第二十二章 – 黒い根の蔓延
「コイ……きみどうしたの?」
コイは立ったまま俯いていた。息が重かった。瞳孔が一本の線まで細くなり、耳が張り詰めて尻尾がばらばらに広がっていた。
コイの目がリサに向いた。右の剣をリサに向けて投げた。リサは腕を交差させて後退した。
剣はリサの後ろの木に向かった。コイは跳んで左の鎖を掴み、後ろの木の後ろにいた魔物に向けて振り抜いた。魔物を覆っていたブライトが砕けて体を貫通した。血が出て魔物が即座に倒れた。
「ポスト一からエリア一へ、残り六体」
インターコムからデニスのくぐもった声が聞こえた。すぐ後ろでドローンの音が鳴ってすぐ消えた。
コイは左の剣を木に向けて振って、強引に剣を合体させた。木が真っ二つに割れて近くの二体の魔物を押し潰した。大きな剣を傾けて横に投げると鎖が剣から手まで伸びてつながった。剣がウルサスの魔物に当たって真っ二つに割き、腹部を破壊した。
ブライトアーマーを纏った三体のアーシンがコイに向かって跳んだ。コイは高く後方に跳んでアーシンたちの後ろに降り立ち、鎖が三体をまとめて一か所に閉じ込めた。
コイが鎖を引き絞って手に戻った剣で三体を一気に粉砕した。エリア一の魔物が全滅した。向かってくる気配はもうない。それどころかリサの目の届く限りの魔物たちが逃げ散っていった。
地面から大きな音がした。リサはお腹に圧力を感じた。コイの仏頂面が一瞬頭をよぎった。コイの足がリサのお腹に直撃してリサは後ろに転がった。片目を閉じてお腹を押さえながらリサはコイがリサに向かって伸びてきた根に剣を突き刺しているのを見た。
「気をつけてリサ姉」
コイはリサを全く見なかった。コイについて歩きながら、コイが前の縺れた根を剣で薙ぎ払っていくのを見た。他の魔物たちは見えているのに、一体も近づこうとしなかった。周りにいるのに、待っているか、あるいは攻撃する気がないようだった。いつも柔らかく丸みのあるコイの尻尾が今はばらばらに広がって膨らんでいた。
リサがついていこうとしたら急に止まったコイの背中にぶつかった。
「根が自分で引いてる……」
コイが言った。コイはすぐに走り出した。土がリサの顔に飛んできた。
リサは咳き込みながらコイを追いかけようとした。
「コイ待って……」
リサはまだコイに追いつけた。コイは横を見た。瞳孔がリサを追いかけてくるのを見てほんの少し大きくなったが、すぐに細くなって前に集中した。
さっきまでばらばらに速く動いていた根が今度は素早く引っ込んでいった。コイは剣を二つに分けて右と左に振り、遠くの木の側面に引っ掛けて別の方向に倒した。視界が開けた。
リサとコイは感染エリアの中心に黒づくめの男が立っているのを見て動きが止まった。手がブライトで地面とつながっていた。
「おっ……清掃員がいる。悪いけどちょっとだけこれ借りる」
男は使っていない方の手を傾けた。
「シッ……」
コイが歯を鳴らした。尻尾が張り詰めてさらに膨らんだ。コイは鎖を引いて両方の剣を前に向けて投げた。
「おっ、俺はここで手伝ってあげてるのに」
男の手がブライトから離れた。地面の前を叩くとマンティスのものに似たブライトの壁が地面から湧き出して、コイの剣を弾き飛ばした。鎖が引き戻されて剣が手に戻った。
コイは低くしゃがんだ。腰が少し揺れた。高く跳んでその壁を越えた。
「何ん―?」
男が驚いた。壁が素早く小さくなって盾になった。コイの剣が合体したが後ろに弾かれた。コイが後方宙返りをして安全に着地した。すぐに動いた。
剣を分けて右の剣を盾の後ろの木に投げた。コイが鎖を引いて敵に向かって滑空した。「はあ?」男が混乱して叫んだ。
コイは左の剣を振り抜いた。打撃としては弱すぎた。右の剣を木から引き抜いて左の剣と合体させ、男に当てるのに十分な勢いをつけた。
ブライトの壁が消えて男の手を包んだ。男がコイの横に転がった。振り返って両手を前に押し出すと大きな円柱型のブライトがコイを攻撃した。コイはすばやく体を回転させてブライトの周りを器用に舞った。ブライトが断ち切られた。男が地面を押して壁をコイとの間に作った。
リサは前に動いた。男の広い背中に向かった。突然横から棘が飛び出してリサは横に跳ばなければならなかった。
「しっ……邪魔しないでよ、私たちはちょっとだけあなたたちの仕事を手伝いに来ただけなんだから」
金髪の髪の女が髪を払いながら森の奥から出てきた。足にはねじれた歩き方があって、足首にはブライトとつぼみのようなものがあった。
