第十九章 – 泥だらけのドローン
「ぷっ」「ぷっ」
コイとリサは後ろで笑いを堪えた。濡れた泥がデニスのフードの後ろから滴り落ちていた。
「うるせ!」
デニスの体がよろけてまた滑った。
「ぷはっ」
コイの笑いが少し漏れた。リサは唇をぎゅっと噛んだ。
慎重に歩き続けると霧が薄くなってきた。目的の村が見えてきた。
見えるだけで、まだかなり遠い。
「道がくねくねしてる上に全部泥だらけじゃん」
デニスがぼやいた。コイとリサの前をゆっくり歩いていた。リサはデニスの歩き方を見ていて、コイがさっきほど慎重に歩いていないことに気づいた。
「コイ、つま先立ちしないの?」
「しなくていいよ、靴底つけてないから足が直接地面に触れてる」
コイは尻尾を上に振りながら普通に歩いていた。
「それって関係あるの?」
「父様が言うには、裸足だと足が安定するらしくて。さっき車の近くで脱いだの、今思い出した」
リサは頷きながら自分の足元に注意し続けた。
十五分以上歩いてようやく門の前に着いた。リサは座ってふくらはぎを自分でマッサージした。デニスは水のある方へフードを洗いに行った。
コイは村の方を向いた。尻尾がゆっくり揺れてからビシッと素早く打った。リサはまた剣に目が向いた。
「コイ、その剣って小さいモードにできないの?」
「持ち運びやすくなるんじゃないかなって」
コイは剣を持ち上げながら振り返った。
「それはできないんだよね。確かに小さい方が部屋に入る時引っかからないけど。うーんどう説明すればいいかな」
コイは両手で柄を握った。反対方向に引っ張ると、鎖がコイの腕に巻きつきながら降りてきて形が小さくなった。まだ鈍い長方形の形で、リサのダガーより長くて幅も広かった。
コイは右の剣を地面に投げて左の袖を引っ張り上げた。鎖が直接皮膚の中につながっていた。
「この鎖、直接僕の骨につながってるんだ。父様が言うには、このモードを使うたびに剣が骨からカルシウムを吸収するって」
コイは鎖をさすって、自然に皮膚の中に入り込んでいるのを見せた。
「痛くないの?」
「鎖が入ったり出たりするたびに少し痛い」
右の剣を地面から引き抜いて、コイは柄を合体させた。鎖がコイの腕から前より高く上がって、一本の剣に戻った。
「どうりでよく牛乳飲んでるわけだ」
コイは剣を背中に戻した。
「あ、あれ牛乳じゃないよ。カルシウムドリンクなんだ。父様が言うには僕はラク、ラク、ラク」
コイは右上を見て眉を上下させた。
「ラクトース・イントレラント」
デニスが後ろから割り込んだ。フードを手に持って、手袋をした左手を上に振るとドローンが後ろからついてきて飛び上がった。
ん?……ドローンがデニスの手の動きに合わせてる?
「そうそれ」
コイが指をパチンと鳴らした。音は出なかった。
「基本的に普通の人間にもラクトース・イントレラントはいるけど、猫人間の方が多いだけ」
デニスが少し止まった。
「まあこの話は後でいいや、とりあえず今は村の役員のところに行こう」
リサは立ち上がってまだズキズキするふくらはぎをさすりながら、コイの後ろをゆっくり歩いた。
リサは村の周りを見渡した。もう多くの村人が田んぼで働いていた。広場で遊んでいる子供たちもいて、それぞれ違う形の耳と尻尾を持っていた。
自治会長の家に着くと、デニスはドローンを下ろして縛った荷物を外した。デニスが前に出てノックした。
「すみません、TICから来ました」
リサはデニスの右肩を叩いた。
「なんでインフィニットじゃないの?」
デニスは少し後ろに体を傾けた。
「どこでも俺たちのこと知ってるわけじゃないから。ここの人たちTICって何かも知らないと思うけど」
自治会長が出てきた。大きな目に太い眉毛、耳が灰色の髪の毛と続いてまっすぐ上に立っていた。フクロウ人間だった。
「ふぅ……来てくれたか、まあ入って」
自治会長は体を横にずらした。
「リサ、後ろの箱持ってきて」
リサはゆっくり後ずさって箱を持ち上げようとした。重くて無理だった。
リサはデニスの後ろ足を蹴った。
「無理、男なんだから自分で持ってよ」
