11.戦闘前
――――大賢者マリスア -side-
視野の限りまで木々が覆い尽くす。正面には、樹木を端に追いやるかのように、自然には不自然な道がある。このスペースは、私と魔王竜の業火で生まれたものだ。
私は、道の中心に立ち、後ろには鬼畜魔王の白き竜が鎮座しておる。
傍からすると、神聖な竜を守護する魔法使いに見えるだろう。
道の奥に、息子の勇者がこちらへ接近する様子が伺える。
「魔王竜さん、彼を見逃して頂けないでしょうか?」
魔王竜は、頭を斜めに上げて思案顔をした。
「私が勝った後に見逃してほしいって、都合いいよねー。 でも、聖剣ファザードを譲るなら考えるわ。私のような竜が聖剣に触れると痛いから、鞘に納めて用意してね」
もともと、聖剣をゲットして、魔王竜を討伐する目的は息子にあった。
冒険者が口を揃えて息子に言うのだ。
大賢者から生まれたくせに、お前、魔法が使えないんだって?
私のパーフェクトで、エクセレントで、エクサレントな評判が息子を苦しめて、責任を感じた。
親子パーティで魔王竜を滅ぼし、彼の強さを世間に認めさせたかった。
しかーし、ぶっちゃけ息子のことより、私の戦闘意欲が勝つのが分かったわ。
魔王竜がこっちにきた途端、テンション上がって爆殺を試みたもの。
息子の手柄なんぞ知らん、先手必勝!!って感じで。ごめんなちゃい。
それらを差し引いても、魔王に聖剣はやれんぞ。
聖剣ファザードは、歴代勇者が魔物と渡り合った愛剣であり、人類の希望。
「聖剣は渡せない」
魔王竜は目を閉じていた。
寝るなよー 聞けよー
そして気が付けば、息子が私の前に立っていた。
最悪な一時が始まる。




