第二十三章 本性解放
ベータはコイを背負っていた。剣はまだ腰に刺さったまま煙が出ていたが、出血はすでに止まっていた。
デニスはまだ光る眼鏡をかけたまま他のエリアに情報を伝えていた。
左手を振った時、指が竹の柱から何かに刺さって眼鏡を外して傷口を確認した。下を見ると目が大きく開いた。すぐにポストから降りた、階段で少し滑りながら。
「ベータじなんでここに?その剣刺さってるじゃん?」
デニスが叫んでから気づいた。
「コイ……」
手がコイに伸びようとした。でも指の痛みが止めた、コイの頭に触れる前に。
「ストレスが溜まりすぎてた。さっき本性解放の第一段階に入ったんだ」
ベータが説明した。リサは頭を下げて横を向いた。肩を抱えた。デニスは右手でコイの腕時計を外した。通話履歴を確認すると、昨日コイはアセプに電話していなかった。
デニスはリサを見た。リサも一緒に時計を見た。
「コイは敵にやられたわけじゃない。ベータが叩きつけたのは早く意識を取り戻させるためだ」
デニスが少し詰まった。コイの口から垂れる血を見た。
「他に方法はなかったの?」
ベータは首を横に振った。
「ベータはコイの攻撃に耐えられる。でもリサには無理だ……」
「あそこで止めなかったら、コイがリサを攻撃してたかもしれない」
自治会長がデニスの後ろからやってきた。
「ふぅ……皆さんはしばらく休んでください。エリアはもう安定してます。根を抜けば感染エリアは消えます」
ベータとデニスは頷いた。リサは黙ったままだった。皆は森を出て村に戻った。
後ろから戦闘の騒音が聞こえていたが、今の重い足音の前では遠く静かに聞こえた。
ベータはコイをベッドに下ろした。腰から剣を引き抜いてベッドの横に置き、部屋を出た。リサとデニスの前には村人からのお礼の食べ物やお菓子が並んでいた。でも二人とも食欲は全くなかった。
ベータはリサの横に座った。リサはすぐに距離を取った。ベータは深く息を吐いて口を開いた。
「リサ、ベータじの判断が嫌だった?」
「電気ダガーがあったから、少なくともコイが受けた傷を減らせたのに……」
デニスはただ下を向いてゆっくり息をしていた。
「リサ……コイの体は今全力で強くなってた。本性解放はコイのスピードと耐久力を上げる」
ベータが言った。リサは外を見た。ゆっくり息を吸って素早く吐いた。
「本性解放はリサ、獣人間のブライトなんだ」
リサは少し後ろを覗いてからまた外を向いた。
「人間は憎しみで動く、獣人間は俺たちのストレスで動く」
ベータは飲み水を取ってストローを差してリサの前に置いた。
「でもベータたちは違うベータたちはコントロールできる」
リサはベータを肩越しに振り返った。
「コントロール?」
「そう、ベータたちのストレスはコントロールできる」
リサはゆっくり目を閉じた。またロイドとブロンドの女のことを思い出した。
「じゃあなんで人間がブライトをコントロールできるの?」
ベータはくるくる巻いた髪をさすった。
「んー……説明が難しいな……確か名前はブルーマーだったと思う。でもなんでそうなれるのかは忘れた」
「ブルーマー?」
デニスが口を開き始めた。
「そいつらについて書かれたファイル、見たことないな」
ベータが頷いた。
「当然だ、あいつらの動きは少ない。ボスが一回だけあいつらのボスに会ったことあるけど、それ以来会ったことはない」
リサの目が大きく開いた。すぐに完全に体を向き直した。
「あいつらにもボスがいるの?」
「名前は忘れた。フラワー……ピッカー?ベータの記憶が正しければ」
リサは両手に寄りかかった。
「ボスに聞いたら答えてくれるかな」
リサが天井を見ながら言った。
「ボスは絶対答えてくれるよ。俺もこれ初めて知ったから、あとで聞いてみる」
デニスは丸いチョコレートの瓶の一つを手に取った。蓋を回した。手が滑って瓶が落ちた。チョコレートが全部外に転がった。
「わあああ」
デニスがパニックになってチョコレートがさらに転がらないように必死に止めた。
「ははっ」
ベータとリサの笑いが弾けてパニックのデニスを見た。
「よ、よかったカーペットの上だった」
デニスはチョコを瓶に戻しながら手の中で転がした。
「よし、砂はついてない」と言ってから口に入れた。
リサの後ろから軽い足音がした。
「何笑ってるの?」
コイが目をこすりながら部屋から出てきた。
「コイ?」
リサが叫んで膝で歩いてコイに近づいた。コイの肩と首を確かめた。
「大丈夫?」
コイはリサの腕を掴んで首から外した。
「大丈夫だよリサ姉、もう治ってるから」
コイが弱々しく笑った。
リサの片眉が上がって首を傾けた。
「ベータが言っただろ、コイの耐久力は高いって」
「耐久力というよりヒーリングファクターじゃないですかね」デニスが返した。
「ヒーリングファクター?」
リサが聞きながらコイを引いて目の前に座らせた。コイの尻尾がゆっくり揺れた。リサが頭を撫でると一緒に揺れた。
「ベータじの腰見てみろよリサ」デニスが口で指した。
リサはベータの腰をちらっと見た。傷跡がなかった。目が大きく開いた。もっと細かく見てもどこにも一本の線すらなかった。
「これが本性解放の力だ。使い切ったら俺たちの傷はより早く治る」
デニスとリサが重くため息をついた。
「最初から知ってたの?デニス?」
デニスは壁に寄りかかった。
「最初から知ってたけど、でもまだパニックになってる……」
コイのお腹からゴロゴロという音がした。顔が赤くなりながらお腹を押さえた。
「リサ姉……ご飯食べよ?お腹すいた」
リサは微笑んでコイの頭を撫でた。
「わかったわかった、食べよ。デニス、お皿取ってくれない?」
リサは手を差し出した。
「ちっ、自分で取れ——」
リサの目がデニスをじっと見た。デニスは唾を飲んでリサに皿を二枚渡した。
ベータが立ち上がって振り返った。
「どこ行くの?」
ベータは眠そうな目で後ろをちらっと見た。
「ちょっと寝る、目が重くなってきた」
部屋に入ってドアを閉めた。
「あー……これ二日後に帰ることになるな」
「長すぎ、まだ用事があるの?」
コイは目の前で会話に入らずがつがつ食べていた。
「ベータじの傷、結構深かったでしょ?だからしばらく寝るよ」
「二日もかからないでしょ、ここ他人の家だし」
「場所が関係あると思ってるの?」
「ベータじが任務の後になかなか帰らないのなんでだと思う?」
リサは部屋のドアを見た。
「道中で何かに襲われるから?」
「違う……正解は」デニスが少し息を吸った。
「どこでも寝落ちするから」
「この前なんか、よその人の池で寝てたから」
本性解放、少しわかってきましたか?
そしてブルーマー……フラワーピッカー……気になりますね。敵なのか?
それはともかく、コイが目を覚ましてご飯を食べてる姿、書いてて思わずほっとしました。
デニス、チョコレートをぶちまけてくれてありがとう。あなたのおかげでベータとリサが笑えました。わざとじゃないのはわかってるけど。
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また次話でお会いしましょう~!
次回:「マニュアル車」