コイはすでに中に入っていて後ろの言い合いには無関心だった。
「俺は外からここまで運んできたじゃん」
「ドローンで運んだじゃん、自分の力じゃない」
「そのドローンを俺が作ったんだから俺の努力でしょ」
デニスは胸を叩いた。
「じゃあ今あなたの力まだあるってこと」
リサはデニスの肩を指で突いた。
「さっき転んだし、背中が痛いんだよ」
デニスは腰を叩いた、背中じゃなくて。
「ふぅ……サップ」
突然リサの後ろにいた自治会長がその重い箱を肩に持ち上げた。二人の横を通り過ぎて歩いた。
「さっさと中に運べばよかったのに」リサはデニスの腕を肘で突いた。
「中に運んでって言ったじゃん」デニスもリサをつついた。
「あんたのせい」リサはデニスを肩で押した。
「お前のせい」デニスが押し返した。
リサも押し返した。
デニスが助走をつけた。
「リサ姉こっちきて」
コイに呼ばれてリサはすぐに移動した。
デニスが押そうとして空振りしてつんのめった。
「わあああ」
リサは自治会長に話しかけようとして口を開けたが何も出なかった。体がぞくぞくして鳥肌が立った。
「すみません、荷物まで運ばせてしまって。連れが運んでくれれば良かったんですけど」
デニスは転んだ後の汚れた肩を叩いた。にっと笑った。
「ふぅ……いるくせに荷物は女の子に持たせようとして」
自治会長がぼやきながら背筋を伸ばした。リサは口を覆った、笑いが透けて見えた。デニスは歯を食いしばって強く拳を握った。
「それで場所はどこですか?」
コイが口を挟んだ。竹の椅子に座ってお菓子を食べていた。
「ふぅ……エリアはまだ見つかってなくて。こちらもブライト感染者の死亡者が五人に達したって警告を受けたばかりで、あと一人でルートが出てきます」
自治会長が歩いて座った。
「ルート?」
リサがデニスに囁いた。
「長いから後で」
デニスが囁き返してコイの隣に座った。
コイは下を向いた。尻尾が全く揺れなかった。
「ルートはもうあるはずです。僕の経験では、父様、ベータじ、レイヴン姉の経験でも」
「五本で根を張って、六本目で地面に出てくる、父様がそう言った」
手のお菓子がぐちゃぐちゃに潰れた。
「あ、すみません」
コイは床のカス屑を拾い集めた。尻尾が少し固まった。
デニスは顎をさすってから聞いた。
「偵察はやりましたか?」
自治会長は小さいほうきを取り出して屑を掃いた。口が開いた。
「やりましたよ、近いエリアは安全です。別の鳥人間による空からの偵察も終わってます」
デニスはコイの隣に座ってその肩を叩いた。
「根の広がり方はわかりますか?」
コイの爪が爪先から少し出た。
「わかるよ兄貴、黒くて多い。踏んだ人間は全員ドラウンドになってる」
リサはデニスの背中を見た。
「デニスは経験ない?」
デニスは首を横に振った。
「感染エリアの任務は初めて。二人のフロンターがいるから許可が出たんだと思う。感染清掃の任務はほとんどボス一人かベータじとコイでやってた」
デニスはうつむいて額の真ん中をさすった。
「報告書から見ると、感染は意図的に人里から離れてるはず」
自治会長の方をちらっと見た。
「この辺に木が高い深い森ってありますか?」
自治会長は外の窓を見た。
「ありますよ、でもここから五キロくらい先です。それに村人は誰も行こうとしませんから」
「なんでですか?」リサが聞いた。
「父様が言うには、感染は大きくなってから攻撃するから、だから人から離れてるって」
デニスは眉をひそめて時計のインターフェースを開いた。スクロールしてファイルを探した。
「ボスが書いたやつって検索機能が全然使えない」
「これだと思う、リサに共有するから後で読んで」
ファイルがリサの時計に届いた。開いてみると
「魔物めちゃくちゃ多いwww アセプ著」
「狂ってるボスが!」
自治会長、ありがとうございます。
そしてボス……「魔物めちゃくちゃ多いwww」って、これ公式レポートですよ?
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また次話でお会いしましょう~!




