第7話 未来へ続く道
第7話構想
「ねぇ、パーティ組もう?」
「……」
わたくしは言葉につまってしまいました。
「返事は急がないからさ。」
翌朝。
わたくしは目を覚ますと、しばらく何もせずに空を見上げていました。
昨日のことを思い出します
巨大な魔物、ジャイアントキャタピラー。
黒い魔力
そして――
「ねえ、パーティ、組もう?」
アネットさんの言葉。
「…………」
わたくしは小さく息を吐きました。
正直に言えば、嬉しかった。
一緒に戦っていて、とても頼りになる方でした。
それに、アネットさんといると、不思議と気持ちが軽くなります。
けれど。
まだ知り合ってから、ほんの数日しか経っていない。
そんなわたくしたちが、本当にパーティを組んでいいのでしょうか。
「……考えても、分かりませんね」
わたくしは一人で呟きました。
答えは、もう少し考えてから出しましょう。
そう思って、わたくしは身支度を整えました。
「おはよう、リーネ!」
「おはようございます、アネットさん」
外へ出ると、アネットさんはすでに準備を終えていました。
「よく眠れた?」
「はい。おかげさまで」
「そっか。じゃあ、帰ろう!」
「はい」
わたくしたちは森を抜け、王都へ戻りました。
冒険者ギルドに着くと、ヴェロニカさんが出迎えてくださいました。
「おかえりなさい。無事に戻ってきたようですね」
「うん! ちゃんと倒してきたよ!」
アネットさんが胸を張る。
「では、依頼について詳しく聞かせてください」
わたくしたちは、ジャイアントキャタピラーとの戦いについて報告しました。
依頼書にあったものよりも遥かに大きかったこと。
攻撃がほとんど通じなかったこと。
そして、黒い魔力のこと。
「……黒い魔力、ですか」
ヴェロニカさんの表情が少し曇った。
「はい。倒したあと、魔物の身体から流れ出て……地面へ消えていきました」
「私も見たよ。普通の魔力とは違う感じだった」
「分かりました。こちらでも確認しておきます」
ヴェロニカさんはそう言うと、依頼の報酬を用意してくださいました。
「今回の報酬です。それから……」
もう一つ、別のものを差し出されるました。
「今回の依頼達成をもって、リーネさんはDランクへの昇格条件を満たしました」
「……Dランク」
わたくしは冒険者カードを受け取りました。そこに記された、新しい文字を見つめます。
「おめでとう!」
隣からアネットさんの声が飛んできた。
「ありがとうございます」
「これで私と同じだね!」
「……そうですね」
Dランク。
冒険者になって、まだそれほど経っていない。
それでも、少しずつ前に進んでいるのだと思うと、不思議な気持ちになった。
「なんだか、あっという間でしたね」
「でしょ?」
アネットさんが笑う。
「次はCランクだね!」
「もう次の話ですか?」
「だって、目標は大きいほうがいいじゃん!」
「……アネットさんらしいですね」
「褒めてる?」
「ええ。」
「やった!」
アネットさんは嬉しそうに笑いました。ギルドを出たあと、私たちは街を歩いていました。
「ねえ、リーネ」
「はい?」
「昨日の話なんだけど」
わたくしは足を止めそうになりました。
「……パーティのことですか?」
「うん」
アネットさんは少しだけ申し訳なさそうな顔をしされました。
「やっぱり、急だったよね」
「正直に言うと……少し驚きました」
「だよね」
「ですが――
一緒に戦っていて、とても戦いやすかったのは本当です」
「うん!」
「それに……」
昨日のことを思い出します。
わたくしが魔法を使えば、アネットさんが動く。アネットさんが動けば、わたくしは次に何をすればいいのか分かる。まだ数回、一緒に戦っただけなのに。
まるで、少しずつ相手のことが分かっていくようでした。
「……もう少し、アネットさんと一緒に冒険してみたいと思っています」
「本当!?」
「はい」
アネットさんの顔が、一気に明るくなりました。
「じゃあ――」
「ただ」
「うん?」
「正式にパーティを組むかどうかは……」
わたくしは少しだけ迷いました。
「もう少しだけ、一緒に過ごしてから決めてもよろしいでしょうか」
「もちろん!」
アネットさんは即答しました。
「じゃあ、しばらく一緒に冒険しよう!」
「……ありがとうございます」
「こちらこそ!」
アネットさんは笑いました。
その笑顔を見ていると、不思議と安心します。
少なくとも今は、この方と一緒にいることを嫌だとは思いませんでした。
「そういえば、リーネ」
「はい?」
「今日、これからどうする?」
「これから……?」
「うん。依頼も終わったし」
わたくしは考えました。
特に予定はない。
「……新しい依頼を探してみましょうか」
「いいね!」
アネットさんが頷く。
「じゃあ、明日からまた依頼を探そう!」
「明日から、ですか?」
「うん!」
「今日は?」
「今日は――」
アネットさんが、少し考える。
「お腹すいた!」
「…………」
思わず、少し笑ってしまいました。
「アネットさんは、本当にそればかりですね」
「だって大事でしょ?」
「……そうですね」
わたくしは小さく笑いました。
こうしてわたくしたちは、近くの食堂へ向かいました。
食事を終え、宿へ戻る道を歩いていると、夕暮れの空が目に入りました。
王都の街並み。
行き交う人々。
見慣れたはずの景色。
わたくしは足を止めました。
「……リーネ?」
「いえ」
わたくしは首を横に振る。
「少し、考え事をしていただけです」
屋敷を出てから、まだそれほど時間は経っていません。
けれど、以前とは違う目で、この街を見られている気がします。
ここには、わたくしの過去があります。
けれど、
今のわたくしには、ここで始めたばかりの冒険もあります。
そして、隣にはアネットさんがいます。
「……不思議ですね」
「何が?」
「昨日までのことが、ずっと昔のことのように感じます」
「そっか」
アネットさんは、それ以上何も聞きませんでした。
ただ、わたくしの隣を歩いていました。
わたくしは前を向きます。
これから先、どうなるのかは分からない。
けれど。
今はまだ、この先のことを決めなくてもいいのかもしれません。
まずは一つずつ。
目の前のことをやっていけばいい。
そんなことを思いながら、わたくしはアネットさんと並んで歩きました。
第7話を読んでいただき、ありがとうございました!
忙しく、最近はなかなか更新できていませんでした。
これからも、このようなことがあるかもしれませんが、できるだけ更新していきたいと思っています。
少しずつですが、アイリーンとアネットの冒険も進んできました。これから二人がどんな冒険をしていくのか、楽しみにしていただけたら嬉しいです。
これからもよろしくお願いします!




