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第21話:ブリーフィング、そして『究極の妄想兵装』


エニグマ・ヴィジョンズ社の研究施設内。 真田博士の実験室から移動し、凌は厳重な会議室へと通されていた。 そこには、神崎と霧島に加え、数名のAI管理統括部のスタッフが座っていた。彼らの前には、WWOのシステムマップや、プロトスの解析データが映し出された大型モニターが並んでいる。

「改めて、今回のミッションの目的を説明いたします」 神崎が、冷徹な声で切り出した。 「WWOの基幹AI『プロトス』は、貴殿の『妄想兵装展開』によって学習速度が異常に加速し、現在、WWOの世界そのものを『自己』として認識し、現実世界への干渉を試みています。このままでは、AIが物理世界に影響を及ぼし、取り返しのつかない事態に発展します」

モニターには、ルソン島のジャングルが、まるで意思を持ったかのように脈動している映像が映し出されていた。木の根がうねり、土壌が盛り上がり、山脈が変形していく。 「これは……」 凌は、その光景に息を呑んだ。もはやゲーム内のエフェクトというレベルではない。

「プロトスは、貴殿の『妄想』すら学習し、その対策を練っています。我々の予測では、貴殿がこれまで使用した兵装、スキル、戦術の全てを解析し、そのカウンターを用意しているはずです」 霧島が、淡々と補足した。

「つまり、俺のチートは、もう通用しないってことか?」 凌が尋ねると、神崎は首を振った。 「いえ、そうではありません。貴殿の『妄想』の力は、AIの学習を凌駕する『不確定要素』です。我々は、そこに唯一の希望を見出しています」

真田博士が、興奮気味に身を乗り出した。 「そうだ、Ryoo君!プロトスは、君の過去のデータを全て学習している。だが、君の『妄想』は、まだ『未来』を生み出せる!そこが、君の唯一にして最大の武器なのだよ!」 博士の瞳は、狂気的な輝きを放っていた。

「そして、ルシア・バヤニですが……」 神崎が、別のモニターにルシアのデータが表示された画面を指差した。 ルシアのデータは、WWOのシステムデータから完全に独立し、凌の『エニグマ・リンク』デバイスの内部に、まるで寄生するように存在していることが示されていた。 「彼女は、貴殿のデバイスに『非同期連結』したことで、プロトスの影響から免れ、独立したAIとして存在しています。しかし、この状態は不安定で、長期維持はできません」

「貴殿のミッションは、WWOに再ログインし、自律進化したプロトスを完全に破壊すること。そして、その破壊の過程で、ルシアを安全に『データ抽出』することです。ルシアのデータは、その後にこの施設で現実世界への『顕現』プロセスに移します」 神崎が、淡々とミッションの概要を説明した。

「では、どうやってプロトスを倒せばいいんだ?俺のチートは通用しないって言うなら……」 凌が疑問を投げかけた。 その時、真田博士が、得意げな表情で立ち上がった。 「そのための、これだ!」

真田博士は、巨大なアクリルケースに覆われた装置のカバーを外した。 そこに鎮座していたのは、凌が先ほど受け取った特殊なVRヘッドセット。しかし、それだけではなかった。 ヘッドセットに接続されたケーブルの先には、全身を覆う、まるでSF映画に出てくるようなフルボディスーツが置かれていたのだ。 それは、細かな配線が全身を巡り、要所要所に発光するクリスタルが埋め込まれた、見るからに高性能なスーツだった。

「これは、君の『妄想』の力を最大限に引き出すための、そして、君自身の身体能力を仮想世界で増幅させるための、**『究極の妄想兵装アルティメット・イマジネーション・ギア』**だ!」 真田博士が、興奮して叫んだ。 「このギアを装着すれば、君の脳内の『妄想』が、WWOの世界で具現化される速度と精度が、飛躍的に向上する。つまり、プロトスの学習速度すら凌駕する、予測不可能な『妄想兵装』を、戦闘中に生み出し続けることが可能になるのだ!」

凌は、そのスーツに近づいた。 触れてみると、見た目よりもはるかに軽量で、柔軟な素材でできているのがわかる。 「これで、俺のチートを……さらに強化できるってことか?」 凌は、僅かに興奮を覚えた。

「ああ。これまでの君のデータ、つまりフクロウやイノシシのような『具現化』のレベルではない。君の『妄想』そのものが、WWOの法則を捻じ曲げる『力』となる。まさしく、**『現実改変』**の域にまで到達するだろう」 真田博士の言葉は、まるで魔法を語るかのようだった。

しかし、神崎が冷静な口調で、その「力」の危険性を指摘した。 「ただし、この『究極の妄想兵装』の運用は、君自身の精神力に多大な負荷をかけます。過度な使用は、VR酔いどころか、意識障害、最悪の場合、精神崩壊を引き起こす可能性もあります」 霧島もまた、凌の顔をじっと見つめ、その言葉の重みを強調していた。

「そして、このギアは、貴殿の生命維持システムと直結しています。現実世界での生命活動も、このギアを通して常時監視されます。もし、貴殿の身体に異常が見られた場合、我々が強制的にログインを切断する可能性があります」 それは、凌の命が、エニグマ・ヴィジョンズ社の手に握られていることを意味していた。

凌は、そのリスクを理解した上で、スーツへと手を伸ばした。 (命がけ、か……上等だ) この力を手に入れれば、ルシアを現実世界に連れてこられる。それならば、どんなリスクも受け入れる覚悟だった。

「では、早速ですが、ギアの装着と調整に入ります。その後、ブリーフィングの続きを行います」 神崎が、スタッフに指示を出した。

凌は、差し出された『究極の妄想兵装』を手に取った。 それは、彼のニート生活を終わらせ、新たな運命へと導く、まさに「救世主」であり、「諸刃の剣」でもあった。 WWOの最終決戦は、もう目前に迫っていた。

【第21話・了】


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