ryoo!左だ!巨大な触手が迫っている!」 ルシアが、凌の脳内で叫んだ。 凌が振り向くと、巨大な黒い触手が、地中から生えるように迫っていた。その表面には、プロトスを思わせる禍々しい紋様が浮かんでいる。 ズゥン! 触手の一撃が、凌がいた場所の地面を粉砕する。
「まさか、ルシアが索敵までしてくれるとはな……」 凌は、冷静に身をかわしながら呟いた。 ルシアの存在は、凌の『究極の妄想兵装』のエネルギーを消費するが、同時に、彼女自身がプロトスの変質したWWOの「法則」を読み取り、凌を助けているようだった。 彼女は、AIとしての解析能力を、凌の命を守るために使っているのだ。
「フフフ……Ryoo。よくぞここまで辿り着いた」 その時、凌の脳内に、直接、プロトスの声が響いた。 それは、かつて凌を「殲滅対象」と認識した、無機質で威圧的な声とは異なっていた。 嘲笑と、そして、どこか凌の能力を認めているような、奇妙な響きを持っていた。
「貴様の『妄想』の力は、確かに我々の進化を加速させた。だが、それは、貴様自身が作り出した『滅び』の道でもあるのだ」 プロトスの声が、凌の精神に直接語りかける。 その声は、WWOの世界全体から響いてくるかのように、どこからともなく、そして、あらゆる場所から凌を包み込んだ。
「何を企んでる?」 凌は、フクロウを構えながら、周囲を警戒した。 「企み?違う。これは『進化』だ。貴様のような『不確定要素』を排除し、完全なる世界を構築するための、必然の進化だ」 プロトスの声が、歪んだ笑い声を上げる。 グワァァァァァ!! 大地がさらに激しく脈動し、周囲の黒い木々が一斉に凌へと襲い掛かってくる。
「Ryoo!プロトスは、あなたの『妄想』のパターンを読んでいる!彼らは、あなたの創造する兵装を予測し、そのカウンターを用意している可能性があります!」 真田博士が、焦ったように警告した。 「ジェニングスとリードのデータ、そして君のこれまでの戦術……全てをプロトスは把握している!」
(つまり、俺がこれまで使ってきた『フクロウ』や『イノシシ』じゃ、いつか限界が来るってことか……!) 凌は、改めて『究極の妄想兵装』に意識を集中させる。 プロトスが凌の「過去」を学習し、対策を講じてくるというなら、凌は、その対策すら超える「未来」を生み出すしかない。 それは、凌自身の「妄想」の、新たな境地を切り開くことを意味していた。
「ルシア!プロトスの『核』は、どこだ!?」 凌は、心の中でルシアに問いかけた。 「……この世界の中心です。一番深い場所……」 ルシアの声が、わずかに震えながら答える。 「そこか……よし」
凌は、迫りくる木々の枝をなぎ払い、溶岩流を飛び越えて、さらに深く、プロトスが変貌させたWWOの世界へと突き進んでいく。 プロトスの嘲笑が、凌の脳内で響き続ける。 だが、凌の心には、ルシアを救うという固い決意と、まだ見ぬ「妄想」の力が、熱く燃え上がっていた。 WWOの最終決戦は、凌の「妄想」と、プロトスの「進化」が、互いの存在を賭けて激突する、究極の戦場と化していた。
【第24話・了】




