第二十章 – 偵察の翼
太陽が十時の方向に輝いていた。リサは村の未亡人の家に向かった、デニスによると捜索には三日かかる可能性があるとのことで、コイもそれを普通のこととして受け入れていた。
「父様なんか五日以上かかることもあるから」
というコイの言葉がリサの頭に残っていた。
リサは借りた部屋に入った。
「ボスはなんか、わざとゆっくりやってる気がする」
リサはベッドに座って押してみた。手が全く沈まなかった。
「お前は気楽にしてろ、俺は先に偵察してくる」デニスが言った。
「気楽にって、状況やばいなのでは。感染エリアがこっちが休んでる間に攻撃してくるかもしれないのに」
「だから気楽にしてろって言ってんだよ、ファイル読んで俺の言ってること理解しとけ」
リサはデニスとの会話を思い出しながらベッドに横になった。大きな木の梁がそのままトタン屋根につながっていた。硬いベッドが背中に感じられた。
しばらくぼーっとしていてようやく、さっきからずっとあった胸の圧迫感に気づいた。起き上がって大きなバッグを外した。肩がようやく軽くなった。肩を回して首を左右に傾けた。
リサはシャツを下から引き上げて全部脱いだ。胸の圧迫感が消えた。
「まだ成長してる?」
とぼやいた。バッグから寝間着を取り出そうとして、何か違うものに触れた。
引っ張り出すと巻かれていたものが広がった。白いレースのドレスで、ピンクの花模様がついていた。丈はちょうど足元まであった。バッグの中を覗くとメモが入っていた。
「エリア探しは絶対長くなる、寝間着だけ持ってきてどうすんの。このドレス着て村娘気分でも楽しんでれば」
名前はなかったがリサには誰かすぐわかった。ため息をついてそのまま着た。
体にぴったりだった。レースの袖が肘まであった。胸元が見えないか心配で手で胸を撫でて下を見た。鏡がないから確認できない。
リサは外に出て村の周りを見た。胸の上で手がふわふわしながら歩いた。泊まらせてくれたお婆さんもいなかった。自治会長の家に戻るとデニスとコイがそこに泊まっているのを見つけた。
デニスは大きな眼鏡をかけて森の方を向いていた、両手がコントロールデバイスに集中していた。コイはリサに気づいてすぐに向き直った。
「えっ、リサ姉が黒以外の服着てるの珍しい」
「に、似合わないかな?着替えてくる」
リサが落ち着かない様子で言った。
「そんなことないよ、すごく綺麗だよ。デニス兄貴も見てよ」
コイは集中しているデニスの体を揺さぶった。
「ちょっと何すんの」
デニスは眼鏡を外した。視線がリサの足元から上がってきた。
「俺今仕事中だっ……」デニスが固まった。
リサは襟を引っ張った。顔が赤くなった。
「な、なに?」
デニスは首を横に振って眼鏡をかけ直した。
「な、なんでもない……」
リサはコイの隣に座った。
デニスは眼鏡をかけたままリサの方を向いた。
「本当になに?」
「なんでもないって、今よそ見してた」
「デニス兄貴、眼鏡って電源切ると透明になるんだよ」
「……」
デニスは眼鏡の電源を入れた。透明から真っ黒になった。首を横に振った。
「集中……」
「人の命がかかってるんだから……」
リサの左手はまだ襟を持ったまま、右手で目を遮って森の方を見た。
「ドローンは?」
「さっきデニス兄貴がめちゃくちゃ小さいドローン使ったんだよ、びゅーんって一瞬でいなくなった」
コイが素早く手を振って飛行機の離陸みたいな動きをした。
「目の前の地域は森が深すぎて、鳥人間の空からの監視じゃ効果ない」デニスが説明した。
「鳥人間?」
「自治会長みたいな人、レイヴン姉みたいな人が鳥人間だよ」
コイは名前を言うたびに右と左を指さした。
「本性解放ス第一段階で翼が出て飛べるようになる」コイが手をパタパタさせた。リサは首を傾けて空を見上げた。
