17.父竜召喚☆
ここは上流の川だ。
大きな岩と岩がせめぎ合い、水脈が生まれている。
水は浅いが、底まで見える透明度。
私は、飛行中の母竜の背中から、ハイジャンプ!!
川の中へ、バシャーッっと。
4足で着地成功。
耳を澄ますと、水のせせらぎが聴こえる。
鳥の鳴き声も、いや、
これは違う。竜のあくびの音だ。
「んんぁー」
母竜は地面に着地しながら、あくびをしていた。
どっちかに、せいっ
「私の名前。呼んで」
そう、私には名前ができたのだよ。
呼んでほしくて仕方ない。
「しょうがないわね。メドラ」
「うふ」
「愛しきメドラ」
「うふ、うふふふ」
「父竜の使い方を教えるわ」
「・・・」
本題早いわ。
川に浸かる足が冷えたので、私は陸に上がった。
母竜の隣には、人間の大人サイズの大岩がある。
これを砕けと言うのか?
わかったわよ!!
『ドラゴン-パンチ』
大岩は炸裂し、粉々になった。
破片が、母竜に当たる。
「まだ何も言ってないのに」
「今の私はテンションが高いのだ~」
竜に生まれて初めて、冒険してる感がある。
森に行った時は見学だけだしね。
やけにノリノリなのは、人肉のことを忘れたいからでもある。
娘に変なモノ食わせやがって~
私は冒険がしたい。外の世界を知りたくなった。
受け身の情報は、身を滅ぼすのだ。
と、人肉を試食して思った。
というか私のパンチ、想像のはるか上の威力だわ!!
『神忌-リザレクション』
母竜は唱えると、大岩が元に戻った。
石の破片が、目にもとまらぬ速さで集まったのだ。
「わぁ」
母竜マジック恐るべし。
「えっへん」
母竜は、胸を張った。
「私のドラゴン-パンチはどうだった?」
「メドラは自力が相当強いわね。誰に似たのかしら。 これなら父竜召喚も楽勝よ。 いい? この岩に向かって、『スピリット-解放』と叫ぶのよ」
分かったわ。
「いでよ、父竜 『スピリット-解放』」
元から白い私が、さらに白い閃光を放った。
光の中から、父竜が現れた。
高さは私の5倍。上を見上げたわ。
父竜の瞳は赤色だった。
「そして、ドラゴンに命令するのよ」
「いけっ 父竜」
「ぐお!」
父竜は、岩に走った。
頭からぶつかった。
「ぐぉぉぉぉぉ」
父竜は頭を抱えた。
そのまま倒れ、光となって消滅したのだ。
岩にはヒビが入っただけだ。
あれ、私の方が強いような
父竜情けないなぁ。
母竜は、再び唱えた。
「『神忌-リザレクション』 もう一回よ」
この人、鬼では?
父竜が可哀想だし、やめさせるわ。
「やめたげてぇ」
「そうね。今日はおしまいよ」
私は言った。
「明日から、外を冒険したいわ」
「遂に旅立ちの時ね。私もついていくけど。南東の方に、いいダンジョンがあるわよ。そこで旅に必須の、人化の術を覚えられるわ。明日行ってみる?」
人化。竜が人になること。
元人間の私には甘い響きだ。
竜のまま人間に出会うと、討伐されるかもしれない。
私は人化して、この世界の人と交流してみたいな。
ダンジョンは、戦いのイメージが連想されるが、
母竜がいるから安全だろう。父竜も、壁になってくれる。
「うん。行きたい」
「わかったわ。今日は帰ろうか」
私たちは竜の巣に戻り、体を丸めて眠ったのだった。




