19.草原
母竜はドラゴンの翼を穏やかに上下させて、青空を羽ばたく。
私は母竜の首元に噛みつき、その竜の体を宙にふわりと浮かせる。
まるで風に揺れる鯉のぼりのように、波打つ私。
これは飛行練習などではない、風に乗って遊んでいるのだ。
気持ちいいぃぃぃ。イヤッッホォォォオオォオウ!
落っこちたら死ぬ。だが、バンジージャンプ並みにスリルがある。
バンジージャンプはやったことないけどね。
ザ・知ったかぶりである。
「あれがダンジョンよ」
私は、母竜の背中に張り付いて、空から大地を眺める。
草原の中に、木造建築の別荘を見つけた。
他に何もなく、一面草だらけ。この建物がダンジョンなのかしら。
「誰もいないけど? 人も、魔物も、ドラゴンも」
「そうね。今はセドシタ国でお祭りがあっている頃でしょうから、みんなそっちに行ったわ。 人も、魔物も、ドラゴンも。 」
なにそれ私も行きたかった。
私は美竜な白い顔を曇らせ、母竜に抗議する。
「あなたは人間の姿になりたかったんじゃないの?」
そうでした。
この可憐な子竜の私が人間に出会うと、討伐されるかもしれない。
人類と仲良くしたい私は、人の姿になりたいのでした。
目標は目前。レッツゴー ダンジョン。すぐに人化習得なのです。
どうか、お祭りに間に合いますように。
何の祭りか知らないけど。
私って、この世界に来てから知らないこと尽くめなのよ。
実はまだ自分の足で10メートルも歩いたことがない。
それほど、世間を知らないってこと。
自分で言うのもなんだけど、立派な箱入り娘だわ。
えっへん。
「ダンジョンに着いたわよ。降りなさい」
はーい。
「はいこれダンジョン99階認証カードよ。 あとは頑張ってね。 バイバイ」
あっ、ちょっ
「待って」
「じゃあね~」
母竜は空に羽ばたいた。
上空で、これで娘が強くなるわと言いながら、ガッツポーズをする後ろ姿が見える。
置いてかれたぁ。
この育児怠慢竜め!!
草原と風が気持ちいい。
寝よ。