「わ、わからない……」
「まあそうだよな、俺も直接見たことない。漫画でも不思議と描かれてないんだよな、いい設定なのに」
「鳥人間は背中に翼があるんだよ、背中の……なんだっけ?」コイは自分の頬を叩いた。
「肩甲骨?」
「そうそれ、肩甲骨……んー」
コイはまた頬をさすった。
「どうしたのコイ?」
「父様って獣人の本性解放のこと詳しいんだよね。でも聞かないと教えてくれないんだよ」
「ボスらしいね」デニスが返した。
「!!!」
デニスが跳びはねた。体を左右に傾けた。コントロールデバイスを持つ手がより激しくなった。
「デニス、どうした?」
「魔物めちゃくちゃ多い、ブライトで強化されてるし……」
デニスは歯を食いしばって体を上に傾けた。
「見つけた!!!」
「本当に?」
「ここから四キロ先、でもモンスターが多い。根は十メートル広がってる」
コイはすぐに腕時計でメモした。
「行こうよ——」
デニスがコイを止めるために手を上げた。
「な、なんでデニス兄貴?魔物が多くて——」
デニスは眼鏡を外した。
「魔物が多いから突っ込めないんだ!」
「リサを見ろ」
デニスがリサを指さした。一瞬見て顔が赤くなってコイの方に視線を戻した。
「あ、あいつだってまだ戦闘服着てないじゃないか」
「でもデニス兄——」
デニスは右手でコイの頬を膨らませた。
「しっ、言い訳は聞かね。とにかく自治会長に報告して応援を集める。人間はできるだけ少なく」
さっきから聞いていた自治会長がついに家から出てきた。
「では私が準備します」
「みんなが万全の状態で明日の朝に行く。距離がまだそこそこあるから魔物が村を直接攻撃してくることはない。でもブライトで強化された魔物は簡単な相手じゃない、しかも深い森の中で戦うことになる」
デニスは強く拳を握った。コイは地面を見た。瞳が細くなって耳が張った。反論はなかったが、一瞬リサには口から牙が出ているのが見えた。
「コイ、部屋に戻って父様に電話してこい」
デニスはコイの肩を叩いた。コイは頷いて自治会長の家の中に入っていった。デニスはリサの方に戻った。視線がいつも下に行かないようにリサの目を見ようとしていた。
「私の目は上にあるよ、デニス」
「わ、わかってる。さっきゴキブリが……」
デニスは口を閉じた。
「ついてこいよ」
デニスがリサの前を歩いた。
「どこ?」
リサが後ろからついてきた。
「近くの屋台でいいか、明日どうするか話しながら」
リサは肩越しに後ろを振り返った。
「コイは?」
「わかんない。最近ずっとストレスがピークみたいで。急いでる感じがするんだけど、何が理由かは教えてくれない」
デニスは近くの屋台の前で止まった。
「じゃあボスに似てるね」
「かもな……というかその原因がボスかもしれない」
デニスは止まって屋台の長椅子に座った。
「原因がボス?」
リサも隣に座った。デニスは揚げ物を指で押してテンペを取った。
「ボスとの稽古ってどんな感じ?」
デニスはテンペを食べた。口をもぐもぐさせて少し首を傾けた。
「体力トレーニング、ダンベル振って耐えるだけ」
リサはバクワンを取った。噛んだらすごく硬かった。
「お客さん、それはもう冷めて硬くなってるから食べないで。テンペかトウフがいいよ」
屋台のおばさんが言った。
「お代はいらないよ」
デニスは青唐辛子を取って先端を折って噛んだ。
「へえ……コイの稽古はボスから全然違うんだよ」
「コイの稽古はボスとの決闘だ!」
リサのドレス姿、デニスには刺さったみたいですね。ふふ。
それより……コイのこと、気になりませんでしたか?あの子、何かを抱えてます。
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