「あなたたちは誰?」
リサが聞いた。体を低くしてダガーを顔の前でクロスさせた。
「ロイド?自己紹介した方がいい?」
女が手を振った。黒いネイルの長い爪を唇にあてた。しかしロイドと呼ばれた男は答えなかった。毎秒激しくなるコイの攻撃を避けることで精一杯だった。鎖が通り抜けても剣が全くついていなかった。
「チッ……男って戦い始めると本当に」
別の棘がすばやくリサに向かって伸びた。リサは横に転がって素早く前に突進した。右手が腰に戻って鞘を引き、女の首に向けて振り抜いた。大きな棘が下から生えてリサが後退した。体を右に傾けてまた突進した。
「速っ……」
女が驚いて歯を食いしばった。後退が間に合わなかった。リサのダガーが女の首のすぐ近くまで迫った。
ガンッ。
ブライトの壁がリサを遮った。視界の端にロイドが手をリサの方に向けているのが見えた。息が重くなって汗が流れた。コイがそばに来て息を整えながら左の大きな剣を引いて上に向けて助走をつけた。
「ははっ、俺が馬鹿だと思ってんの?」
ロイドを取り囲むようにブライトの壁が丸くなった。
コイの剣がまっすぐ前に振り抜かれた。
「馬鹿だ、手がその反動に耐えられなくて壊れる」
ブライトの壁に気づかずにリサがすでにロイドの壁を跳び越えているのを見て女が笑った。リサは女の首を打った。女は両手でそれを受け止めた。女がロイドの近くに転がった、まだ意識はあった。
チッ、電気スイッチ入れるの忘れた。
バキッ。
「ぐあああ!!!」
ロイドの叫び声が聞こえた。ブライトの壁が完全に砕け散り、コイの剣が深々と肩に刺さった。ロイドの口から血が出て右肩が下に曲がった。コイがもう一度剣を持ち上げた。さっきの女がロイドの胸に腕を回して逃げようとした。コイの剣が下がっていった……
タンッ……
ベータがコイの剣を片手で受け止めた。
「もういいコイ、ここで殺してはいかん。お前の父様が怒るぞ」
ベータじが叫んだ。女はすぐに目が白くなったロイドを引いて、棘が逃げる足元を覆いながら逃げていった。
リサはロイドと金髪の女を追いかけようとしたが、コイの歯鳴らす音で止まった。
「シッ」
コイは剣を二つに分けた。ベータじが間一髪で手を開いた。そのまま押し通していたら指がなくなっていたかもしれない。
「ベータじ!!!」リサが叫んで近づこうとした。
「こっちに来るな!!!」
リサの胸に何かが突き刺さった。体がぞくぞくして少し後退した。目が細くなった。コイが後退しながら両方の剣を右に振って素早く左に引き戻した。大きな剣への勢いをつけてベータじに向けて振り抜いた。剣がベータじの左腰にかなり深く刺さった。血が出たがベータじはびくともしなかった。
ベータは剣の側面を掴んで腰に固定した。コイが引こうとしたが体が揺れるだけだった。尻尾が高く張り詰めて背中まで届いた。ベータじの右手がコイの首を掴んだ。高く持ち上げて剣から強引に引き離した。
「ッ!!!シッ」
コイが歯を鳴らした。
ベータじはコイを思い切り地面に叩きつけて砂埃が広がった。
「コイ!!!!」
リサが叫んで、広がる砂埃を突き抜けてすぐに走り寄った。コイが咳き込んで口から血を吐いた。リサはコイの肩を掴んでベータじの手を払った。
「ベータじ、なんでコイを叩きつけるの!!!」
リサはベータじの手を叩き続けた。
「他に方法がなかった。ベータが叩きつけなかったらまだ暴れ続けてたから」
「それでも叩きつけなきゃいけないの!!!」
リサがまだベータじのコイの首から離れていく手を叩き続けた。コイが咳き込んで意識を取り戻し始めた。瞳孔がもう丸に戻っていた。目がすぐリサの方に動いた。
「ご、ごめんなさいリサ姉……制御が……できなくて……父様の言葉を……聞いて方が良かった……」
声が弱くなって目が閉じた。
「コイ!!!!」
これが……本性解放、なのかな?
ずっと気になってた『あれ』、やっとわかりましたね。でもこんな形で見ることになるとは思ってなかったです。
ロイドと金髪の女……また会いそうな予感がしてなりません。あの二人、何者なんでしょう。
それにしてもコイ……あの子を止めるためにベータじが叩きつけるしかなかったって、書いてて胸が痛かったです。コイも、ベータじも、リサも。
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また次話でお会いしましょう~!




